サラリーマン、オペラ歌手?小説家?の香盛(こうもり)修平です。
会社を一歩出ると、あるときは天井に逆さまにぶら下がりサラリーマン社会を俯瞰し、あるときはヨハン・シュトラウス「こうもり」ファルケよろしく、「オペラ」の楽しさを伝える仕掛人、案内役としてへたな文章を書いております。
前回ご紹介させていただいたエリック=シャレル監督の映画「會議は踊る」ご覧いただけたでしょうか?まだという方は今からでも是非!オペレッタの世界に近づける一つの道です。
それでは最高の「こうもり」の楽しみ方をご紹介したいと思います。それはウィーンに行って「こうもり」三昧することです。ウィーンの地でシャンパンを飲み、オペレッタに浸る至福の時間。これからウィーン旅行をされる方にも参考にしていただければと思います。それでは香盛修平流ウィーン「こうもり」三昧の旅レポートのはじまり~はじまり~!
日本の年末は「第九」一色ですが、ヨーロッパでは「こうもり」や「ヘンゼルとグレーテル」が定番となります。ウィーンで年越しをすれば、フォルクスオーパーと国立歌劇場の二つの「こうもり」を観劇することができます。オペレッタに出会って以来の夢が実現しました。サラリーマン?オペラ歌手?小説家?の私は4泊6日の弾丸ツアーで行ってきました。大晦日にフォルクスオーパーでハインツ・ツェドニク演出「こうもり」、元旦には国立歌劇場でオットー・シェンク演出の「こうもり」を観劇して感激!
「こうもり」の魅力はもちろん音楽の素晴らしさにありますが、お偉い方から大衆までに支持されてきた演劇性を楽しむのも今回の目的の一つ。毎年の世相をいかしながらも定番の笑いや感動がそこにあります。
私はオペレッタが大衆に受け入れられた原点であるフォルクスオーパーの「こうもり」から先に観劇することにしました。ウィーンの中心部から少し離れた場所にあり、そこに至る路線U6の車内はまさに庶民の街という雰囲気。多国籍な人たちの行きかう駅を出てすぐのところにフォルクスオーパーはあります。建物はシンプルで昔の映画館を思い出すような造り。大晦日の「こうもり」ということですが無理をして着飾ってきたという雰囲気はありません。全く肩に力が入っておらず地元の寄りあいという風情。タキシードの紳士よりはジャケットに蝶ネクタイというのが似合う初老の方が目につきます。まさに国立歌劇場とは違う「国民歌劇場」なのです。
幸いにもドイツで歌の勉強、仕事をされている美人ソプラノさんがご一緒していただけることになり最前列で観劇。現地の事情に通じた贅沢なガイド付きですからわくわく感も倍増。
開演の時間となり指揮台に登場したのは80代のマエストロ。頼りない足取りで指揮台に登場しますが、指揮棒を振りだすとそこにはやんちゃな青年指揮者の面影が。拍を刻むだけが指揮ではありません。いきなり序曲でヴァイオリンに向かって投げキッス。「今日もよろしく!」という感じでしょうか。「こうもり」を人生で何回振ってこられたのか?譜面台に楽譜はありませんか、時々譜面をめくるような仕草が。頭の中に染み込んだ楽譜をめくりながら指揮をされているのでしょう。
歌い手は期待が高すぎたのか若干不満が残りましたが、それでも「こうもり」を十分楽しめる歌手は揃っています。正直、日本の歌い手もなかなかのものだとあらためて思った瞬間もありました。
一番好感度が高かかったのはフランクとフロッシュ。ヨーロッパではシェークスピア劇を核とする演劇文化があるからか、演劇的要素の強いフロッシュ役がしっかりしています。刑務所に働くうすぎたない看守であるし、世界共通の笑いを誘うベタな下ネタを繰り出すが品が悪くならない。流石です。
フランクは地元のバリトンのようでしたが、実に誠実でいい人だということが伝わってきます。特別声量があるわけでもなく、美声であるわけでもありませんでしたがそこがいい。「こうもり」のキャストは特別な存在ではなく、ウィーンの人たちにとっては手の届くところにいる人たち。オルロフスキーだけが異質な存在。まさにフォルクスオーパーのフランクはそんな感じでした。
演出はウィーン出身のテノール歌手ハインツ・ツェドニク。ウィーン出身であり、歌手であるツェドニクの演出は予想通りオーソドックなものでした。それはウィーンの人たちが一番好きなものが何かを知っているからでしょう。
歌手に満足できなければため息をつき、下ネタには大笑いをする。そして毎年定番の「こうもり」を楽しむ。日本ではオペラやオペレッタが少し遠いところにあるがウィーンでは庶民の中にある。
フォルクスオーパーでの「こうもり」を堪能した私と美人ソプラノは、偶然にも同じ「こうもり」のチケットを入手して来ていた音楽仲間を誘って、劇場近くの少々モダンなバーで乾杯。
シャンパン片手にカウントダウン。ポップスがかかるような店でしたが、新年を迎えるとともに店内のBGMが「美しき青きドナウ」に!粋ですね~!ウィーン気分を満喫しました。店にいた店員、お客さん全員と乾杯をして店の外へ、花火が飛びかい爆竹音が鳴り響く街でもう一度乾杯。キーンと冷たい空気を肌で感じながらも心地よくアルコールが全身を駆け巡りました。
さあ、次回は国立歌劇場の「こうもり」!
観劇して感激したレポートをお届けします。お楽しみに!
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