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400年の音楽史をたどる壮大なるジュークボックスオペラ『400歳のカストラート』取材会

400年の音楽史をたどる壮大なるジュークボックスオペラ『400歳のカストラート』取材会

東京文化会館で2020年2月に初演された歌劇『400歳のカストラート』の再演が、6月26日に同会館で行われます。その取材会が、4月26日に開かれました。
歌劇『400歳のカストラート』は、カウンターテナー1名、朗読2名、演奏家5名が出演し、劇中の演奏曲は様々な年代の作曲家の作品により構成される小規模なオリジナル・オペラ。
企画、選曲、主演は国際的な活躍が目覚ましいカウンターテナーの藤木大地さん。人形劇俳優の平常さんによる脚本は、長時間藤木さんを取材して書き上げられたもの。演出と美術も平さんが担当されます。朗読役には、この作品が親子での舞台初共演となった、大和田獏さんと大和田美帆さん。音楽監督、作編曲、ピアノに加藤昌則さん、ヴァイオリンに成田達輝さんと周防亮介さん、ヴィオラに東条慧さん、チェロに上村文乃さん。同ホールが開催する「東京音楽コンクール」の入賞者を中心としたアンサンブルです。
26日の取材会には、藤木さん、平さん、大和田獏さん、大和田美帆さんの4名が出席。公演に掛けるそれぞれの思いが語られました。

写真左から:平常さん/藤木大地さん/大和田獏さん/大和田美帆さん
藤木大地さんのコメント

初演が行われた2020年2月は、厳しい時代が始まる前のギリギリ最後の時点でしたが「これが最後の舞台でも悔いはない」と思えるくらい充実した公演でした。
2018年の夏、一本の電話から始まったこの企画が、時を経て少しずつ広がっていくのはとても嬉しいです。今回、3人の新しい奏者の方と2つの新しい劇場が加わります。
企画の段階から、できるだけ小さいパッケージにしてポータブルにしたい。東京文化会館の公演で終わらせず、各地の劇場や海外にも持っていけるサイズで作りましょうという話をしていました。
最近、横浜みなとみらいホールのプロデューサーになって自分が舞台に立って何かするだけではなく、劇場が社会に何を発信するか、劇場と劇場同士がつながり何ができるのかということにとても興味があります。


平常さんのコメント

ふさわしいネーミングかどうかわからないのですが「壮大なるジュークボックスオペラ」とでも言えば良いのでしょうか。
『400歳のカストラート』は、ダイチという1人の男性が永遠の命を手に入れて400年生き続けるという物語です。ダイチの400年の人生をたどりながら時系列で音楽史をたどって行きます。実際の公演では2時間ちょっとの中に400年を入れなくてはいけないので、選曲するのは至難の業でした。アイデアをできる限り削ぎ落としてシンプルにしていかないと1回の公演に収まらない。その作業をしたことによって、みてくださる皆さんの想像力が参加できる作品になったかなと思っています。 
びっくりするほど全身が音楽に包まれます。オペラは生音です。楽器と大地さんの歌はマイクを通さない生の音です。空気を伝わって全身が音楽で包まれる感覚と、そこに獏さん美帆さんの語りが絶妙に絡んで、想像が膨らみます。 
これまで東京文化会館で初演した作品は、全部自分が人形を作って主演する人形劇と音楽のコラボレーションでした。私が人生初裏方に徹しした作品がこの作品『400歳のカストラート』です。自分が裏方に徹してどこまできちんと人の役に立てるかというチャレンジでもありました。


大和田獏さんのコメント

娘を通じてこちらのお話をいただいた当時、藤木さんのお名前も存じ上げなかったので、どんなことになるのか全く想像もつきませんでした。自分がお引き受けしていいものなのか、自分にできるのだろうかと悩んでいるときに、ふとつけたテレビで藤木さんが歌ってらっしゃったんです。その素晴らしい歌声に魅せられました。それでこの方とご一緒したらすごい面白いものになるのではという思いがわきまして、出演を決意しました。 
ものすごく気持ちの良い稽古の日々でした。日々音楽に囲まれて稽古を重ねるうちに、影響しあうというか、思いもよらない感情が湧いて自分では想像もつかなかったような朗読ができた気がしました。回を重ね再演できるという事は本当に幸せです。なるべく音楽の邪魔をしないようにしっかり朗読したいと思っています。


大和田美帆さんのコメント

平さんからお誘いを受けた時点では、東京文化会館ということと人形は出ないということくらいで、ほぼ情報がない状態でした。よくわからないものにトライしてみたいという気持ちはありましたが、ここまで未知の世界に足を踏み入れたのは初めてのような気がしています。その結果、自分が思いもよらない体験ができて、お客様も喜んでくださったという稀有な経験でした。 
舞台の世界にいながら、オペラやクラシックは敷居が高いもの・高級なものという感覚が勝手にありました。東京文化会館と言われて、自分が出るようなところじゃない・・・と壁を感じていました。 
でも、この音楽と藤木さんの歌声は、すっと私の中に入ってきてくれて一緒になるというか。私はサーフィンのように音楽に乗って、知らないところに連れて行ってもらって楽しいー、心が踊るという体験をしました。オペラやクラシックに今まであまり触れてこなかった方もこの作品をきっかけに音楽の素晴らしさ、芸術やクラシックの素晴らしさを知っていただけるのではと思っています。 
もう一つこの話の素敵なところは「命」を扱ってっているということ。初演が行われた2年前には想像もつかなかったことが、コロナがあって、今は世界中が大変なことになっている。今回、お客様が命に対してどう感じて見ていただけるのか。今後も再演を何度でも重ねて、その時代時代の思いをお客様が感じ取ってくださるのではないかなというストーリーにもなっています。音楽とともにストーリーも楽しんでいただければなと思います。

取材会では、この後質疑応答が続きました。
とても印象的だったのは、記者からの質問「クラシックやオペラの敷居の高さ、届け方の難しさでこれまで苦しんだことがあるか」というものへの藤木さんの答えでした。
「敷居の高さという表現がよくされますが、僕は逆にクラシックは敷居が高くてもいいと思っています。内容をわかりやすくして届けるのではなく、本来クラシックが持っている良さを若い人たちにどのように伝えるか。それが僕らの役割です。」

取材:オペラ・エクスプレス編集部   写真:長澤直子


公演情報

東京文化会館 舞台芸術創造事業 / 国内外連携事業
歌劇『400歳のカストラート』<再演>
2022年6月26日(日)
東京文化会館 小ホール


2022年7月3日(日)
愛媛県 西条市総合文化会館 大ホール


2022年7月10日(日) 
三重県 四日市市文化会館 第一ホール


企画原案・選曲:藤木大地
脚本・演出・美術:平常
音楽監督・作曲・編曲:加藤昌則


出演
カウンターテナー:藤木大地
朗読:大和田獏、大和田美帆
ピアノ:加藤昌則
ヴァイオリン:成田達輝、周防亮介
ヴィオラ:東条慧
チェロ:上村文乃

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