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ブラームス×ドヴォルザーク、ニ調の楽に寄す―4月の新日本フィル TOPAZ

ソリストのアンコールまで含めて、演奏会全体をひとつの弧のように設計する―これが、上岡敏之×新日本フィルの面白さの一端である。以前レポートした昨年9月の定期演奏会もそうだった。今回の4月トリフォニー定期は、大曲2品をただ並べたようだが、その奥に巧みに仕掛けられたメッセージ性を感じることができる。ブラームスとドヴォルザークの厚き関係はもちろんのこと、ニ調という調性の共通もある。更に(後述する)アンコールも含めると、先述した昨年9月の演奏会の双生児としての性格を紐解くことも可能ではなかろうか。

演奏会は、ブラームス「ヴァイオリン協奏曲」に始まる。華々しいソリストの活躍というよりは、オーケストラと独奏ヴァイオリンが厳密な形式の中に重層的な関わりを保つ作品で、ブラームスが当初4楽章構成を考えていたことからもそのコンセプトは明白だ。そして、ヴァレリー・ソコロフと上岡敏之/新日本フィルの演奏は、その作曲者の意図を十分に汲んだものであった。筆者は以前(2010年3月)にもこのヴァイオリニストの演奏する同作品の実演を聴いているが、私の記憶が正しければ—その時よりも彼はずっと濃密で、アパッショナートな演奏をするようになった。それはロマ風のロンドである終楽章でいよいよ顕著で、ホルンはじめよく煽るオーケストラ共々大いに音楽を追い込んだ。これは痛快な聴きものであった。また、自らが優れたピアニストでもある上岡敏之の棒はソリストへの細やかな配慮が常に感じられ(幾分過剰とも思えるほど!)、オーケストラのトゥッティをかなり抑え、部分的にはよく旋律を歌わせていた。牽引するコンサートマスター(崔文洙)の全体への気配りも流石だ。アンコールのクライスラーは一転、ソリストの華麗な技巧を大いに堪能した。
ブラームス×ドヴォルザーク、ニ調の楽に寄す―4月の新日本フィル TOPAZ
後半はドヴォルザーク「交響曲第7番」。ブラームス「交響曲第3番」からの影響、自作の序曲「フス教徒」の主題引用など、9つあるドヴォルザークの交響曲群の中でもとりわけシリアスで堅牢な性格を持つ作品だ。前半より合奏は更に引き締まり、中低域主体で渋めの音楽づくりは雄弁に曲の真価を明らかにしてゆく。部分的に聴き慣れぬ声部のバランスも頻出するが、「上岡流」の流麗な一筆書きに収まっていった。とりわけ流れの良さを感じた第3楽章、怒涛の勢いで全てを超克するが如き第4楽章など、多面的なドヴォルザークの音楽をそのままに描き出した演奏に拍手。

親密な2大作曲家によるニ調プロを締めくくったのは、このコンビの定期における恒例となりつつあるアンコール。今回はドヴォルザーク「スラヴ舞曲集」第2集からの2品で、猛烈な高速テンポと鋭い表現で客席を沸かせた。この2曲の大胆さに、彼らの就任披露におけるブラームス「ハンガリー舞曲」を想起した方もおられるのではなかろうか。音楽監督ならではの長いスパンを見据えたプログラム・ビルディング、そして起伏に富んだ秀逸な演奏に感銘を受けた一夜となった。
ブラームス×ドヴォルザーク、ニ調の楽に寄す―4月の新日本フィル TOPAZ
文・平岡 拓也 Reported by Takuya Hiraoka
写真・大窪道治 Photo by Michiharu Okubo


新日本フィルハーモニー交響楽団 第572回定期演奏会
2017年4月7日(金)19時
すみだトリフォニーホール 大ホール

ブラームス:ヴァイオリン協奏曲
~ソリスト・アンコール~
クライスラー:レチタティーヴォとスケルツォ・カプリス Op. 6

ドヴォルザーク:交響曲第7番
~アンコール~
ドヴォルザーク:スラヴ舞曲 Op. 72-2, Op. 72-1

ヴァイオリン:ヴァレリー・ソコロフ
管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団
コンサートマスター:崔文洙
指揮:上岡敏之

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