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オペラは文化の壁を超えて―カルロ・フォルテス(ローマ歌劇場総裁)インタビュー

オペラは文化の壁を超えて―カルロ・フォルテス(ローマ歌劇場総裁)インタビュー

現在、ローマ歌劇場を率いて日本公演を行っている、カルロ・フォルテス総裁に、お話を伺うことができました。
9月12日の《椿姫》の公演後に行われたインタビューでは、オペラ・エクスプレスからの質問に、丁寧に答えて下さいました。

カルロ・フォルテス

カルロ・フォルテス(ローマ歌劇場総裁)


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最初の質問は、「総裁」という職種についてです。
日本には、残念ながら「ローマ歌劇場」のような劇場がないので、「歌劇場総裁」という職業がありません。「歌劇場総裁」という仕事がどのようなものかお話し頂けますでしょうか。

フォルテス総裁
まず最初に申し上げることは、劇場は一つの大きな企業であるということです。ローマ歌劇場にはオーケストラ、合唱団、バレエ団、そして舞台や衣装を作る専門職の職人など約650人が働いています。というわけで総裁はこれらの人々が働きやすい職場を作る責任を負います。 またいうまでもなく「観客のための計画と活動」を考えることも重要です。ですからジェネラルマネージャーとしての仕事の醍醐味は、芸術と経営という二面を同時に管理できる事です。

確かに経営面、アーティスト関連すべての権限を持っています。もちろん大きな組織なので、各々の分野に代表責任者が配置されています。芸術監督、事務局長、オペレーションディレクター、美術監督、舞台監督、技術監督などです。大切なのはこれらの人々すべてが一丸となって働き、融合され、ひとつの方向に向かって進むということです。アーティスト側と経営陣側の衝突はよくあります。それはマーケティング(市場調査)の側面を考えていないからです。チケット販売、スポンサーの意向、そしてイタリアでは国や市という社会制度が重要な意味を持ちます。なぜなら劇場は公立だからです。ですから行政を意識しなければなりません。国や都市など利潤をにあずかるところが多々あります。また聴衆は世論の一部ですし、新聞、そしてすべてのコミュニケーションツールの動向を把握しなければなりません。


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日本のある新聞のインタビューを読みましたが、フォルテスさんは「現代的な舞台」に強いこだわりをお持ちだと感じました。具体的には、どのような舞台が「現代的」とお考えですか。

フォルテス総裁
歌劇場の素晴らしいところはライブパフォーマンスだということです。 ライブパフォーマンスが現在ではないと考えることはありえません。どういう意味かというと、鑑賞してているその瞬間が公演なんです。ですから私は、一つの公演が全ての観客全員に理解される表現で伝える事がとても大切だと信じています。我々は現代人ですよね、つまり現代的ということは、感覚に伝達されるひとつの表現が、すべての人々に伝達される表現でなければならないということです。このような視点で考えるなら、伝統的な舞台装置さえもです。現代的な舞台装置でなければいけないというわけではありません。重要なのは、オペラが遺物ではない、過去のものではないということです。ですから今現在の作品ではない過去の作品を上演し続けるわけです。

これらを踏まえたうえで、非常に自由に表現された舞台があります。例えば我々が今夜観賞した《椿姫》は(※このインタビューは、9月12日の《椿姫》の公演後に行われた)、演出衣装共に現在のアーティストによって製作されました。ソフィア・コッポラの演出、現代の巨匠ヴァレンティノの衣装。舞台は1800年代のパリという時代に設定されていたとしても、この視点から考えると現代的演出であり現代的舞台だといえます。また現代の表現方法を使用して達成できる効力でもあります。


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今、今回の公演の演目の一つ、《椿姫》のお話が出ました。
日本人である私たちが共感できる部分が《椿姫》の中にありますでしょうか?私たちは《椿姫》を、どう楽しめば良いでしょうか。

フォルテス総裁
《椿姫》のストーリーは普遍的で、誰でも共感を覚える内容ではないでしょうか。

日本の聴衆は大変すばらしいです。注意深く、要求度も高く、判断能力も高いです。来日する度にアーティスト達ともよく話すのですが、日本人の聴衆が示すイタリアオペラに対する素晴らしい反応は、世界で唯一といった強い印象があります。なぜなら他の国々の聴衆の反応は、日本人のそれとは異なります。ある場所では、「オペラ観ました、拍手しました、帰ります!」という反応です。ところがあなた方日本人は、本当の意味で我々を称賛してくださいます。イタリア人聴衆のオペラに対するリアクションのようです。これはイタリアや他のヨーロッパの国以外では見られません。この現象は我々にとってはもうミステリーの域です。もちろん我々にとって大変喜ばしいことではありますが、理解しがたいです(笑)

多分音楽が、話すということ以外の伝達手段として大変強力であるということだからではないでしょうか。
あなた方はオペラを高く評価してくださいますよね。それはあなた方が、音楽に加え、ストーリー、舞台、衣装の総合芸術により、文化の壁を超える事が出来たからではないでしょうか?外国語を理解するのは大変なことですよね?我々とあなた方の間には、10000キロメートルの隔たりがあります。

例えばの話ですが、残念ながら我々は、あなた方の舞台である能や歌舞伎について評価する事が出来ません。(にもかかわらず)あなた方がなぜこのように熱烈にオペラを愛してくださるのか、正直なところ我々の誰もが理解できません。(日本人聴衆の熱狂ぶりは)我々にとって大変喜ばしいとこであり、これはオペラが持つ偉大な力、音楽を介しての力によるところだと思います。音楽は言語以上の普遍的伝達手段です。ですからこの観点で見ると、このオペラに対するあなた方の愛は、来日する度に肯定的な印象として我々の心に残ります。


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最後の質問です。《マノン・レスコー》とローマ歌劇場の関わりについて教えてください。この上演にも、現代的な部分はありますか。

フォルテス総裁
《マノン レスコー》は、私の記憶が正しければ初演はトリノです。ローマは愛されていますが、ローマのオペラではありません。どのような関連性がローマにあるかですか?私達の劇場で《トスカ》は初演されました。(トスカは)プッチーニが作曲した別の大作です。舞台のシーンはローマにある3か所の場所です。対して「マノンレスコー」はフランスの物語で、フランス語の台本、初演はトリノです。時代設定は1700年で、あまりローマ風ではないです。(マノン・レスコーは)ローマとの関連性があるストーリーはないです。周知のようにすべての劇場はプロダクション(オペラ製作の)の幅が広範囲に及びますが、だとしてもローマとの関連性は想像できません。

《マノン・レスコー》は、とても情熱的なストーリーです。悲劇に終わる愛で、主人公はやはり娼婦です。《椿姫》と同じですね。二人とも美しさを権力の道具として利用しています。この視点から考えると現在のストーリーともいえるかもしれません。そして気の向くままに行動し、ご存知のように非業の最期を遂げます。この視点においても明らかにストーリーが魅力的で、上手く語られている《椿姫》のような現代的な物語で、ローマの聴衆、ナポリの聴衆、ミラノの聴衆、イタリアの聴衆に支持される理由です。素晴らしい、間違いなく素晴らしい音楽です。音楽的観点からも幸運にくちづけされたプッチーニのこのオペラはローマのみならず、全てのイタリア人から称賛されています。 

インタビュー・文:オペラエクスプレス編集部

カルロ・フォルテス Carlo Fuortes

カルロ・フォルテス
2013年12月21日、ローマ歌劇場総裁に就任。
文化経済学および文化事業の運営に関して多数の論文・著作がある。
(ローマ歌劇場 日本公演2018 プログラムより一部転載)

ローマ歌劇場 2018年日本公演
《椿姫》
9月9(日)・12(水)・15(土)・17日(月・祝)東京文化会館
《マノン・レスコー》
9月16(日)神奈川県民ホール
20(木)・22日(土)東京文化会館※上演は全て15時から

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