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新国立劇場2017/2018シーズンラインアップ説明会———開場20周年を祝う、ワーグナー《神々の黄昏》、細川俊夫《松風》、ベートーヴェン《フィデリオ》を新制作で

新国立劇場2017/2018シーズンラインアップ説明会———開場20周年を祝う、ワーグナー《神々の黄昏》、細川俊夫《松風》、ベートーヴェン《フィデリオ》を新制作で

新国立劇場2017/2018シーズンラインアップ説明会が開かれました!2017/18は新国立劇場が開場して20周年を祝うシーズンです。ワーグナー《神々の黄昏》、細川俊夫《松風》、そしてベートーヴェン《フィデリオ》の新制作を行うという意欲的なプログラムが発表されました。

説明会はオペラ、舞踊、演劇の三部門合同で行われました。後半にはそれぞれの部門の芸術監督との懇談会があったのは例年通りです。

新国立劇場2017/2018シーズンラインアップ説明会
左より:宮田慶子(演劇芸術監督)/飯守泰次郎(オペラ芸術監督)/大原永子(舞踏芸術監督)

まずは新国立劇場の総務部、総合企画室、制作部担当常務理事の村田直樹氏より挨拶がありました。

「当劇場は開場以来、オペラ、舞踊、演劇の各ジャンルから芸術監督を迎え、それぞれの芸術性を発揮して頂き、我が国唯一の国立の現代舞台芸術の劇場に相応しい公演の企画、制作、上演に務めてきました。この間、多くの観客の皆様にご愛好いただいています。そこで当劇場ではこの20周年の成果をふまえ、さらなる発展に向けて、本日発表致します2017/18シーズンの全演目を開場20周年記念公演として上演する事としました。さらにシーズン演目の中でも、20周年を祝うに相応しい、特に祝祭的意味合いを兼ね備えたものをオペラで二演目、バレエで一演目、特別公演として上演します」。

この特別公演とは、1998年に開場記念公演として制作されたフランコ・ゼッフィレッリ演出のヴェルディ《アイーダ》と、今シーズン新制作されるカタリーナ・ワーグナー演出、飯守泰次郎指揮のベートーヴェン《フィデリオ》です。


続いて、オペラ芸術監督の飯守泰次郎氏からオペラ・ラインアップの説明がありました。

新国立劇場2017/2018シーズンラインアップ説明会
飯守泰次郎

「20周年を祝うにふさわしい、豪華で多彩なラインアップを準備しました。今シーズンの2016/17は財政上の制約により、日本人作品の上演を断念せざるを得ませんでしたが、今度の2017/18シーズンはふたたび日本人作品を取りあげる事が出来、たいへん嬉しく思っております。」

「このシーズンの指揮者、演出家を含めたキャスティングは、開場20周年を迎え、さらなる発展に向けて、ベテランとともに次世代を担う若手を多く登用するように致しました。世界で華々しく活躍する注目の歌手が続々と初登場します」。

今シーズンの新制作は3本です。シーズンオープニングは2017年10月に上演されるワーグナーの楽劇「ニーベルングの指環」第3日《神々の黄昏》。新国立劇場で3シーズンに渡って上演されて来た「指環」の掉尾を飾るものです。ステファン・グールド、ペトラ・ラング、アルベルト・ペーゼンドルファーなど新国立劇場で既に歌っているワーグナー歌手たちに加えて、《神々の黄昏》では、ヴァルトラウテ役でヴァルトラウト・マイヤーが出演するのがサプライズでした。来日も多い名歌手ですが新国立劇場には初登場となります。またこの公演で演奏する読売日本交響楽団も新国立劇場初登場となり注目です。指揮は芸術監督の飯守泰次郎。

新制作二本目は2018年2月に上演される細川俊夫作曲の《松風》です。飯守氏は2012年に新国立劇場の芸術参与に就任した当初から細川俊夫のオペラ上演を強く望んでいたとのことで、その念願がようやくかない《松風》の日本初演が実現します。《松風》は能の古典《松風》をもとに、ハンナ・デュブゲンがドイツ語台本を書いた一幕五場のオペラ。ダンスの振付けで名高いサシャ・ヴァルツの演出で2011年にベルギー王立モネ劇場で初演され、その後も各地で再演され高い評価を得ている作品です。今回はそのプロダクションで既に歌っているヨーロッパの歌手達が新国立劇場の舞台にも登場します。

三つ目はベートーヴェンの唯一のオペラ《フィデリオ》。「もっとも深い精神性と高貴な理想を表現する特別な作品。」として、欧米では大きな節目や重要な記念日に際してとりあげられる伝統があり、「開場20周年にもっとも相応しいこの《フィデリオ》を、近年大きな注目を集める演出家で、バイロイト音楽祭総監督を務めるカタリーナ・ワーグナーを迎えて上演します」。新国立劇場のオリジナルとしての新制作であり、レオノーレ役にはリカルダ・メルベート、フロレスタン役にはステファン・グールドという新国立劇場で愛されている一流歌手が主演し、飯守泰次郎がタクトをとります。

その他の上演演目も魅力的なプロダクションが目白押しです。

2015年に初演されたヴァンサン・ブサール演出《椿姫》のプロダクションを指揮するのはリッカルド・フリッツァ、ヴィオレッタ役はイタリアで活躍するイリーナ・ルングが歌います。

ジョナサン・ミラー演出の美しい《ばらの騎士》はウルフ・シルマー指揮、元帥夫人はリカルダ・メルベート、オクタヴィアンにはこの役で大変評価が高いダニエラ・シンドラム、そしてゾフィーのゴルダ・シュルツも注目の歌手です。

そして2018年の幕開けはオペレッタ《こうもり》。ウィーンっ子の大ベテラン、アルフレード・エシュヴェ指揮、ハインツ・ツェドニク演出の舞台です。

そして2月には細川俊夫の《松風》の後にオッフェンバックの《ホフマン物語》が上演されます。フィリップ・アルロー演出による幻想的な舞台に指揮のセバスティアン・ルランは新国立劇場初登場。ホフマン役は昨年の《ウェルテル》公演で好評を博したディミトリー・コルチャックが演じます。オランピアの安井陽子、アントニアの砂川涼子、そしてジュリエッタの横山恵子と、日本人歌手が三人のヒロインを歌うのも注目です。

3月にはドニゼッティの《愛の妙薬》があります。ルーシー・クロウのアディーナにサイミール・ピルグのネモリーノという新国立劇場初登場コンビが楽しみです。

そして新国立劇場開場20周年記念特別公演のヴェルディ《アイーダ》は、フランコ・ゼッフィレッリの演出・美術・衣裳で、新国立劇場が開場して以来その豪華な舞台で観客を魅了し続けてきた演目です。今回は指揮がパオロ・カリニャーニ、アイーダ役は韓国人ソプラノのイム・セギョン、ラダメスはウズベキスタン出身のナジミディン・マヴリャーノフと若手の二人です。

最後の演目はアントネッロ・マダウ=ディアツ演出の豪華な舞台で知られる《トスカ》。今回は早逝したイタリアの名指揮者マルチェッロ・ヴィオッティの息子で、その才能が注目されているロレンツォ・ヴィオッティの指揮で上演されます。トスカ役は新国立劇場初登場の歌姫キャサリン・ネーグルスタッド。カヴァラドッシ役は2015年に同役を歌って好評だったホルヘ・デ・レオンです。悪役スカルピアにはイタリア人のクラウディオ・スグーラ。この公演は滋賀県のびわ湖ホールとの提携公演となり、合唱には新国立劇場合唱団に加えてびわ湖ホール声楽アンサンブルが出演するそうです。

この他にも新国立劇場は学校対象公演として《蝶々夫人》を上演する他、特別企画として2017年5月17日に中劇場で邦人歌手による《ジークフリート》ハイライトコンサート、また8月26、27日には同じく中劇場でアーサー・サリバン作曲のイギリスのコミック・オペラ《ミカド》が上演されるのも面白そうです。これは新国立劇場が毎年行っている地域招聘オペラ公演で、びわ湖ホールのプロダクションを東京で上演するものです。園田隆一郎指揮、中村敬一演出・訳詞で、日本語上演/日本語字幕付きです。

オーケストラは《神々の黄昏》が読売日本交響楽団、《こうもり》《松風》《フィデリオ》が東京交響楽団、それ以外の演目が東京フィルハーモニー交響楽団となります。

このシーズンは飯守泰次郎氏のオペラ芸術監督としての最後の年になります。文化に対する財政の縮小は世界的な傾向ですが、その中で最大限の芸術的な成果が得られるように力を尽くした公演の数々が楽しみです。

文・井内美香 reported by Mika Inouchi / photograph : Naoko Nagasawa

演目・上演日などの詳細は、新国立劇場のサイトにアップされています。
新国立劇場 2017/2018シーズン オペラ ラインアップを発表しました

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