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日本の美しさ、蝶々さんのエキゾチックな魅力をきめ細かく描く———METライブビューイング《蝶々夫人》

日本の美しさ、蝶々さんのエキゾチックな魅力をきめ細かく描く———METライブビューイング《蝶々夫人》

METライブ・ビューイングで《蝶々夫人》を観ました。大変見応えのあるプロダクションです。特にタイトル・ロールを演じたクリスティーヌ・オポライスの入魂の歌は感動のひと言でした!

このプロダクションは、「イングリッシュ・ペイシェント」や「リプリー」などで有名な英国人映画監督アンソニー・ミンゲラの演出で、METでは2006年に初演されたものです。ミンゲラの《蝶々夫人》には文楽のような人形遣いや、黒子たちがあやつる襖や提灯などが登場します。装置を最小限にして照明で変化をつけた舞台は、日本の美しさ、蝶々さんのエキゾチックな魅力、彼女に魅了されるピンカートンの情熱、蝶々さんの愛と執着、そして悲劇的な結末までがきめ細かく表現されていました。特に印象的だったのは、第一幕最後の二重唱においてのたくさんの提灯ときらめく花びらの夢のような美しさ、そして第二幕以降に出てくる蝶々さんの子供を生身の子供ではなく、文楽のように動かす人形を使ったことです。

METライブビューイング《蝶々夫人》  (C)Ken Howard/Metropolitan Opera
METライブビューイング《蝶々夫人》

(C)Ken Howard/Metropolitan Opera


キャストで圧倒的だったのは蝶々さんを歌ったクリスティーヌ・オポライス。前作《マノン・レスコー》のマノンも存在感がありましたが、彼女の蝶々さんは一途で情熱的、また歌もコントロールとパワーをあわせもった素晴らしい出来栄えでした。聴かせどころのアリア「ある晴れた日に」は知性を感じさせる緻密な歌唱が良かったです。

相手役のロベルト・アラーニャは若々しい海軍士官の姿がよく似合います。思慮が浅く、女性の魅力に弱いピンカートンを好演していました。スズキのマリア・ジフチャックとシャープレスのドゥウェイン・クロフトも脇役としてのキャラクターがしっかりしています。

指揮のカレル・マーク・シションはMET初登場。オポライスの歌をよく支えて流麗なプッチーニの音楽を堪能させてくれました。

幕間のインタビューではまもなく引退だというMETの美術部門責任者の方や、人形遣いの三名の話が面白かったです。彼らの舞台への情熱がひしひしと感じられました。

METライブ・ビューイング、次の上映はドニゼッティの《ロベルト・デヴェリュー》です。冷酷なエリザベス女王役をソンドラ・ラドヴァノフスキーがどう歌うのか、楽しみにしています!

(文・井内美香)

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