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オペラの稽古場より―――7月18日から東京文化会館で計4公演《魔弾の射手》は、二重・三重構造で積み上げられた緻密な舞台!

オペラの稽古場より―――7月18日から東京文化会館で計4公演《魔弾の射手》は、二重・三重構造で積み上げられた緻密な舞台!

東京二期会とハンブルク州立歌劇場との共同制作による歌劇「魔弾の射手」公演が、7月18日から計4公演行われます。その通し稽古が行われている都内の稽古場にお邪魔してきました!

「魔弾の射手」といえばオペラファンには名の知れた演目ですが、知名度の割に日本での上演機会が少ないといえるこの作品。
本公演では台詞が日本語で語られるため、オペラ初心者にもスルスルと内容が理解できます。もちろんドイツ語部分には字幕が出ますので、何も心配はいりません!
また、全3幕の作品ですが休憩は3幕の前の一回だけとなっています。舞台転換も演出効果として作られており、1,2幕と比較的長い時間続きますが、隅々まで楽しめるよう趣向が凝らされていました。ただし、トイレだけは開演前に必ず済ませておきたいところですね(笑)


ぜひ注目して欲しいのが、元宝塚歌劇団男役スターの大和悠河が演じる悪魔「ザミエル」役。歌を伴わない台詞役で、本来は男性が演じる、物語の要所要所でしか出てこない出番の少ない役なのですが、今回稽古を見学して驚きました。巨匠コンヴィチュニーは随所でザミエルを出し、さらに何回も何回も衣装を変えさせる大胆な演出をつけていたからです。スタッフの方にお話を伺ったところ、同演目同演出のハンブルクでの公演と比べ、この東京公演は大和さんの能力を最大限発揮できるよう作られた特別仕様なんだそうです。男性的に、女性的に、暴力的に、時には静かに観る者を惹きつける、本当の意味で“悪魔的”なザミエルに仕上がっていると言えます。

稽古にお邪魔したこの日は「バンダ」(Banda;舞台上や舞台袖で演奏する、ピット内のメインオーケストラとは別の楽隊のこと)が稽古初参加ということで、通し稽古の前に入念に確認作業をしていました。今回の演出では、バンダを非常にコミカルに使い、自然と笑ってしまう出来となっています。

この風景を見ていて印象的だったのは、非常に和やかで楽しげで、しかし当然全員が一つの物を作ろうとする真剣さも感じられる、そんな雰囲気でした。「緻密に作られた舞台なので、チームワークがとても重要なんです。」と話してくださったのは、アガーテ役の嘉目真木子さん。「“でも楽しく”、というのがコンヴィチュニー流」だそうで、それはきっとコンヴィチュニーのオペラ愛と、それを敏感に感じ取りより良い舞台を目指すプレイヤーのプロ意識が可能にしているのだと思いました。
それは指揮のペレス氏にも言えるそうで、はたから見ていると非常に厳密な振り方をしているように見受けられましたが、出てくる音は決して硬くない。その理由を伺ったところ「決して四角四面ではなく、歌手に敏感に反応して、リアルタイムで一緒に作ってくれる素晴らしいマエストロ」(嘉目さん)というお答えが返ってきました。ペレス氏はアルゼンチン人ですが、ドイツ音楽の良さを最大限に引き出す術を完璧に持っているんだという印象を受けました。

公演まで残り2週間弱という時期での見学でしたが、前述のとおりこの時点でキャスト、合唱、助演そしてスタッフの息がぴったりと合っていました。稽古場をよく観察すると、休憩時間にも至る所で談笑しながら軽い打ち合わせが行われていることに気が付きました。「これからもっともっと良くなりますよ」と、スタッフの方も目を細めていました。プレイヤーから裏方まで、全ての人の熱意が込められた舞台なんだと感じ、これは素晴らしい公演になると断言できる、そんな稽古でした。
「二重・三重構造で積み上げられた緻密な舞台ですが、お客様とも一体となって作る舞台なので、ぜひ楽しんでほしいです」そう微笑んでコンヴィチュニー氏からのアドバイスを聞きに行った嘉目さんの後姿は、オペラ1本通した後とは思えないほど生き生きとしていました。

取材・文:オペラ・エクスプレス編集部 / 写真:長澤直子


【公演情報】

《ハンブルク州立歌劇場との共同制作》
東京二期会オペラ劇場
主催:文化庁、公益財団法人東京二期会
制作:公益財団法人東京二期会
魔弾の射手
オペラ全3幕
日本語および英語字幕付き原語(ドイツ語)歌唱、日本語台詞上演

台本:ヨハン・フリードリヒ・キント
作曲:カール・マリア・フォン・ウェーバー

会場:東京文化会館 大ホール
公演日:2018年7月
18日(水) 18:30
19日(木) 14:00
21日(土) 14:00
22日(日) 14:00

開場は開演の60分前
上演予定時間:約3時間(休憩含む)

スタッフ

指揮:アレホ・ペレス
演出:ペーター・コンヴィチュニー

舞台美術:ガブリエーレ・ケルブル
照明:ハンス・トェルステデ
演出補:ペトラ・ミュラー

合唱指揮:増田宏昭
演出助手:太田麻衣子/木川田直聡

舞台監督:幸泉浩司
公演監督:多田羅迪夫

キャスト

7月18日(水)/21日(土)/7月19日(木)/22日(日)
オットカール侯爵:大沼徹/藪内俊弥
クーノー:米谷毅彦/伊藤純
アガーテ:嘉目真木子/北村さおり
エンヒェン:冨平安希子/熊田アルベルト彩乃
カスパール:清水宏樹/加藤宏隆
マックス:片寄純也/小貫岩夫
隠者:金子宏/小鉄和広
キリアン:石崎秀和/杉浦隆大
ザミエル:大和悠河(全日)

ヴィオラ・ソロ:ナオミ・ザイラー(全日)

合唱:二期会合唱団
管弦楽:読売日本交響楽団

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