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【公演レポート】日本橋オペラ《トリスタンとイゾルデ》

日本橋劇場に《トリスタンとイゾルデ》を観に行ってきました。室内オーケストラ版(世界初演)で、このオペラの日本人だけによる初の全曲舞台上演です。

主催は「日本橋オペラ」という団体です。全三幕のオペラですが、聴きたい一幕だけ購入することも出来るという親切なチケット販売方法でした。中央区立日本橋公会堂(日本橋劇場)は客席数440、花道を作ることも可能という日本舞踊等の「和」の利用を想定して作られたホールのようです。2階席から鑑賞しましたがオペラ上演にも悪くない音響でした。2階席ロビーでは今回、公演チラシやプログラム(大変充実した内容でした)の表紙に使用されたニノ・カルミゼ作《トリスタンとイゾルデ》の絵画と、指揮の佐々木修氏に縁が深い奈良美智作の絵画が飾られていました。

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オーケストラは舞台上に配置されています。弦が9名、管が8名にティンパニーとハープで計19名です。上手側に弦パート、下手側にそれ以外の楽器が配置され、中央の半円形のスペースが歌手のアクティング・エリアとなっています。指揮者は上手の弦楽器の近くに座っていました。舞台奥には中央から階段で昇って上手側に出入り出来る平台(ある程度の高さがあって上を歩ける台)が設置されています。

演出は、上から降りて来る何枚かのパネルと、舞台奥の幕と床への映写を中心におこなわれました。場面によって1階の客席を歌手の演技の場として使用したり、2階の舞台近くの席からも第一幕の船員達の歌を歌わせたりと、劇場全体を工夫して使っていました。第三幕の最後は、死んだメーロトとクルヴェナルが立ち上がり舞台奥の階段を昇り上手に向かってゆっくり歩いて退場、それに続いてイゾルデに誘われたトリスタンが彼女の手を取り同じ旅路に向かうところで幕となります。

音楽的に興味深かったのが室内オーケストラ版の編曲です(編曲は当日の指揮者でもある佐々木氏)。日本ではエレクトーンによる演奏、またはピアノに弦楽を足したりするアレンジのオペラ上演がよくありレベルが高くて驚かされることがありますが、今回は鍵盤楽器を使用していない小編成と、残響が少ないホールの音響が相まって、各楽器の音色がはっきり聴こえて来て面白かったです。いわゆる「トリスタン和音」などのワーグナー音楽の特徴も際立ち、長いオペラを厭きさせません。特に木管は演奏も充実し、オーボエや第三幕のソロで活躍するイングリッシュ・ホルンなど聴きごたえがありました。

日本橋オペラ《トリスタンとイゾルデ》第二幕より

日本橋オペラ《トリスタンとイゾルデ》第二幕より トリスタン:片寄純也/イゾルデ:福田祥子
(C) Naoko Nagasawa

歌手はイゾルデ役を歌ったのがこの「日本橋オペラ」の代表で公演監督の福田祥子。美しい舞台姿と強靭な声でした。トリスタン役は第一幕、第二幕が片寄純也。ワーグナーを歌うのに相応しい輝かしい美声で、第二幕第二場の愛の二重唱はイゾルデ共々素晴らしい表現でした。第三幕のトリスタンは升島唯博。ドイツでのキャリアが長かったテノールで、きれいな発音と音楽性で聴かせました。マルケ王の片山は立派な声のバス。クルヴェナルは柔らかい響きのバリトンで演劇的にも熱演。ブランゲーネの平舘はイゾルデを思いやる雰囲気が良く出ていました。若い水夫とメーロトを歌った並木は明るい美声で歌も良く、また牧人の堀越も同様に声も歌もとても良かったです。他の歌手達も好演。衣裳も男声陣のモノトーンを基調にイゾルデの鮮やかなドレスが印象に残りました。

日本橋オペラ《トリスタンとイゾルデ》第三幕より トリスタン:升島唯博/イゾルデ:福田祥子
(C) Naoko Nagasawa

文・井内美香/reported by Mika Inouchi  photo: Naoko Nagasawa


日本橋オペラ2015
リヒャルト・ワーグナー作曲/台本
楽劇《トリスタンとイゾルデ》
(全曲 原語上演 日本語字幕付)
室内オーケストラ版初演 編曲:佐々木修

2015年5月2日(土) 日本橋劇場(日本橋公会堂4F)
第1幕13:00
第2幕15:30
第3幕18:00

公演監督:福田祥子

指揮:佐々木修
演出/字幕:舘亜里沙

出演:
トリスタン第1幕〜第2幕:片寄純也
トリスタン第3幕:升島唯博
イゾルデ:福田祥子
マルケ王:片山将司
クルヴェナル:勝村大城
ブランゲーネ:平舘直子
若い水夫/メーロト/船員:並木隆浩
牧人/船員:堀越尊雅
旗手/船員:望月一平
船員:奥村泰憲

管弦楽:ワーグナーアンサンブル
コンサートマスター:三ツ木摩理

スタッフ:
美術:岩田駿
照明:田村公宝
衣装:杉澤香織
ヘアメイク:エイミー前田
舞台監督:丸山直己
演出助手:森田健太郎

主催:日本橋オペラ
共催:ディーヴァ株式会社 株式会社マエストロ 日本橋オペラ研究会
協力:東京国際芸術協会 字幕/映像 まくうち

プログラム表紙絵画:ニノ・カルミゼ作「トリスタンとイゾルデ」(2014)
特別公開:奈良美智作:「A little Wonderful House」(1984)

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