オペラ・エクスプレス

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英国ロイヤル・オペラが4年振り6回目の来日。2019年9月12日「ファウスト」で開幕。―世界最高水準の公演を東京,神奈川で

英国ロイヤル・オペラが4年振り6回目の来日。2019年9月12日「ファウスト」で開幕。―世界最高水準の公演を東京,神奈川で

2015年以来4年ぶり6回目の来日公演となる英国ロイヤル・オペラが、9月12日に初日を控えた日本公演に先駆け、記者会見を開催した。劇場の所在地から「コヴェント・ガーデン」とも呼ばれるロンドンの英国ロイヤル・オペラは、世界5大劇場の一つに数えられるなど、古くから世界の第一線を走り続ける名門中の名門だ。

会見に出席したのは、「ファウスト」に出演予定のヴィットリオ・グリゴーロ,イルデブランド・ダルカンジェロ,「オテロ」に出演予定のグレゴリー・クンデ,フラチュヒ・バセンツ,ジェラルド・フィンリー,そして音楽監督で両公演の指揮を務めるアントニオ・パッパーノの6名。現代のオペラを代表するスター歌手、スター指揮者の揃い踏みだ。

英国ロイヤル・オペラ 2019年日本公演 記者会見より
左より:イルデブランド・ダルカンジェロ/ヴィットリオ・グリゴーロ/アントニオ・パッパーノ/フラチュヒ・バセンツ/グレゴリー・クンデ/ジェラルド・フィンリー

 

ファウストを歌い演じるグリゴーロは、意外にも今回が日本での本格的なオペラデビューとなる。「ありがとうございます、ありがとう、どうもありがとう」と日本語で切り出し、一気に場をなごませる。パッパーノについては「友であり、全てを信頼して任せることのできる存在。F1にたとえると、あえてエンジンとは言わず、タイヤだと言いたい。どんなにエンジンが良くても最高のタイヤが無ければ、正しい方向には進まないから。」と語る。美声だけでなく、センスとユーモアに裏打ちされた、演技力にも注目したい。

ヴィットリオ・グリゴーロ
ヴィットリオ・グリゴーロ

 

ファウストと契約する悪魔メフィストフェレス役はダルカンジェロ。力強い歌声と、歌手らしからぬ筋骨隆々のいで立ちで、世界中の歌劇場で客演を重ねている。本役は3回目ということだが、取り組んでいく中で「パッパーノは新しい色彩を与えてくれる」と語ったように、より役への理解を深めているようだ。目まぐるしい早着替えにも注目あれ。

イルデブランド・ダルカンジェロ
イルデブランド・ダルカンジェロ

パッパーノは「ファウスト」でグリゴーロとダルカンジェロ、そして他のキャストへどのような魔法をかけるのか。グノーの繊細で優美な音楽、ロンドンで長年愛されているというマクヴィカーの演出、そして最高のキャストによるファウストの物語を堪能されたい。

「オテロ」については、「ヴェルディの集大成。コンパクトでありながら締りがあり、しかもシェイクスピアのメッセージを1つの間違いもなくダイレクトに伝えてくれる素晴らしい作品」と紹介。オペラのロールの中でも最も難しいと言われるオテロ役とヤーゴ役を、クンデとフィンリーが演じることへの期待と信頼を覗かせた。

アントニオ・パッパーノ
アントニオ・パッパーノ

 

オテロ役のクンデは、今年だけでも5つの劇場でオテロを歌う、現代屈指のオテロ歌いの一人。ヴェルディだけではなくロッシーニのオテロも歌うことが出来る唯一のテノールと言えるだろう。ヴェルディのオテロ役について、「テノールにとって夢のような役」と語る。今回のキース・ウォーナー演出は2017年に制作されたもので、その時もクンデが主演。より深い芝居と卓越した歌唱を見せてくれることだろう。

グレゴリー・クンデ
グレゴリー・クンデ

 

今回が日本デビューとなるバセンツは、ロイヤルオペラハウスでの「椿姫」で主役のヴィオレッタ役を歌うことが決まっている、新進気鋭のソプラノ。クンデも「デズデモナがこの世に現れたかのような理想の歌手」と絶賛。バセンツはパッパーノについて「ただの指揮者として、音楽家として素晴らしいのではなく、ひとりの画家である」と語り、その意味を「常に色付けをしてくれる。特別なアーティスト」と説明。更に、「歌手を守ってくれる守護天使のような人」と表現する。やはり絶大な信頼をおいているようだ。

フラチュヒ・バセンツ
フラチュヒ・バセンツ

 

そして、数あるオペラの悪役の中でも最も難しい役のひとつといえるヤーゴ役には、ベテランのフィンリーが登場。「ケンブリッジ・キングズ・カレッジ合唱団の一員として、1982年に初めて日本で歌った」というフィンリーは、2000年に小澤征爾と共演して以来の来日。「ヤーゴはバリトンにとってやりがいのある最高の役。歌手としてだけでなく、俳優としてもやりがいを感じる役」と語り、その難しさゆえの楽しみに言及した。演技力に定評があり歌う俳優との呼び声も高いフィンリーの、人間の本質に迫るようなヤーゴから目が離せなくなることだろう。

ジェラルド・フィンリー
ジェラルド・フィンリー

 

最高の指揮者、最高のキャスト、最高のスタッフを擁して来日した英国ロイヤル・オペラ。彼らが選んだイタリアオペラ,フランスオペラの金字塔である2作品は、まさしく世界最高水準の公演になると言って間違いないのではないか。

12日の「ファウスト」で幕を開け、東京文化会館と神奈川県民ホールの2会場で合計8公演が予定されている。令和初の芸術の秋に、世界最高峰の「総合芸術」に浸ってみてはいかがだろうか。

英国ロイヤル・オペラ 2019年 日本公演 記者会見より
英国ロイヤル・オペラ 2019年 日本公演 記者会見より

取材・文:オペラ・エクスプレス編集部 / 写真:長澤直子

英国ロイヤル・オペラ 2019年日本公演

 

C.F.グノー作曲ファウスト全5幕
2019年9月12日(木)、15日(日)、18日(水)
東京文化会館

2019年9月22日(日)
神奈川県民ホール

指揮:アントニオ・パッパーノ
演出:デイヴィッド・マクヴィカー

キャスト
ファウスト:ヴィットリオ・グリゴーロ
メフィストフェレス:イルデブランド・ダルカンジェロ
マルグリート:レイチェル・ウィリス=ソレンセン


G.ヴェルディ作曲オテロ全4幕
2019年9月14日(土)、16日(月・祝)
神奈川県民ホール

2019年9月21日(土)、23日(月・祝)
東京文化会館

指揮:アントニオ・パッパーノ
演出:キース・ウォーナー

キャスト
オテロ:グレゴリー・クンデ
デズデモナ:フラチュヒ・バセンツ
ヤーゴ:ジェラルド・フィンリー

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