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【公演レポート】オペラシアターこんにゃく座《ロはロボットのロ》‐‐‐すべてのこどもたちと、こどもだったすべてのおとなたちに贈るオペラ

《ロはロボットのロ》 ママモンロー:岡原真弓/テト:金村慎太郎
(C) Naoko Nagasawa

こんにゃく座《ロはロボットのロ》を観てきました。とても楽しくて音楽も魅力が一杯。でも、考えさせられる所もたくさんありました。

主人公はパン作りのロボット、テト君。このテトという名前が何かいいんです。「テト、テト」って歌いたくなります(笑)。テト君は走るのも泳ぐのも苦手、算数も苦手。でもパン作りだけは得意だし大好きです。とにかくロボットだから休みなく働きます。でも、なぜだか分からないけれど、毎日1,000個作れていたパンが、ある日999個、翌日は998個、そのまた次の日は997個しか作れなくなります。そこでテトは自分を作ったドリトル先生に修理してもらうために冒険の旅に出かけけます…

1999年に初演された《ロはロボットのロ》。今回は新制作でキャストも20代の若手が中心の舞台でした。美術装置は、こんがり焼けた食パンを思わせる色と形で、そこに小道具や衣裳などで楽しい色が加えられています。舞台転換にも様々な工夫が凝らされていて飽きさせません。

歌役者の皆さんは身体能力が高く、アクロバティックなやり取りを軽々とこなします。主役のテトを演じた金村慎太郎は若さ溢れる体当たりの演技が良かったです。テトはロボットだから考え方が真っ直ぐで人のために役に立とうとばかり考えているというキャラクターなのですが、その雰囲気がとてもよく出ていました。ココの飯野薫は男の子みたいな勇ましい女の子。でも優しくて健気な心もしっかり伝わってきます。魔女ノーマとママモンロー役の岡原真弓は個性的な造形で女の魔性と母性をしっかり表現、ココのお父さんエドとドリトル博士の佐藤敏之は芸達者で面白かったです。金貸しマニーの武田茂は深みのある歌とおとぼけで味を出してさすが。お妃様の沖まどかと小間使いの大久保藍乃もそれぞれの個性を活かしている演技が楽しかったです。カエルに変えられた王様役の泉篤史はカエルの被り物がいい味を出していたのですが、最後の方で歌ったら美声でびっくりしました(笑)。ピアノの服部真理子は細やかな美しいピアノで時々参加する演技も可愛かったです。

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萩京子作曲の音楽は、まだ昨年の《アルレッキーノ》とこの《ロはロボットのロ》の二つしか聴いたことはありませんが、《ロはロボットのロ》は子供のためのオペラだけあって、ストレートな音楽作りが魅力的だと思いました。リズミカルなところがとても楽しいし、覚えて歌いたくなる「テトのパンは あ」は〈かつてこどもだったおとな〉としてはジーンと来る名曲でした。

鄭義信の台本は、もしかすると初演の1999年より今の方が心に深く突き刺さる部分が増えたのではないかと思います。暴力と金で世界を支配する人々に立ち向かうテトとパン屋のココ。パンは皆に命を与えるものだし、ロボットは人間を助けるのが役割のはずなのに、現実は自分の利益しか考えない人々と戦わなければいけない… 勿論、結論は出ないのですが、このオペラが今の子供達に「テトみたいな自分でいいんだ」という勇気を与えてくれることを願っています。

初日のカーテンコールには鄭義信さんは登場しませんでしたが、こんにゃく座の座付き作曲家で代表の荻京子さんが舞台に上がり、団員達と一緒に客席に向かって「どうもありがとうございました」と叫びました。すると、私の後ろの席にいた小学校低学年位の子供が「こちらこそ(多分)、ありがとう!」と叫び返しました。拍手にまぎれてその声は舞台に届かなかったかもしれませんが、このオペラのメッセージはちゃんと子供達にも届いているみたいです。ああ、よかった!と思って家路に着きました。
(所見:5月13日)

文・井内美香 reported by Mika Inouchi / photo : Naoko Nagasawa


オペラシアターこんにゃく座公演
《ロはロボットのロ》
台本・演出:鄭義信
作曲:萩京子

2015年5月13日(水)~17日(日)
あうるすぽっと
(豊島区立舞台芸術交流センター)

出演:
テト:金村慎太郎
ココ:飯野薫
エド,ドリトル,ダイヤ:佐藤敏之(5/13,15,17)
エド,ドリトル,ダイヤ:井村タカオ(5/14,16)
ノーマ,ママモンロー:岡原真弓(5/13,15,17)
ノーマ,ママモンロー:相原智枝(5/14,16)
ジーン,花子:沖まどか
マニー:武田茂
サファイヤ,シオン:泉篤史
ハロー,ルビー:大久保藍乃

ピアノ:服部真理子(5/13,15,17)
ピアノ:湯田亜希(5/14,16)

美術:乘峯雅寛
衣裳:太田雅公
照明:増田隆芳
振付:伊東多恵
舞台監督:久寿田義晴
舞台監督助手:津久井さおり
特殊小道具:渡辺数憲
音楽監督:萩京子
宣伝美術:小田善久(デザイン)、長谷川義史(絵)

助成 公益財団法人 花王芸術・科学財団
後援 公益財団法人 としま未来文化財団
主催・制作 オペラシアターこんにゃく座

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