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ベルカントの至芸!第24回みつなかオペラ《ノルマ》公演レポート

ベルカントの至芸!第24回みつなかオペラ《ノルマ》公演レポート


ベルカントの至芸!兵庫県川西市の〈みつなかホール〉でベッリーニ作曲《ノルマ》を観てきました!ソプラノの尾崎比佐子が音楽性と歌の技術で圧倒的なノルマ役を演唱し、その他のキャストも充実した素晴らしい公演でした。

〈みつなかオペラ〉は今年、第24回目を迎えるオペラ公演です。一昨年からは三年間のベッリーニ“ベルカント・オペラ”シリーズがスタートし、既に《カプレーティとモンテッキ》、《清教徒》を上演し、今年は《ノルマ》を取り上げました。公演は19日(土)、20日(日)の二日間でダブル・キャストでしたが私は20日のみ観る事が出来ました。公演は二日ともかなり前からソールド・アウトだったそうです。

〈みつなかオペラ〉の音楽監督でもある牧村邦彦がピットに登場し、序曲がスタートします。演奏はザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団。ピットはわりと深さがあり、全体が溶け合ったサウンドでした。旋律美を活かすと同時にきびきびしたテンポが心地よかったです。

尾崎比佐子
尾崎比佐子

フェリーチェ・ロマーニの書いた美しいけれどもドラマチックな台本に崇高な音楽を書いたベッリーニ。タイトルロールを歌った尾崎はピアニッシモからフォルテまで声を細かくコントロールし、ノルマ役の音楽をじつに巧みに描いていきました。ロマン派の歌は緩急が多く、ルバートなども多いのですが、歌とオーケストラがぴったり合っているのもさすがでした。尾崎は舞台姿も美しく、また演技にも巫女のカリスマと一人の女としての悩みの両方がよく表現されていたと思います。登場のアリア「カスタ・ディーヴァ(浄き女神よ)」はフルートの前奏も素晴らしい演奏でしたし、ノルマの歌も大変美しかったです。また子供らを前にしての悩み、アダルジーザとの対話、第二幕の様々な思いに翻弄される場面など聴きどころがたくさんありました。「戦いだ!」の場面も迫力を出す為に声が汚くなったり力んだりせずにベルカントの品格を保ったまま音楽性で激しさを表現していました。

ポリオーネを歌った藤田卓也は特に中音域の音色が大変美しいテノールで、舞台姿も良く、歌も情熱的で適役だったと思います。アダルジーザの木澤佐江子も好演。ソプラノですが少し暗めの音色を持ちノルマの声との釣り合いも良かったです。オロヴェーゾの片桐直樹は舞台姿が立派で、歌も特に後半は迫力がありました。フラーヴィオ役のテノール 小林峻、クロティルデの味岡真紀子も歌も演技も良かったです。

合唱は舞台での動きがスムーズで歌も良く、特に男声はかなり迫力がありました。

巫女姿のダンサーたちはノルマの心情を表したり、最後の火刑の場面でも活躍します。ノルマの子供役で出演していた二人の子役がとても可愛い上に演技が上手で驚きました!

舞台装置は森林がデザインされたモノトーンの大きなタワーが二つあり、回転することで舞台が転換していきます。照明は暗めでガリアの暗い森の雰囲気を出し、写実的な衣裳も美しかったです。井原の演出は合唱の動きが割と激しいのですが皆よくついていっていました。階段など段差の使い方、第一幕の最後の三人の主人公の動かし方等はとても効果的でした。

よく考えるとノルマもポリオーネもかなり自己中心的な登場人物なのですが、そこに描かれている感情は普遍的なものだと思います。ノルマが最後に崇高な決断をし、ポリオーネもノルマへの愛を取り戻して二人が舞台奥に歩むところで幕となりました。

ベルカント・オペラの魅力がつまった素晴らしい公演を堪能しました。客席からもブラヴォーの声と盛大な拍手が長く続いていました。

(所見:9月20日)
文・井内美香 reported by Mika Inouchi

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第24回みつなかオペラ
2015年9月19日(土)16:00開演、20日(日)14:00開演

V. ベッリーニ“ベルカント・オペラ”シリーズ
〜作曲家に愛された作曲家、旋律の魔術師ベッリーニの世界〜III
歌劇《ノルマ》全2幕 原語上演 字幕付
作曲:ヴィンチェンツォ・ベッリーニ
原作:アレクサンドル・スーメ
台本:フェリーチェ・ロマーニ

スタッフ:
指揮:牧村邦彦
演出:井原広樹
合唱指揮:岩城拓也

装置:アントニオ・マストゥロマッティ
振付:生駒里奈
照明:原中治美
衣裳:村上まさあき

音響コーディネーター:小野隆浩
舞台監督:青木一雄

スコア・リダクション:倉橋日出夫
字幕作成:唐谷裕子

キャスト:
ノルマ:並河寿美(9月19日)/尾崎比佐子(9月20日)
ポリオーネ:松本薫平(9月19日)/藤田卓也(9月20日)
アダルジーザ:佐藤信子(9月19日)/木澤佐江子(9月20日)
オロヴェーゾ:畑奨(9月19日)/片桐直樹(9月20日)
クロティルデ:河野佳子(9月19日)/味岡真紀子(9月20日)
フラーヴィオ:野津良佑(9月19日)/小林峻(9月20日)

ダンサー:唐木智子、マスダ寛子、定國可奈、山城敦子

管弦楽:ザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団
バンダ エレクトーン:江島美由紀
トランペット:片山晃、門田崇

合唱:みつなかオペラ合唱団
主催:みつなかオペラ実行委員会、(公財)川西市文化・スポーツ振興財団

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