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【METライブビューイング・レポート】《カヴァレリア・ルスティカーナ》《道化師》

METライブビューイングで《カヴァレリア・ルスティカーナ》《道化師》の2本立てを観ました。ヴェリズモ・オペラの定番ですが、ファビオ・ルイージの指揮によって現代における上演にふさわしいモダンさを獲得し、アルヴァレスの歌も大興奮の出来栄えでした!

METでこのオペラが新演出されるのは45年ぶりとのことです。演出はデイヴィッド・マクヴィカー。両作品は南イタリアの同じ村での違う時代の事件として考案されているそうです。共通の装置として、かなり大きい四角い舞台(踊りにも使うので足音が響くような作りになっている)が舞台の上に一枚設置され、これが回り舞台になっています。《カヴァレリア》は心理劇として演出されていてストーリーが昼なのにもかかわらず舞台はずっと暗いまま。ルチアの酒場を示す長テーブル(これもかなり大きい)と椅子がたくさんあるだけで、衣裳は1900年という今回設定の(公演プログラムに記載されている)時代通りです。最初サントゥッツァが多くの男たちに囲まれてオペラがスタートし、彼女は登場場面以外でも舞台前面の端に座っていることが多く、そのことによってサントゥッツァから見た物語、という視点が示されます。

カヴァレリア・ルスティカーナ (C)Cory Weaver/ Metropolitan Opera
カヴァレリア・ルスティカーナ
(C)Cory Weaver/ Metropolitan Opera

一方《道化師》はサーカス団がトラックでやってきているという設定で、時は1949年、ほぼ写実的な演出でした。カラフルな舞台で、アクロバットの3人組が活躍する劇中劇のギャグがかなりブラックだったのも面白かったです。冒頭部分でネッダを乗せて登場する本物の馬も可愛い(笑)。

道化師 (C)Cory Weaver/ Metropolitan Opera
道化師
(C)Cory Weaver/ Metropolitan Opera

今回、素晴らしかったのがファビオ・ルイージの指揮でした。ルイージはイタリア人らしくメロディーなどはたっぷりと美しく歌わせます。そして、それに加えて19世紀末に書かれた両作品の中にある当時としては新しかった部分、例えばマスカーニの中にあるワーグナーの影響、レオンカヴァッロの音楽にあるフランスのオーケストレーション(特に管楽器の使い方など)からの影響などを強調して聴かせる知的アプローチが新鮮でした。

歌手では両方の主役を歌ったマルセロ・アルヴァレスが素晴らしかったです。彼本来のリリックな声を保ちつつ、その中でヴェリズモ・オペラらしい激情的な面も最大限に表現。《道化師》では低音部分でかなり地声の響きも使いながら、高音部分も鮮やかに決めていました。サントゥッツァのヴェストブルックは音楽的にも優れていましたが、真面目でひたむきな演技がこの役に合っていると思いました。アルフィオと《道化師》のトニオを歌ったギャグニッザは予定されていたジェリコ・ルチッチの代役だそうですが大変立派な声。《道化師》のヒロインを歌ったラセットは演技力が抜群で、ネッダの情念をよく表現し、殺される前にカニオと渡り合う迫力も素晴らしかった。シルヴィオのミーチャム、ベッペのアンドリュー・ステンソンも適役でした。

最後に。幕間の特集映像でMETが取り組む教育プログラムとして、地元の高校の吹奏楽部をパトリシア・ラセットが訪問して、生徒たちの色々な質問に答える様子を紹介していました。こういう映像を見られるのもライブビューイングならではですね。ラセットさん素敵な人でした!

文・井内美香/reported by Mika Inouchi


*マスカーニ《カヴァレリア・ルスティカーナ》
トゥリッドゥ:マルセロ・アルヴァレス(テノール)
サントゥッツァ:エヴァ=マリア・ヴェストブルック(ソプラノ)
アルフィオ:ジョージ・ギャグニッザ(バリトン)

*レオンカヴァッロ《道化師》
カニオ:マルセロ・アルヴァレス(テノール)
ネッダ:パトリシア・ラセット(ソプラノ)
トニオ:ジョージ・ギャグニッザ(バリトン)
シルヴィオ:ルーカス・ミーチャム(バリトン)

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