オペラ・エクスプレス

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加藤浩子著『オペラでわかるヨーロッパ史』(平凡社新書)ご紹介

12642572_1183846041678187_9131121319791542470_n     先に岸純信さんが『オペラは手ごわい』というご本を出されたが、その表題通り「オペラ」というシロモノは、かなり手ごわい対象でもあります。ただただ筋を追って、美しい旋律に身を委ねるのなら、それはそれで楽しいものですが、さらに一歩踏み込むとなると、まさに手ごわい対象に変身します。そもそも、筋一つ取っても、神話あり、歴史ありで、それも虚実入り交じっての構成は、かなりヨーロッパ史に詳しい人でないと、その背景やオペラの意図が今ひとつ理解できない場合があります。
  まさにそんな悩みを解消させてくれるのが、音楽物書きと自称されオペラをこよなく愛する加藤浩子さんの最新著『オペラでわかるヨーロッパ史』(平凡社新書)です。本の帯には、「オペラが暴く歴史の闇」という惹句が書かれていますが、オペラの題材となったイタリア、イギリス、スペイン、ロシア、スウェーデン、フランスなどの歴史と、それぞれの歴史を踏まえて書かれた15編のオペラを例にとって、歴史的な背景とそれが描かれたオペラの絵解きをわかりやすく解説されています。あらすじを簡単に紹介しながら、その背景となった時代はもちろん、さらには台本作家が描こうとした心情や当時の状況などについても詳しく論述されているので、オペラ通の人にも大いに参考になるのではないでしょうか。例えば、フランス革命が舞台の『アンドレア・シェニエ』の項でも、作曲者のジョルダーノよりも台本作家であったイッリカにスポットを当て、彼の綿密な時代考証と主人公への共感のもとに、この虚実入り交じらせたオペラが誕生したことがよくわかります。いずれも名作オペラを取り上げながら、意外に知られていない創作の秘密がわかりやすく解説されていいます。加藤さんの広範な知識と旺盛な好奇心によって描かれた、まさに目からウロコのオペラ解説書です。
(文:新井巌)

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