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【特別取材】大野和士と都響メンバーが浅草で小学生と交流!—第17回 都響マエストロ・ビジット

【特別取材】大野和士と都響メンバーが浅草で小学生と交流!—第17回 都響マエストロ・ビジット

第17回 都響マエストロ・ビジット
音楽監督 大野和士×都響メンバーの特別授業

11月4日、東京都交響楽団(都響)のマエストロ、大野和士さんが都響のメンバー達と一緒に浅草小学校を訪問しました。『都響マエストロ・ビジット』は都響が2004年に始めた、都内の小・中学校や高校を訪問して行う「特別授業」です。

(c)Rikimaru Hotta
(c)Rikimaru Hotta

浅草小学校は浅草駅から徒歩5分、浅草寺からも3分位という外国人観光客がおおぜい闊歩している地区にありました。今年創立142年という歴史のある小学校です。綺麗な建物で玄関も立派でした。生徒たちは制服着用です。玄関でスリッパに履き替えていると、低学年の子供が私たちを見つけて「こんにちは!」と笑顔で声をかけてくれたので慌てて挨拶を返しました。

階段を昇っていくと各階の教室はかなり広いように感じました。この浅草小学校にはスクールバンドがあり、3年生以上が参加できるのだそうです。オーケストラ編成で、レパートリーはポップスからクラシックまでを演奏し、毎朝、早朝練習を行っているとのこと。クラブに所属している児童は今年度は110名。その中で、5年生、6年生の計95名がこの日の授業に参加しました。楽器をやっている生徒と合唱をやっている生徒に分かれています。

会場は体育館。3時間目、4時間目を使った二部構成になっていて、前半は大野和士さんが生徒たちにお話をし、後半は実際の演奏の時間です。体育館の中央に生徒たちが座っているところへマエストロ大野が登場。挨拶を交わした後は、指揮者とはどんな仕事なのか、という紹介です。大野さんはご自分が使っているという指揮棒を20本程取り出して生徒たちに配り早速実践、「指揮してみよう!」コーナーの始まりです。指揮棒を持った生徒たちは前に出て、ずらりと並んで練習がスタート。

マエストロは、「まずは一を振ってもらいます。一だからね、ここから世の中が始まるんだ!って思いながらやるんだよ。」「あのね、確信なんだよ。指揮者になった時のとても重要な事は『自分の存在でこの世の中を変えてみせる。この世の中は変わるんだ!』という確信を持って振ることなんだ。じゃあ、いくよ!」と、指揮の奥義を伝授してレッスンが始まります。生徒さんたちに指揮棒の振り方を指導してはピアノに駆け戻って色々な曲を弾いて伴奏していました。ビートルズの「ヘイ・ジュード」「レット・イット・ビー」そしてブラームスの子守唄などを使っての指導でした。

指揮棒を上下に振るだけの一拍子から、二拍子、三拍子、四拍子まで行ったところで内容は急に高度になります。右手で拍子を取りながら左手で表情をつける練習です。これは難しい!生徒たちはかなり照れて笑いながらジェスチャーをしていましたが、中にはちゃんと様になっている子も。最終的には男子生徒が一人選ばれ、大野さんから記念に指揮棒がプレゼントされました。

ここで休憩時間です。皆さん仲良し同士で輪になったり、大野さんを囲んでお話を聴いたり賑やかでした。

後半は都響の四人のメンバーとピアニストが登場します。大野さんが一人一人紹介して少しインタビューしてから演奏。ファゴットとトランペットの男性お二人は小学生で音楽を始めたそうですが、ヴァイオリンとヴィオラの女性お二人は3歳や4歳で楽器を始めたということでした。それぞれ演奏した曲は以下の通りです。

サン=サーンス「白鳥」(都響首席ファゴット奏者:長哲也)
ブロートン「オリヴァーの誕生日」(都響トランペット奏者:内藤知裕)
モンティ「チャルダッシュ」(都響ヴァイオリン奏者:大和加奈)
成田為三「浜辺の歌」(都響ヴィオラ奏者:小島綾子)
ピアノ伴奏:森浩司

ファゴットの柔らかい音色、トランペットの自由自在な演奏、ヴァイオリンの華やかさ、ヴィオラの低音の響きなどが印象深かったです。それぞれの楽器を実際に演奏している生徒がプロの演奏を間近で聴けるのは素晴らしい事だと思いました。生徒たちからの質問も「どうやったら高い音がうまく出ますか?」など具体的でした。感想としては「それぞれの楽器の音色や高さが違う」ということを一番感じていたようでした。

最後は、先ほど選ばれた男子生徒の指揮でオーケストラと合唱が演奏。曲は「音楽のおくりもの」(作詞:名村宏 作曲:赤尾暁)です。マエストロ大野が生徒の手を取って一緒に指揮します。都響の四人のメンバーも生徒たちに混じって演奏していました。そして、もう一度、今度は大野さんが一人でタクトを取り、オーケストラと合唱の皆が音楽を奏でました。

(c)Rikimaru Hotta
(c)Rikimaru Hotta

この教育プログラムを見学して思ったことは、「私も小学校の時にオーケストラをやってみたかった」ということです。同級生と一緒に演奏出来たらさぞ楽しかっただろうな、と思います。そしてマエストロ大野や都響の方々が自分の小学校に来て演奏してくれたら感激しただろうな、と思います。これまでスクールバンドで演奏していた生徒たちが自分で指揮棒を持って振ってみた、というのも貴重な体験だったに違いありません。

世界中で指揮体験授業をやっているマエストロ大野ですが、浅草小の生徒さん達はとてもリラックスした雰囲気で楽しく指揮にトライしてくれたという印象だそうです。ヨーロッパでは知らない大人に対して警戒心が強い子供たちがいる地域も多いそうで、それは町の治安が悪いのが大きな原因ですが、それに比べて日本ではこのようなアウトリーチ活動を子供たちが心を開いて受け入れてくれるそうです。都響とは今後も教育活動を続けていく予定とのことでした。

(文・井内美香)

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