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灯はまだ煌煌と―大田区民オペラ合唱団第三回定期公演「カヴァレリア・ルスティカーナ」

灯はまだ煌煌と―大田区民オペラ合唱団第三回定期公演「カヴァレリア・ルスティカーナ」

「大田区のオペラは今回で最後かも」外からとも中からともなくそういわれて久しいもの。もともと大田区民オペラ協議会主催のオペラ公演で合唱を担当してきた合唱団。遡るとすでに30年近い歴史を重ねてきています。日本は合唱王国。全国各地にプロはもとより、様々な職業に従事しつつ「唇に歌を持て」と活動する合唱団、数は多数存在しますが、オペラ合唱をメインで活動するとなるとやはり少数派ではないでしょうか。

今回この合唱団の活動として、カヴァレリア・ルスティカーナを上演。一見「短い演目」とか思いがちですが、密度の濃い、イタリアの風土ならではの部分が色濃い作品。オペラで「お茶を濁す」つもりならほかに幾らも演目はあるはずです。確かに演奏会形式では以前に一度舞台で演奏している作品ではありますが、やるに事欠いて「カヴァレリア・ルスティカーナ」は大概であることには違いないでしょう。

それに加えて、キャストがあり得ない豪華キャスト。サントゥッツァ鳥木弥生さん、トゥリッドゥ城宏憲さん、ルチア牧野真由美さん、アルフィオ上江隼人さん、ローラ鷲尾麻衣さん。今このキャスト、日本で上演するならば、理想的なキャスティングのカヴァレリア・ルスティカーナではないでしょうか。よく集まったものだと思いました。それは決して「揃った名前」ばかりの名歌手の歌ではなく、強烈な説得力のある舞台に仕上がっていました。オペラは舞台だから見た目でも説得力があるかどうかは大事であり、またちょっとした仕草でも抜かりなく仕上がっていました。

あと、なんといっても合唱の皆さん。正直年齢層も高くなってきて、パワーで押す、という点や、精度的な高さはかつての公演に比べるとさすがに時間の経過を認識せざるを得ない場面もあったのは事実です。しかし、押し切るのが音楽だろうか、というメッセージさえかじるマイルドさ、登場事物の人生的背景を描写するような歌は素晴らしかったし、群衆感が強く出ていたところも実に心を打たれたものでした。

そして、こういう面々をステージの上で有機的に動かした山口将太朗さんの演出と、まさに鞍の上の仕事と評したくある辻博之さんの指揮。そうした全体のコミュニケーションがしっかりと舞台に出た公演でした。

観ておいてよかった。こう思えるのも、劇場でオペラを観る歓び。
「その手があったか」のその手をまた見せてほしい。大田区のオペラにはいつもそんなことを感じるものなのだ。(2019年12月1日・太田区民ホールアプリコ 大ホール)

自動車ライター  中込健太郎

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