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【公演レポート】愛が恐怖と権力に打ち勝つ寓話—首都オペラ《トゥーランドット》

9月6日に神奈川県民ホールで上演された、首都オペラの《トゥーランドット》の公演を観てきました。

首都オペラ《トゥーランドット》 BImg5023 © Naoko Nagasawa (OPERAexpress)

首都オペラ《トゥーランドット》9月6日公演 第3幕より
カラフ:内山信吾/トゥーランドット:福田祥子

首都オペラは1989年の設立以来、若手歌手の育成とオペラ文化の振興という目標を掲げてガラコンサートやオペラの上演を続けてきており、定期公演は今回で第24回目となる歴史ある団体です。公演を聴くのは初めてでしたが、プッチーニの遺作となったこの大作と真っ向から取り組んだ、情熱の漲る上演でした。

9月5日、6日の二日間の公演で、主要な役はダブルキャスト。筆者が聴いたのは6日のみですが、カラフの内山信吾は、よく伸びる高音と要所を外さない歌いぶり、トゥーランドットの福田祥子はパワーのある声で、主役達の、二人共に非人間的な冷たさと秘めた情熱を歌いあげ、大変バランスのいいカップルだったと思います。リュウの陰山雅代は、やや暗めの強い声で、リュウの儚さ健気さより、芯の強さを窺わせる歌唱。ティムールやピン、パン、ポンなどの準主役たちもそれぞれに存在感を発揮し、中でもピンの飯田裕之は代役とのことでしたが、声でも演技でも印象的な好演でした。

佐藤美晴の演出は、この愛と権力と血の謎めいた寓話を最大限分かりやすく視覚化することに注力したものかと思います。黒を基調にしたシンプルな装置に、第一幕では月や王子たちの生首、第二幕では竹林や皇帝の玉座といったキービジュアルを要所要所で加えて、印象的な舞台に仕立てていました。冒頭、大臣や民衆たちに白塗りメイクで人形じみた動きをさせることで、彼らの心が恐怖に麻痺した状態であることを示し、フィナーレでは彼らが互いに抱き合って喜ぶ様子で、愛が恐怖と権力に打ち勝ち、人間性を取り戻したことを示すというように、歌詞にない部分も含め物語の内容を可能な限り具体化した、非常に分かりやすい仕上がりでした。

冒頭からフィナーレまで出番も多く重要な役割を果たす合唱は、全幕を通してエネルギーの落ちない熱演でした。児童合唱は短い出番ながら非常に上手く、素晴らしかったです。
指揮の岩村力と神奈川フィルハーモニー管弦楽団は、しっかりと手堅くオペラ全体を支えていました。
文・井内百合子 reported by Yuriko Inouchi / photo: Naoko Nagasawa


第24回首都オペラ公演 《トゥーランドット》 全3幕

作曲:G.プッチーニ
台本:G.アダミ/R.シモーニ

神奈川県民ホール 2015年9月5日、6日 14時開演

指揮:岩村 力
演出:佐藤 美晴

総監督 :永田優美子
芸術顧問 :奥畑康夫
管弦楽:神奈川フィルハーモニー管弦楽団
合唱:首都オペラ合唱団/赤い靴ジュニアコーラス

出演:
9月5日(土)
トゥーランドット:桑田葉子
リュウ:盛田麻央
カラフ:城宏憲
ティムール:矢田部一弘
ピン:古澤利人
ポン:佐々木洋平
パン:織部玲児
アルトゥム皇帝:北柴潤
役人:御舩鋼

9月6日(日)
トゥーランドット:福田祥子
リュウ:陰山雅代
カラフ:内山信吾
ティムール:佐藤泰弘
ピン:飯田裕之
ポン:根岸一郎
パン:髙嶋康晴
アルトゥム皇帝:北柴潤
役人:御舩鋼

主催:首都オペラ
共催:神奈川県民ホール

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