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運命の赤い月。大人気のマエストロ 山田和樹が、初のオペラに挑む―――藤原歌劇団公演《カルメン》へのViva Operaツアー

運命の赤い月。大人気のマエストロ 山田和樹が、初のオペラに挑む―――藤原歌劇団公演《カルメン》へのViva Operaツアー

藤原歌劇団の《カルメン》公演に行ってきました!前回の《愛の妙薬》に引き続きインターネット・ラジオOTTAVAさんとの共同企画第3弾で、リスナーさん達5名とOTTAVAのプレゼンター斎藤茂さんと一緒です。リスナーさんの構成は男性3名、女性2名。普段あまりオペラをご覧にならない方が中心でした。

今回の《カルメン》公演は、いま大人気のマエストロ 山田和樹が初めてオペラの指揮をし、また彼が率いる日本フィルもオペラは28年ぶりということが話題になっていました。そして岩田達宗の新演出と、カルメン役にミリヤーナ・ニコリッチ、ゴーシャ・コヴァリンスカという二人のゲスト歌手を迎えての上演も期待が高まっていたと思います。

藤原歌劇団《カルメン》より
カルメン:ミリヤーナ・ニコリッチ/ドン・ホセ:笛田博昭

岩田演出の際立った特徴は舞台奥にずっと存在していた赤い月。運命の月に引き寄せられて出会う男と女の物語です。そして今回の演出は人間の中にある本能的な暴力性もテーマになっていたようでした。

私たちが観た日のカルメンを歌ったニコリッチは大柄な美女。声も豊かです。素晴らしかったのはドン・ホセを歌った笛田博昭で、情熱的な美声を見事にコントロールして聴かせどころのアリア「花の歌」も最高の出来映えでした。長身の立派な体躯で、暴力を振るう事が多い演技も迫力です。ミカエラの小林沙羅はひたむきで芯の強い女性を表現。そしてエスカミーリョ役の須藤慎吾は登場の場面の「闘牛士の歌」の演唱で聴衆を魅了しました。

動きが多い演出でしたが、黒い革のコートでサディスティックな上司スニガを演じた伊藤貴之を初め、モラレスの押川浩士、そしてカルメンのジプシー仲間フラスキータの平野雅世、メルセデスの米谷朋子、ダンカイロの安藤玄人、レメンダードの狩野武など、皆のチームワークが際立ちます。そして藤原の合唱団は歌も演技も表現が濃いです。一人一人が登場人物をしっかり演じていました。第二幕に見せ場があるフラメンコ(平富恵スペイン舞踊団)の踊りも大変良かったです。第一幕と第四幕に登場する児童合唱団(東京少年少女合唱隊)は良く通る声で、特に第四幕の冒頭部分は活き活きした歌唱で魅力的でした。


今回の《カルメン》上演はレチタティーヴォが極端なまでに切り詰められており、かなりの部分が音楽を主体として芝居が進行していきます。山田和樹と日本フィルの演奏は、ただ情熱的なだけでなく、コントロールがよくきいていて緻密。これまで聴けていなかった楽器が浮き上がって聴こえて来る感覚がありました。第三幕への前奏曲等のオーケストラのみの部分ではフランス音楽に造詣が深いマエストロらしい繊細な音色が聴かれ、フルート・ソロも見事。全体的なテンポ配分も良く作品を堪能する事が出来ました。
(所見:2月5日)

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終演後は拍手と歓声が飛び交います。そしてロビーに出ると、たった今、舞台で歌っていたキャストの皆さんが出口でお客さんに挨拶をしています。キャストと観客が触れ合う貴重な機会だと思いました。

IMG_3194

今回もOTTAVAのリスナーさん達とキャストの方々と一緒の記念撮影をさせていただきました。参加した皆さんにとって素晴らしい記念になったと思います。藤原歌劇団さん、どうもありがとうございました!

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IMG_3197ロビーで集合写真を撮った後、私たちはマエストロ山田に会うために楽屋訪問をさせて頂きました。マエストロは熱演の直後でお疲れのご様子でしたが、斎藤茂さんのインタビューにも喜んで応じて下さいました。ここでもまたお写真をパチリ。最終日の撤収でお忙しい中、お邪魔しました!

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最後は「Viva Operaツアー」のお約束(?)である居酒屋反省会に繰り出します。鑑賞した舞台について、そしてオペラやその他の話題を皆さんと語り合いました。楽しかったです!

文・井内美香 reported by Mika Inouchi / stage photography by Naoko Nagasawa


《カルメン》
Carmen
全4幕 字幕付き原語上演(シューダン旧版によるギロー版)

ジョルジュ・ビゼー作曲
リュドヴィク・アレヴィ/アンリ・メイヤック台本

2017年2月3日(金)18:30、4日(土)、5日(日)14:00
東京文化会館大ホール

指揮:山田和樹
演出:岩田達宗

出演:
カルメン:ミリヤーナ・ニコリッチ(2/3&5)/ゴーシャ・コヴァリンスカ(2/4)
ドン・ホセ:笛田博昭(2/3&5)/藤田卓也(2/4)
エスカミーリョ:須藤慎吾(2/3&5)/王立夫(ワン・リーフ)(2/4)
ミカエラ:小林沙羅(2/3&5)/伊藤晴(2/4)
スニガ:伊藤貴之(2/3&5)/田島達也(2/4)
モラレス:押川浩士(2/3&5)/月野進(2/4)
フラスキータ:平野雅世(2/3&5)/尾形志織(2/4)
メルセデス:米谷朋子(2/3&5)/増田弓(2/4)
ダンカイロ:安東玄人(2/3&5)/坂本伸司(2/4)
レメンダード:狩野武(2/3&5)/琉子健太郎(2/4)

合唱:藤原歌劇団合唱部
児童合唱:東京少年少女合唱隊
舞踊:平富恵スペイン舞踊団
管弦楽:日本フィルハーモニー交響楽団

合唱指揮:須藤桂司
美術:増田寿子
衣裳:半田悦子
照明:大島祐夫
舞台監督:菅原多敢弘
振付:平富恵

児童合唱指揮:長谷川久恵

字幕:増田恵子(原訳:和田ひでき)

総監督:折江忠道
制作:公益財団法人日本オペラ振興会

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