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現代に響くモーツァルト ― Opera Lab Japan《ドン・ジョヴァンニ》

現代に響くモーツァルト ― Opera Lab Japan《ドン・ジョヴァンニ》

若手アーティストによる新たなオペラ創造を目指すOpera Lab Japanが、モーツァルトの傑作《ドン・ジョヴァンニ》を「21世紀版」として上演した。会場は渋谷区文化総合センター大和田・伝承ホール。指揮を仲田淳也、演出を塙翔平が務め、タイトルロールには市川宥一郎を迎えた。
Opera Lab Japanは、「オペラをもっと身近に、もっと自由に」という発想のもと、既成概念にとらわれない舞台づくりを続けている。今回の《ドン・ジョヴァンニ》も、古典を単に再現するのではなく、現代の観客へ新たな問いを投げかける意欲的なプロジェクトとして上演し、注目を集めた。
出演は、市川宥一郎(ドン・ジョヴァンニ)、佐藤克彦(レポレッロ)、野田萌々(ドンナ・アンナ)、長島有葵乃(ドンナ・エルヴィーラ)、西山詩苑(ドン・オッターヴィオ)、近藤はるか(ヅェルリーナ)、田中響(マゼット)、齋藤涼平(騎士長)。ピアノ(齊藤真優)とヴァイオリン(岡部綾子)伴奏による上演で、伝承ホールという比較的小規模な空間を生かした緊密な舞台が繰り広げられた。
演出の塙翔平が目指したのは、単に舞台を現代に置き換えることではなく、21世紀を生きる私たちの感覚で《ドン・ジョヴァンニ》を体験させることだった。
娯楽の選択肢があふれ、時間の使い方もモーツァルトの時代とは大きく異なる現代。「もしモーツァルトが現代を生きる作曲家だったら、3時間30分の作品を作るだろうか?」という視点から作品を見つめ直すという発想が、本公演の出発点にあったようだ。21世紀を生きる私たちの感覚で《ドン・ジョヴァンニ》を体験する──そんな意欲的な試みが、この舞台には込められていた。
そのために選ばれたのは、単なるカットではなく、楽曲やレチタティーヴォの順序まで大胆に入れ替えるという再構築である。オペラではあまり例のない手法だが、不思議と物語に違和感はなく、むしろドラマの流れはより引き締まり、場面転換のテンポも心地よい。次々と展開する場面に引き込まれ、観客の集中が途切れることはほとんどない。モーツァルトの音楽が持つ推進力や劇的な緊張感が、現代の感覚の中で鮮やかによみがえっていた。
この再構築は、ドン・ジョヴァンニという人物の描き方にも新たな視点を与えている。彼はヒーローでも絶対的な悪人でもなく、周囲の人々の心情を映し出す存在として描かれる。彼との関わりによって、それぞれの人物が抱える欲望や孤独、葛藤が浮かび上がり、物語の重心は一人の主人公から、それぞれの人物が織り成す群像劇へと移っていく。
もちろん、この大胆な再構築にはさまざまな受け止め方があるだろう。しかし「なぜ今、この作品を上演するのか」という問いに真正面から向き合い、新たな解釈を提示したことに大きな意義を感じる公演となった。

取材・文:オペラ・エクスプレス編集部


写真:長澤直子


公演概要

Opera Lab Japan 主催
21世紀版 歌劇《ドン・ジョヴァンニ》
W. A. Mozart
Don Giovanni in the 21st Century

作曲:W. A. モーツァルト
台本:L. ダ・ポンテ
全2幕/イタリア語上演/日本語字幕付

日時:2026年5月23日(土)16:00開演
会場:渋谷区文化総合センター大和田 伝承ホール

スタッフ

指揮:仲田淳也
演出:塙翔平
副指揮:佐藤瑛吾
稽古ピアノ:中村海陸
舞台監督:小田原 築(アートクリエイション)
照明:沖田 麗(ライトシップ)
衣装:相川治奈
ヘアメイク:徳田智美
ピアノ:齊藤真優
ヴァイオリン:岡部綾子

キャスト

ドン・ジョヴァンニ:市川宥一郎
騎士長:齋藤涼平
レポレッロ:佐藤克彦
ドン・オッターヴィオ:西山詩苑
ドンナ・アンナ:野田萌々
ドンナ・エルヴィーラ:長島有葵乃
ヅェルリーナ:近藤はるか
マゼット:田中 響

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