オペラ・エクスプレス

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ミステリアスな夜の雰囲気の中で繰り広げられるヴェルディの熱きオペラ——東京二期会オペラ劇場《イル・トロヴァトーレ》

東京二期会でヴェルディの《イル・トロヴァトーレ》初日を観ました!指揮は大人気のアンドレア・バッティストーニ。主役の四人のバランスも良く、ヴェルディの熱きオペラを堪能しました。

今回の上演は、パルマ王立歌劇場、ヴェネツィアのフェニーチェ歌劇場との提携公演とのことで、演出家はロレンツォ・マリアーニ。ミステリアスな夜の雰囲気を強調したウィリアム・オルランディの舞台美術が美しかったです。

2012年に東京二期会の《ナブッコ》公演で初来日して以来、圧倒的な人気を誇るバッテイストーニは、《ナブッコ》《リゴレット》に続いて今回三つ目のヴェルディのオペラを指揮しました。バッティストーニの指揮はバネの利いた音楽作りで、盛り上がる部分はとにかく激しい。しかし歌のラインは最大限に尊重し、歌手に対しても伴奏が薄くて難しい部分などはしっかりサポートしているように聴こえました。初めての共演となった東京都交響楽団(都響)との相性も良かったようです。
東京二期会《イル・トロヴァトーレ》 © Naoko Nagasawa (OPERAexpress)_DSC6342
《イル・トロヴァトーレ》といえば「夜」のオペラです。かなり傾斜のついた光沢のある床と舞台奥の大きな月が特徴の舞台でした。ルーナ伯爵の陣営は青、マンリーコと仲間たちは赤を基調にした衣裳。照明も美しかったです。具体的な描写は少なめで、象徴的な要素を取り入れた演出でした。第三幕(このオペラでは第三部と呼ばれる)のマンリーコとレオノーラの婚礼の場面では大きな白い寝台が舞台の真ん中に置かれているのが印象的でした。そして終幕におけるルーナ伯爵とレオノーラの二重唱では、歌い終わった後、レオノーラが床にねそべりルーナ伯爵もそこに横たわります。これは二人の間に何かあった事を暗示しているのでしょうか?

初日のマンリーコ役はゲスト歌手のエクトール・サンドバル(メキシコシティー出身)が歌いました。少し明るめの声質で叙情的な歌唱に優れ、第三部の「見よ、恐ろしい炎を」の前の「いとしいわが恋人」などは特に美しかったです。レオノーラの並河寿美は舞台姿が麗しく、演技も優れ、女性らしい情感のある歌でした。特に第四部では深々とした木管アンサンブルの後に歌われた「恋はばら色の翼に乗って」がとても良く、客席からも拍手とブラヴァの声が長く続きました。ルーナ伯爵の上江隼人は品のある敵役。そして今回、声と演技、そして卓越した音楽性で実力を示したのがアズチェーナ役の清水華澄です。《炎は燃えて》とその後の、赤子を火に投げ入れてしまった悲劇を語る所などは劇的表現が高まっても叫ばずに、歌で内容を表現して立派でした。


フェルランドの伊藤純は迫力のある声、イネスの富岡明子は音楽性が豊か、ルイスの今尾滋は声も表現もしっかりしていました。老ジプシーの三戸大久と使者の吉田連も好演。

《イル・トロヴァトーレ》は男声合唱の聴かせどころが多いオペラです。二期会合唱団は迫力のある歌を聴かせてくれました。

客席は完売ではなかったですがかなり埋まり、何よりお客さんの反応がとても良かったです。コンサートやオペラでよくあるフライング気味の拍手やブラヴォーは皆無、そして良いアリアの後や、終演後は惜しみないかけ声と拍手の嵐がなかなか止みませんでした。

文・井内美香 reported by Mika Inouchi / photograph:Naoko Nagasawa
東京二期会《イル・トロヴァトーレ》 © Naoko Nagasawa (OPERAexpress)_DSC6767
《イル・トロヴァトーレ》
オペラ全4部 日本語字幕付き原語(イタリア語)上演

原作:アントニオ・ガルシア・グティエレス『エル・トロバドール(吟遊詩人)』
台本:サルヴァトーレ・カンマラーノ、 レオーネ・エマヌエーレ・バルダーレ(補作)
作曲:ジュゼッペ・ヴェルディ

会場:東京文化会館 大ホール

公演日
2016年2月
17日(水) 18:30
18日(木) 14:00
20日(土) 14:00
21日(日) 14:00
 
パルマ王立歌劇場とヴェネツィア・フェニーチェ劇場との提携公演

指揮:アンドレア・バッティストーニ
演出:ロレンツォ・マリアーニ
   
美術:ウィリアム・オルランディ
照明:クリスチャン・ピノー
演出補:エリザベッタ・マリーニ
   
キャスト
レオノーラ:並河寿美(2/17・20) 松井敦子
マンリーコ:エクトール・サンドバル(2/17・20) 城宏憲 (2/18) 小原啓楼 (2/21)
ルーナ伯爵:上江隼人(2/17・20) 成田博之
アズチェーナ:清水華澄(2/17・20) 中島郁子
フェルランド:伊藤純(2/17・20) 清水那由太
イネス:富岡明子(2/17・20) 杣友惠子
ルイス:今尾滋(2/17・20) 大野光彦
老ジプシー:三戸大久(2/17・20) 杉浦隆大
使者:吉田連(2/17・20) 前川健生

合唱:二期会合唱団
管弦楽:東京都交響楽団

合唱指揮:佐藤宏
音楽アドヴァイザー:田口興輔
   
演出助手・字幕製作:菊池裕美子

舞台監督:佐藤公紀
公演監督:直野資

制作:公益財団法人東京二期会

主催:公益財団法人東京二期会/公益社団法人日本演奏連盟

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