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【公演レポート】新国立劇場《マノン・レスコー》

新国立劇場の《マノン・レスコー》公演初日に行ってきました。プッチーニの世界を堪能しました!

今回の《マノン・レスコー》は新制作ですが、思い起こせば4年前の3月11日、東日本大震災が起こった時に公演予定だったのがこの《マノン・レスコー》でした。3月11日はゲネ・プロの前日だったそうで、ということは演目としてほぼ完全に出来上がった時に災害に見舞われた訳です。公演は中止になりました。そして4年が経ち、ほぼ同じ時期の3月に殆ど同じ(メイン・キャストは全て同じ)出演者達が初台に戻って来て、ついにこのオペラの幕を開ける事になったのです。

演出はジルベール・デフロ。2004年にベルリン・ドイツ・オペラで初演されたプロダクションです。舞台の壁も床も全て白で、大道具、小道具は様式としてはロココですが数が少なく、そこにマノンの鮮やかな黄色のドレスと他の登場人物達のパステル系の衣裳が映えます。演出としては、特に群衆の動きに象徴的な部分があり、例えば第一幕の最後に学生や若い娘達がグループになり舞台中央の奥にいて、そこに戻って来たレスコーと手を叩き合って共謀関係にあったことを示す、など面白い処理がありました。また、第二幕のマドリガーレではカップルのダンスが挿入されるのですが、女性役も上半身裸の男性が踊ったり、第三幕のル・アーヴルの港では女囚達が引き出される場面を、堕落した女性達のショーケースのような大胆な見せ物にしたりと、かなりインパクトがあります。第四幕の荒野のシーンでは、舞台中央に二本の細くて白い柱が立っており、その間に二人が支えあって立っています。そしてデ・グリューが助けを求るためにマノンから離れる間も彼は舞台から立ち去らず、舞台の奥の方に行きそこで座り込んでしまいます。この終幕もなかなか示唆に富む描き方だと思いました。

キャストはプッチーニのオペラに必要な演技力と声の強さを併せ持った歌手達が選ばれ聴きごたえがありました。タイトルロールのマノンを歌ったスヴェトラ・ヴァッシレヴァはイタリアでプッチーニ歌手としての活躍が長い人ですが、美しい容貌でマノンとして説得力がありましたし、歌もさすがでした。特に第二幕の「柔らかなレースに包まれても」の哀切な歌唱は素晴らしかったです。デ・グリューのポルタもマノンへの愛情を込めた歌いっぷりで高音も良く出ていました。レスコーのイェニスは容姿、演技、そして歌もレベルが高かったです。ジェロントの妻屋は演出上かなり滑稽な演技をこなし、声も充実。エドモンドの望月は美声で役作りも好感が持てました。また、歌う場面は短いですが海軍司令官の森口賢二も大変良かったです。

モランディ指揮の東京交響楽団は、プッチーニの初期のオペラでオーケストレーションも厚みのある中、イタリア・オペラらしいうねりも表現して秀逸でした。テンポ設定がとても良く、歌をしっかり支えた指揮が立派でした。

最後になりましたが、新国立劇場の合唱の緻密さはいつも大変聴きごたえがあります。

4年越しの《マノン・レスコー》公演が成功して良かったです。カーテンコールの拍手と歓声に応えてソプラノのヴァッシレヴァが、自分の胸からハートを客席に投げ返すような仕草をしました。こういう交流もオペラの醍醐味の一つだと思います。残りの日程も素晴らしい公演になるよう祈っています!
(所見:3月9日)

reported by Mika Inouchi

新国立劇場《マノン・レスコー》

全4幕 イタリア語上演 字幕付
台本:マルコ・ブラーガ、ドメーニコ・オリーヴァ、ジュリオ・リコルディ、ルイージ・イッリカ
作曲:ジャコモ・プッチーニ

会場:新国立劇場 オペラ・パレス

2015年3月9日(月)19:00/12日(木)19:00/15日(日)14:00/18日(水)14:00/21日(土・祝)14:00

指揮:ピエール・ジョルジョ・モランディ
演出:ジルベール・デフロ
装置・衣裳:ウィリアム・オルランディ
照明:ロベルト・ヴェントゥーリ

合唱指揮:三澤洋史

合唱:新国立劇場合唱団
管弦楽:東京交響楽団

マノン・レスコー:スヴェトラ・ヴァッシレヴァ
デ・グリュー:グスターヴォ・ポルタ
レスコー:ダリボール・イェニス
ジェロント:妻屋秀和
エドモンド:望月哲也
旅籠屋の主人:鹿野由之
舞踏教師:羽山晃生
音楽家:井坂惠
軍曹:大塚博章
点灯夫:松浦健
海軍司令官:森口賢二

字幕:増田恵子

主催・制作:新国立劇場

芸術監督:飯守泰次郎

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