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ニューヨークの観客が熱狂!“女王”ラドヴァノフスキーがベルカントの超難役に挑む———METライブビューイング《ロベルト・デヴェリュー》

METライブビューイングでドニゼッティ《ロベルト・デヴェリュー》を観てきました。

英国女王エリザベス一世が主人公のこのオペラは、テューダー朝を舞台にしたドニゼッティのオペラの中で、《アンナ・ボレーナ》《マリア・シュトゥアルダ》と一緒に〈女王三部作〉として知られています。ベルカントの超絶技巧と演技力を必要とされる難役で、プリマドンナがキャリアの円熟期に歌うことが多い作品。これまでも様々な歌手が歌ってきましたが、エディタ・グルベローヴァの映像が知られている他、近年はマリエッラ・デヴィーアも歌っています。アメリカでは、1970年代に名花ビヴァリー・シルズがドミンゴと共演してニューヨーク・シティ・オペラでこの役を歌い有名だったそうです。今回はMETで大変人気のあるソンドラ・ラドヴァノフスキーが役に挑み、NYの観客を熱狂させました。

《ロベルト・デヴェリュー》 (C)Ken Howard/Metropolitan Opera

METライブビューイング《ロベルト・デヴェリュー》
(C)Ken Howard/Metropolitan Opera

物語はエリザベス女王が愛するエセックス伯ロベルト・デヴェリューがアイルランド制圧に失敗してロンドンに戻り、反逆罪に問われている所から始まります。ロベルトはかつての恋人で今はノッティンガム公夫人となったサラを愛しており、エリザベス女王に、彼女の愛情には応えられないことを宣言、ロベルトのサラへの愛を知った女王は怒りのあまり処刑の執行書に署名しますが、最後まで彼への愛で苦しむのでした。

METは2011年と2012 年に女王三部作の《アンナ・ボレーナ》と《マリア・シュトゥアルダ》を新演出で上演しています。それらはこの《ロベルト・デヴェリュー》と同じデイヴィッド・マクヴィカー演出でした。今シーズンは3演目を一挙上演し、ラドヴァノフスキーはその全てに出演、まさにMETの女王の座に君臨したと言えるかもしれません。この《ロベルト・デヴェリュー》でのラドヴァノフスキーは威厳のある姿に、豊かな声量を持ち、同時に女らしい細やかさのある歌唱で孤独な女王エリザベスの心理を巧みに描写しました。オペラの最後にある名場面「流された血は」ではカツラを脱ぎ捨てた凄みのある容姿で、最後の高音レ(D)まで出し切り大喝采を浴びていました。

タイトルロールのロベルトを歌ったのはやはりMETの主役を数多く歌っている人気テノール、マシュー・ポレンザーニです。役柄に良く合ったエレガントな歌が素敵でした。ノッティンガム公爵のマリウシュ・クヴィチェンは友情にも愛情にも篤いがゆえの激しい怒りを巧みに表現します。そして素晴らしかったのがノッティンガム公爵夫人サラを歌ったエリーナ・ガランチャです。容姿も美しいのですが、なんといっても素晴らしい色合いの美声、そして細部まできっちりとコントロールされた歌に聴き惚れてしまいました。

マクヴィガーの演出は貴族達が演技を見守る劇中劇という見立てで、プライヴァシーが無かったエリザベスの宮廷を表し、時代物の衣裳も見応えのある美しいものでした。マウリツィオ・ベニーニの指揮は歌をよく支えていたと思います。

(文・井内美香)

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