オペラ・エクスプレス

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2016/17シーズン公演ラインアップ発表《愛の妙薬》から《よさこい節》まで!ーーー【記者会見レポート】日本オペラ振興会

左より:光岡暁恵/高橋薫子/田中祐子/山田和樹/山下一史/大賀寛/折江忠道/佐竹康峰/山下一史/園田隆一郎

先頃開かれた公益財団法人日本オペラ振興会の記者会見に行ってきました。藤原歌劇団と日本オペラ協会という二つのオペラ団体の2016/2017年シーズン公演ラインアップの発表です。イタリア・オペラ、特にベルカントに強い藤原歌劇団と、日本語のオペラを発信し続ける日本オペラ協会、両者に共通するのは〈歌〉に対する強い思いです。

すでにスタートしている今シーズンは、藤原歌劇団公演としては12月にオーチャードホールで《仮面舞踏会》(5、6日)、1月に東京文化会館で《トスカ》(30、31日)、そして日本オペラ協会は3月に新国立劇場で水野修孝作曲《天守物語》(5、6日)を上演します。今回はそれに続く2016年4月からのシーズンに関するお披露目でした。また、現在は公演監督であるバリトン歌手の折江忠道氏が、来年4月に藤原歌劇団の総監督に就任するという発表もありました。

出席:
佐竹康峰(公益財団法人日本オペラ振興会 理事長)
折江忠道(藤原歌劇団 公演監督:2016年度より総監督)
大賀寛(日本オペラ協会 総監督)
園田隆一郎/山下一史/山田和樹/田中祐子(指揮者)
高橋薫子/光岡暁恵(歌手)

主催:公益財団法人日本オペラ振興会

■2016/17 シーズン公演ラインアップ■

藤原歌劇団公演「愛の妙薬」
2016年4月23日(土)・24日(日)両日14:00開演
テアトロ・ジーリオ・ショウワ
指揮:園田隆一郎/演出:粟國 淳/キャスト:高橋薫子、光岡暁恵、村上敏明、宮里直樹、谷友博、田中大揮 他
合唱:藤原歌劇団合唱団
管弦楽:テアトロ・ジーリオ・ショウワ・オーケストラ

藤原歌劇団公演「カプレーティ家とモンテッキ家」 新制作
2016年9月10日(土)・11日(日)両日14:00開演
新国立劇場 オペラパレス
指揮:山下一史/演出:松本重孝/キャスト:向野由美子、鳥木弥生、高橋薫子、光岡暁恵、笛田博昭 他
合唱:藤原歌劇団合唱団
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

藤原歌劇団公演「カルメン」 新制作
2017年2月3日(金)18:30開演・4日(土)14:00開演・5日(日)14:00開演
東京文化会館 大ホール
指揮:山田和樹/演出:岩田達宗/キャスト:調整中
合唱:藤原歌劇団合唱団
管弦楽:日本フィルハーモニー交響楽団

日本オペラ協会公演「よさこい節」 原嘉壽子追悼 新制作
2017年3月4日(土)・5日(日)両日14:00開演
新国立劇場中劇場
指揮:田中祐子/演出:岩田達宗/キャスト:調整中

 

イタリアのベルカント・オペラの真髄をさらに追求/日本の和の文化を世界へと発信

まずは財団理事長の佐竹康峰氏より挨拶がありました。「藤原歌劇団は昨年、80周年という大きな節目を迎えまして、これからもイタリアのベルカント・オペラの真髄をさらに追求していきます。」「そして日本オペラ協会、こちらも三年後には創立60周年を迎えます。日本の古典芸能、文学作品のオペラ化一筋に専念してまいりました。日本の和の文化を世界へと発信してまいります。」


続いて来年4月に藤原歌劇団の総監督になる現公演監督 折江忠道氏がマイクを取りました。バリトンの良く響くお声です。
© Naoko Nagasawa (OPERAexpress)_8298
「今までは一歌手としてオペラ制作に携わってきましたが、このたび公演監督のお話を頂き、いままで歌うことしか能がなかった人間ですが、熟考いたしましてお引き受けすることになりました。」「私がデビューした30年前頃は、ちょうどバブルと時代が重なり、舞台装置も素晴らしく豪華で、何から何まで豪華絢爛でした。ところが今こういう世の中になりまして、公演を打つことが非常に難しい時代に直面しています。この時代にオペラを公演する側として何が一番大事なのかをつくづく考えましたが、結論は、やはり最後の砦として歌い手が充実していなければいけない。」「やはり歌劇ですから歌が非常に大事であるというのが私の考えです。」

「来シーズンの演目ですが、まず4月に《愛の妙薬》、そして9月に《カプレーティ家とモンテッキ家》。そして再来年の2月に《カルメン》を上演します。《愛の妙薬》と《カプレーティ家とモンテッキ家》は基本的にはベルカント・オペラと言われているものです。」

「若さと情熱、そしてテクニック、そいうものを遺憾なく発揮できるような演目だと思っています。そして《カルメン》は誰にでも楽しんでもらえる名作オペラ。そのようなラインアップになっています。」

「それから(渡した資料には)まだ書き出していないんですが、今年《ランスヘの旅》を上演したように、2016年7月にも日生劇場さんと一緒にオペラを上演する予定があります。こちらは他にも予定されている共催団体さんのことがはっきりした時点で、皆様に改めてご報告申し上げます。」


次には日本オペラ協会の総監督である大賀寛氏からの説明がありました。とても張りのある若々しい声が印象的です。

「日本オペラ協会は1958年に創立致しまして、現在まで一つの思いで活動を続けてまいりました。日本オペラ・シリーズは現在76回を重ねております。日本オペラの振興をかかげてやってまいりました。今回上演するのは《よさこい節》といいまして、平成二年(1990年)に初演いたしまして大変高い評価を得たものです。作曲の原嘉壽子さんは、1984年に《祝い歌が流れる夜に》という作品を発表されました。これは当シリーズの中で取り上げたもので、非常に鮮烈な印象を与え期待されたものであります。その後、多くの名曲をお作りになられ、日本オペラ協会のシリーズの中で一番多くの演目を上演させていただきました。」

「原さんの考えていらっしゃるオペラというのは、やはり演劇だと。言葉とメロディーの一体化です。テーマとしては自分も女性であるから、女性の生々しい真実の姿というものの追求だったと思います。」

「年に一回の公演でございますけれども、それに半年の年月をかけて充実した作品を作り上げています。これからもどうぞ日本のオペラ振興のために、藤原歌劇団ともども、日本オペラ協会をご支援頂きたいと思っております。どうぞよろしくお願い申し上げます。」

 

実力派揃いの指揮者が4名

今回の記者会見は、四名もの指揮者が顔を揃えた珍しい会見でした。その中でも《愛の妙薬》を指揮する園田隆一郎氏は、2014年の《蝶々夫人》他、藤原歌劇団との仕事が多いマエストロです。
© Naoko Nagasawa (OPERAexpress)_8311
「《愛の妙薬》についてお話しする前に、折江新監督でのシーズンが始まるということで、演奏する側というか、現場で働いている側からの折江先生についてちょっとお話ししようと思います。私が本当に素晴らしいなと思うのは、何でも思っていることを、悪い意味ではなく、すぐおっしゃる。そして現場で何か問題があった時、例えば歌手、合唱、オーケストラについてでも、すぐに話をして対処される、という印象を持っています。やはりそういうのは素晴らしいことだと思うんです。」

「今後も藤原歌劇団の現場が、風通しの良い、情熱的な、素敵な現場になるのではないかと思っています。」「《愛の妙薬》については、私は2009年にも藤原歌劇団でこのオペラを指揮させて頂いていますが、その時は自分も経験が無かったので、歌劇団の先輩方に色々教えていただき、またきっと気がつかないうちに助けて頂いたこともあるのではないかと思います。」

「気がつけば自分ももうそんな若手ではないわけです。この何年かで日本やイタリアで経験したことをもとに、また今年の12月にはトリエステ歌劇場でも《愛の妙薬》を指揮させていただきますのでその経験も持ち帰り、皆さんと一緒に音楽を作っていけたらと思っています。《愛の妙薬》は、イタリア語ならではの響きの美しさ、流れを活かして、まるでしゃべっているように全曲を演奏できたらいいですね。」


《カプレーティ家とモンテッキ家》を指揮する山下一史氏は、今シーズンの日本オペラ協会《天守物語》の指揮者でもあります。《カプレーティ家とモンテッキ家》の指揮は初めてとのことです。
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「信じられないくらい素晴らしいオペラです。登場人物は5人しかいない、その中で(ロメオとジュリエッタという)二人が大活躍するわけです。」

「僕は歌い手ではないので分からないけれども、歌うのはとても難しいと思います。だからこそ歌手の魅力、素晴らしさが味わえるし、お客さんにとっては分かりやすいお話ですので、すっと引き込まれて最後に皆さんが涙なさる、そのような公演にしていきたい。お二人の素晴らしい歌手を得て、素晴らしい公演にしなくてはと気を引き締めているところです。」


そして今シーズン注目すべき点の一つは、2017年2月の《カルメン》公演に山田和樹指揮の日本フィルハーモニー交響楽団が演奏することだと思います。山田氏のお話です。
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「私はオペラに関してはずっと『オペラをやらせてください』という就職活動中のようなものだったんです。実際には2012年にサイトウ・キネンで小澤(征爾)さんの代わりに《火刑台上のジャンヌ・ダルク》という作品ですとか、サントリーホールの「サマーフェスティバル」でクセナキスの《オレステイア》は指揮させていたいだいたのですけれども、オラトリオであったり、(現代オペラの)三部作であったり、ちゃんとしたオペラを指揮するのはこの《カルメン》が初めてとなります。私は園田隆一郎さんとは(東京藝大の)同級生で、学生の時に大学のオーケストラなどを指揮しましたが、なぜかだいたい役割が決まっていまして、園田さんがオペラ公演を全部指揮するんです。僕もやりたかったんですけれども、なぜか僕はシンフォニー担当なんですね。どっちが振るかで、深夜に一時間くらい電話して、けれども園田さんは、結構しぶといと言ったら失礼なんですが(笑)、オペラを振りたいとはおっしゃらないんだけれどもずっと話しているうちにね、園田さんが指揮するようになっていく訳です(笑)。その園田さんとここで同席出来るのは本当に嬉しいことです。」

「今回、最大の喜びとしては私が正指揮者を務めております日本フィルハーモニー交響楽団がピットに入る、ということです。日本フィルがオペラをするというのは大変珍しいことだと思うのです。オペラをやりたい、という声はオーケストラの中に強くありまして、ピットに入らせていただくのを嬉しく思っております。」

「日本のオペラ史の中で日本フィルは一つ重要な役割をしておりまして、ドビュッシーの《ペレアスとメリザンド》の日本初演をジャン・フルネさんが指揮された公演があります。これは日本のオペラ史でも語り草になっている、日本のオケがそこまでフランスのサウンドを出すことが出来たという歴史的な意味合いがある公演になっておりまして、(オペラ界への)就職活動のついでに申し上げますと(笑)、いつか日本フィルと藤原歌劇団さんで《ペレアスとメリザンド》をさせていただきたいと思う訳です。」


日本オペラ協会の《よさこい節》を指揮する田中祐子氏は、2009年に山田和樹氏が優勝したブザンソン国際指揮コンクールでセミ・ファイナルまで一緒に闘った仲だそうです。日本オペラ協会の大賀氏からは、田中氏が日本オペラ協会の公演で副指揮を務めていた時にその才能に惚れ込んだ、というお話もありました。
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「私と藤原歌劇団さんとのつながりは、今年の春《椿姫(ラ・トラヴィアータ)》を、今日こちらにいらっしゃる光岡暁恵さんのご出演で指揮をしたのが私のオペラ・デビューでした。また、それから遡ること、2010年には日本オペラ協会さんで池辺晋一郎先生のオペラ、こちらは池辺先生の書かれた処女作《死神》という作品で、先生が大学院時代にお書きになったという非常に難しい作品の副指揮で入らせていただき、また2011年にも池辺晋一郎先生の《高野聖》、こちらは同じ池辺先生の最新作オペラ、こちらの初演でも副指揮の一番手として、どちらの公演もプロンプター・ボックスに入らせていただきました。」

「その時から、日本人による日本語のオペラというものの、身体に入って来る感覚というか、喜びみたいなものに取り憑かれまして、幼少期に児童合唱をやって日本語の美しい合唱曲にたくさん触れた経験もあり、日本オペラを将来指揮者としてやっていく中の軸の一つに出来たらいいな、と心の中で願っておりました。」

「大賀先生の現場でのご指導を見ていると、日本語のオペラの時間と間合い、そして言葉を作って、そこから音楽が流れて行くんだな、ということが分かります。《よさこい節》は、大賀先生のお力をぞんぶんにお借りしまして、この作品は変拍子が多く、非和声音もたくさん出て来ますし、オーケストラも非常に難解、歌い手にとっても難しい作品ですが、がんばっていきたいと思います。」

 

得意のベルカント物に臨む、2人のソプラノ

ソプラノ歌手の高橋薫子さんは、《愛の妙薬》と《カプレーティ家とモンテッキ家》に主演します。
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「私が藤原歌劇団にデビューしたのは1989年だったと思うのですが、《ドン・ジョヴァンニ》のゼルリーナでデビューさせていただいてから、もうかれこれ25年を超えてしまいました。それ以来ずっと新人の気持ちが抜けないままというか、その気持ちを持ち続けている方かもしれません。」

「でも、もう現場ではベテランの域ということをそろそろ自分でも肝に銘じて、自分に出来る責任を全うしよう、という気持ちがようやく芽生えてきました。歌うことしか取り柄がないので、出来ることは限られていますが、今まで生きて来た時間、歌にかけて来た時間を、悔いが無いように、エネルギーと情熱は若い人にも負けないと思うので、全てを、全てをと言うのは少し大げさですけれども、出来る限りのものを出したいと思います。」

「《愛の妙薬》のアディーナは折に触れて歌わせていただいた、私のイタリア・オペラの演奏歴では多分一番歌う機会があった役だと思います。そんな役をまた歌える喜び。そしてイタリアに留学中からベルカントのオペラにフォーカスして勉強してきましたので、一度は歌いたかった《カプレーティ家とモンテッキ家》のジュリエッタに挑戦できることも本当に幸せに思います。」

「一本、一本、大きな舞台、大きなプロダクションの舞台はこれが最後かもしれない、と思いながら歌ってきました。毎回、最後じゃないといいな、とは思いますけれども、でも、そのつもりでそうなっても悔いの無いように心を込めたいと思います。どうぞよろしくお願い致します。」


最後に、同じく《愛の妙薬》と《カプレーティ家とモンテッキ家》で主演するソプラノの光岡暁恵さんが発言しました。
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「学生の頃からつとめて勉強してまいりましたベルカントのオペラ、ドニゼッティ、ベッリーニの作品を今シーズン二つ歌わせていただけるということで、本当に光栄であると同時に、勉強して来たものをしっかり公演で出して行きたい、という基本と、責任と、色々感じながらやっております。」「私は、藤原歌劇団の公演では2006年の《ランスヘの旅》フォルヴィル伯爵夫人役がデビューでしたが、《愛の妙薬》はそのもっと前、私の母校でもある昭和音楽大学の大学公演でオペラ・デビューさせていただいた作品です。舞台の上手下手(かみて・しもて)も分からない、イタリア語をどう使って歌っていいのか分からない、そういった状態で望んだ公演でしたので色々思い出すことがあります。同じ粟國淳先生の演出で《愛の妙薬》の旅公演があり、稽古を見学に行った時にいらしたのがこちらにいる高橋薫子さんで、憧れの大先輩と握手をさせていただいて大感激した覚えがあります。その先輩とこうやってダブルキャストで一緒に公演に参加させていただく。ここでしゃべらせていただいていることは本当なのかな?と思いながらここにおります。」

「9月の《カプレーティ家とモンテッキ家》は同じベルカントですが、また全然違う、ベッリーニの作品は本当にフレーズが長いので、どこで息継ぎをしたらいいのか分からない位、難しい作品です。まるで水泳の遠泳をしているような難しさですけれども、ジュリエッタの一途な思いを、その長い長いフレーズと共に表現できたらと思っております。オペラはチームワークですので、園田マエストロ、山下マエストロとともに、先輩の高橋薫子さんをはじめ、共演の方々、スタッフの方々と一丸となって歌っていけたらと思っております。」



日本オペラ振興会は最近HPを刷新し、「初めてのオペラ」を基本コンセプトに、オペラ・ファンの裾野を拡げるために、アミーチ会員などの個人に加えて企業の新入社員やこれから海外に仕事で行く人たちに公演のゲネ・プロを公開する等、積極的な活動を行っているそうです。また、今回の記者会見もYoutubeで公開されています。

文・井内美香 reported by Mika Inouchi / photogragh by Naoko Nagasawa

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