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【GPレポート】ブルガリア国立歌劇場《イーゴリ公》

【GPレポート】ブルガリア国立歌劇場《イーゴリ公》

この週末に初日が迫っているブルガリア国立歌劇場来日公演。2000年の初来日以来、好評のうちに来日を重ね今回が6回目の来日公演です。上演するのはプッチーニ《トゥーランドット》とボロディン《イーゴリ公》。昨日は、日本での上演が珍しい《イーゴリ公》のGP(最終総稽古)が東京文化会館で行われました。

ブルガリアはボリス・クリストフ、ニコライ・ギャウロフ、ニコラ・ギュゼレフなどの深みのあるバス歌手、そしてゲーナ・ディミトローヴァやアンナ・トモワ=シントウなどの圧倒的な女性歌手を輩出しています。最近ではヴェッセリーナ・カサロヴァもブルガリア出身。共通するのはブルガリアン・ヴォイスの迫力です。レパートリーは広く、ドラマチックなイタリア・オペラ、そして人種的、言語的に近いこともありロシア・オペラを得意にしています。特に《イーゴリ公》はバス歌手が活躍するオペラでもありブルガリア国立歌劇場の得意演目として知られています。

《イーゴリ公》は〈ポロヴェツ(だったん)人の踊り〉がクラシック音楽ファン以外にも知られる有名曲ですが、その他にも聴きどころがたっぷりのロシア・オペラの傑作です。ボロディンの野生的な音楽をリムスキー=コルサコフとグラズノフが補完し、序曲から圧倒的な音楽で魅了します。

ブルガリア国立歌劇場は歌手たちも基本的には歌劇場専属なので、大きな家族のように結束が固い劇場です。今回の《イーゴリ公》は、劇場のディレクターでもあるプラーメン・カルターロフの演出で、特別なカルターロフ版です。長年人気があったスタンダード版に基づいていますが、最大の特徴は、最終幕でイーゴリ公と妻ヤロスラーヴナが再会した後、コンチャク汗とイーゴリ公夫妻が一同に会し、イーゴリ公の息子ウラディーミルとコンチャク汗の娘コンチャコーヴナの結婚を祝う華々しい宴が繰りひろげられることです。もっとも有名な〈ポロヴェツ(だったん)人の踊り〉と〈ポロヴェツ人の娘達の踊り〉はここで演奏されます。ブルガリア国立歌劇場が誇るバレエ団が華やかな踊りを繰り広げ、合唱と相まって壮大な歴史絵巻は大団円となります。

総稽古では、豪華な舞台に、本番さながらに衣裳をつけた歌手とバレエ・ダンサーたちが歌い踊っています。オーケストラピットからは色彩感豊かなサウンドが響いていました。ブルガリア国立歌劇場のオーケストラは音にボリュームがあり、またソロの演奏も歌心たっぷりです。歌手ではイーゴリ公役のスタニスラフ・トリフォノフ、ヤロスラーヴナ役のガブリエラ・ゲオルギエヴァ、そしてコンチャク汗のアンゲル・フリストフなどが圧倒的な声で際立っていました。バレエ・ダンサーも質が高く、近年なかなか実現が難しいグランド・オペラの上演が楽しめそうです。演出家のカルタロフ氏は総稽古開始前にも場当たり稽古で団員たちに熱心に指示を出していました。

文・井内美香 reported by Mika Inouchi / photograph : Naoko Nagasawa


※写真は、GPのものです。GPは、本番に向けた最終リハーサルであり、一部の衣装・メイクなど、本番とは異なる場合があります。


イーゴリ公のあらすじをご紹介![ブルガリア国立歌劇場]

ブルガリア国立歌劇場 2015年日本公演
プッチーニ:歌劇「トゥーランドット」10月10日(土) 15:00 東京文化会館
ボロディン:歌劇「イーゴリ公」10月11日(日) 15:00 東京文化会館
公演詳細(ブルガリア国立歌劇場 2015年日本公演特設サイト ジャパン・アーツ)


「だったん人ってどんな人?」「『イーゴリ公』ってどんなオペラ?」
だったん人やイーゴリ公、ボロディンの魅力をもっと知りたい方のために
韃靼人の踊り
~ 歌劇『イーゴリ公』の世界

歌劇『イーゴリ公』対訳歌詞

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