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【公演直前!】「わ」の会コンサートvol.5 リハーサルレポート 

【公演直前!】「わ」の会コンサートvol.5 リハーサルレポート 

9月6日に調布市文化会館たづくり・くすのきホールにて行われる「わ」の会第5回公演の直前リハーサルを取材した。長大なワーグナーの劇作品の中から場面を厳選し、その内容を実に深く掘り下げて提示してくれる「わ」の会の公演は年々知名度を増しつつある。全国各地で行われるワーグナー公演に欠かせない演奏者が顔を揃えるのも贅沢だ。
毎年魅力的なゲストも登場する。今年のゲストの1人は、本年のバイロイト音楽祭「ワルキューレ」に出演したばかりの金子美香(先月の本サイトインタビューを是非ご覧ください)。そしてもう1人のゲストが、関西二期会・びわ湖ホールで既に確かな実績を積んでいる二塚直紀。柔らかく表情豊かな美声によるヴァルター(『ニュルンベルクのマイスタージンガー』)は必聴だ。1月には新交響楽団との「トリスタンとイゾルデ」第2幕(演奏会形式)も控える二塚は、我が国のワーグナー歌いとして次代を担う存在であることは間違いない。

ヴァルター役二塚直紀(左)、ハンス・ザックス役大塚博章(右)

コンサートの前半で上演されるのは「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第3幕の第2場・第3場だが、同幕第1場の終結でハンス・ザックスが歌う「迷いのモノローグ」も冒頭に演奏される。このザックスのモノローグに続き第2場ではヴァルター、第3場ではベックメッサーが代わる代わる現れザックスと会話を交わす。コンパクトな上演時間の中で3人のキャラクターが聴き手に無理なく伝わる好プログラミングだろう。あたりを払う威厳を醸す大塚博章(バス)のハンス・ザックス、「夢解きの歌」を格調高く歌い上げる二塚直紀(テノール)のヴァルター、まくし立てるドイツ語の斬れ味が秀逸な大沼徹(バリトン)のベックメッサーと役者が揃い、第3幕の中でも5重唱や歌合戦に隠れがちな第2場・第3場の魅力を再発見できること請け合いである。
ハンス・ザックス役大塚博章(左)、ベックメッサー役大沼徹(右)

城谷正博(指揮)と木下志寿子(ピアノ)―「わ」の会のマエストロ&オーケストラとしてすっかりお馴染みになった―が作り出す音楽は、今年も雄弁きわまる。ワーグナーの長大な楽劇を暗譜で振り、オーケストラと独唱すべてに的確に指示を出して舞台を引き締めるという城谷の技は今回も冴え渡り、その指揮に応えてピアノ一台から大管弦楽を表出させる木下の弾き分けも驚異的である。彼らの演奏を聴いていると各ライトモティーフが鮮やかに浮かび上がるばかりではなく、本当に弦楽器らしいフレージングやトロンボーンの和音、シンバルの煌きまでもが眼前に広がるような趣すらあるのだ。ちなみに公演の後半では、このお二人による強烈な連弾(『わ』の会名物!)も期待できる模様。
そして、簡潔にしてワーグナーの詩情を我々に届けてくれる「わ」の会オリジナルの字幕も定評がある。担当の吉田真氏は「マイスタージンガーのドイツ語は難しい」と筆者に語ってくれた。史実を扱った「マイスタージンガー」とワーグナーの手による神話たる「ニーベルングの指環」と、ワーグナー音楽の異なる2つの側面を一夜にして味わうことができるのも今回の「わ」の会の大きな魅力に違いない。

今回の第5回公演に向けての意気込みを城谷氏にうかがうことができた。
『マイスタージンガー』第3幕は2時間と長大で、今回扱う前半は全体を観終えた後印象に残りにくいと思います。ヴァルターとザックスの対話、ベックメッサーのスケルツァンドな音楽を押さえておくと、後半の味わいがより深くなるので是非聴いていただきたいですね。『わ』の会第1回公演で上演した第2幕第6場(ベックメッサーとザックスの対決が含まれる)以来の実現となる大塚博章と大沼徹の熾烈なやり取り、関西の名テノール二塚さんのヴァルターはききものだと思います。また『ジークフリート』第3幕は個人的に『指環』の中で一番理解が難しかったんですよ。『トリスタン』『マイスタージンガー』を経てワーグナーの作曲技法が格段に高度になっていますから、これを如何にして明解にお客様に届けるかというのが課題ですね。『黄昏』へと橋を渡す重要な場面で、エルダに金子美香さんをお迎えできるというのも嬉しいです。毎回スケールアップする『わ』の会の演奏にご期待ください!

ワーグナーの楽劇の魅力が2時間に凝縮された「わ」の会第5回公演。ワーグナー芸術を愛する人はもちろん、あらゆる方に強くお勧めしたいコンサートである。開演が近い!当日券も前売りと同額、余裕あり。

「わ」の会 第5回公演 Erwachen:覚醒
2018年9月6日(木)調布市文化会館たづくり くすのきホール
19:00開演(18:20開場, 18:30~プレトーク)
全席自由:4,000円(税込)
当日券(前売りと同額)あり!

取材・文・写真:平岡 拓也
Reported by Takuya Hiraoka

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