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【公演レポート】神奈川県民ホール《オテロ》

神奈川県民ホールで《オテロ》を観てきました。こちらのホールがびわ湖ホールと共同制作でオペラを上演するのは2008年からとすでに8年目になりますが、今年は大分のiichiko総合文化センターも加わっての新制作です。大変に質の高い演奏と舞台でした。

神奈川県民ホール【オテロ】3月22日第3幕より

神奈川県民ホール【オテロ】3月22日第3幕より
(C) Naoko Nagasawa

このシリーズをすべて指揮しているのはびわ湖ホール芸術監督である沼尻竜典。ヴェルディの中でも《オテロ》はオーケストラの聴かせどころが多く、沼尻の理知的に冴えた演奏がよく合っていました。歌手たちの歌にもしっかり合わせ、テンポも良かったです。オーケストラのクライマックスは第三幕後半のヴェネツィア共和国使節の到着場面。鳴り交わす金管、舞台上での合唱とソロ歌手達、そしてその後の舞台裏からの合唱等バランスも良くオペラの醍醐味を堪能しました。オーケストラのソロ的な聴かせどころでは、第一幕最後のオテロとデズデモナの二重唱の前のチェロ、第四幕冒頭の木管楽器の掛け合い(残念ながら携帯電話の着信音がかなり長く鳴っていましたがそれにも負けない良い演奏でした)、そして同じく第四幕のデズデモナのアヴェ・マリアの後に殺しの場面へと導く有名なコントラバスのパート等、神奈川フィルがとても良い演奏でした。

演出は粟國淳。《オテロ》のオープニングの嵐の音楽は最高にかっこいい幕開けだなといつも思うのですが、音と同時に舞台に閃光が走り、絹のように滑らかな幕に覆われた舞台が荒れた海原となってそこに難破しかかった船が見えます。この場面から始まって、舞台中央の八角形のステージの照らし方や、舞台奥の幕への光の当て方等、笠原俊幸の照明が様々な場面で大変美しかったです。アレッサンドロ・チャンマルーギの装置・衣裳は時代考証がしっかりしており、装置の塔が集まっている時と開いている時で登場人物の様々な心理状態を表現しているようでした。

歌手ではオテロ役のアントネッロ・パロンビが明るい響きの強い声に、音楽的にも安定して際立っていました。後半のオテロの苦悩はかなりヴェリズモ的な表現で思い入れたっぷりです。デズデモナは安藤赴美子。ピュアで艶やかな声と美しい容姿が役によく似合っていますが、それよりも素晴らしかったのは音楽的な表現です。第三幕で夫から酷い言葉を投げつけられた時の、ショックを受けながらも毅然とした応酬はドラマにすっかり引き込まれましたし、終幕の柳の歌からアヴェ・マリアへ続く歌の哀しみの表現も印象深かったです。

ヤーゴの堀内康雄は一見信頼したくなる良い人系悪人。カッシオの大槻、ロデリーゴの与儀、ロドヴィーコのビシュニャ、モンターノの青山、エミーリアの池田、そして伝令の的場など、声も歌も良く贅沢なキャストでした。びわ湖ホール声楽アンサンブルと二期会合唱団の混合部隊のまとまりも良かったです。児童合唱団赤い靴スタジオは歌だけでなく子供達のニコニコした表情がなんとも可愛いらしかったです。

シリーズ次作は来年3月の《さまよえるオランダ人》だそうです。沼尻の指揮にミヒャエル・ハンペ演出。こちらも質の高いプロダクションになりそうで期待が膨らみます。

(所見3月22日)

文・井内美香/reported by Mika Inouchi  photo: Naoko Nagasawa

神奈川県民ホール開館40周年記念
神奈川県民ホール・びわ湖ホール・iichiko総合文化センター・東京二期会・神奈川フィルハーモニー管弦楽団・京都市交響楽団 共同制作公演
ヴェルディ 歌劇「オテロ」全4幕

新制作/イタリア語上演日本語字幕付
公演日時: 2015年03月21日(土)22日(日)    開演:14:00 (13:15開場)

指揮:沼尻竜典
演出:粟國淳

出演:
オテロ 福井敬(21日)/アントネッロ・パロンビ (22日)
デズデモナ 砂川涼子(21日)/安藤赴美子 (22日)
イアーゴ 黒田博(21日)/堀内康雄  (22日)
エミーリア 小林由佳(21日)/池田香織 (22日)
カッシオ 清水徹太郎(21日)/大槻孝志 (22日)
ロデリーゴ 二塚直紀(21日)/与儀巧 (22日)
ロドヴィーコ 斉木健詞(21日)/デニス・ビシュニャ (22日)
モンターノ 松森治(21日)/青山貴 (22日)
伝令 的場正剛

合唱:びわ湖ホール声楽アンサンブル、二期会合唱団
児童合唱:赤い靴スタジオ
管弦楽:神奈川フィルハーモニー管弦楽団
ゲスト・コンサートミストレス:鈴木裕子

装置・衣裳:アレッサンドロ・チャンマルーギ
照明:笠原俊幸
音響:小野隆浩(公益財団法人びわ湖ホール)

合唱指揮:佐藤宏
舞台監督:菅原多敢弘

字幕製作:本谷麻子

主催:
神奈川県民ホール(指定管理者:公益財団法人神奈川芸術文化財団)
公益財団法人びわ湖ホール
iichiko総合文化センター(公益財団法人大分県芸術文化スポーツ振興財団)
公益財団法人東京二期会
公益財団法人神奈川フィルハーモニー管弦楽団
公益財団法人京都市音楽芸術文化振興財団

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