オペラ・エクスプレス

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オペラで愛まSHOW!■番外編その13■香盛(こうもり)修平のたわけた一日~東京オペラ・プロデュース《ベルファゴール》2017年2月5日公演 観劇して感激レポート

連載の他に「オペラ観劇して感激した!」といった話を不定期につぶやきます。題して「香盛(こうもり)修平のたわけた一日」

東京オペラ・プロデュース《ベルファゴール》
2017年2月5日公演
観劇して感激レポート

オペラ都市「東京」万歳!

2月4日の新国立劇場での演目は、大劇場でプッチーニ作曲の定番オペラ「蝶々夫人」、中劇場では日本初演となるレスピーギ作曲の「ベルファゴール」
一つのオペラハウスで、まったく趣の違う二演目が上演されるのは世界的にも誇れることだと思う。
関西在住で良かった。東京に住んでいたら今頃オペラ破産していたに違いない。

それにしてもこの選択肢は悩ましい。「蝶々夫人」に流れ込んでいく人の波に心ひかれながらも、「ベルファゴール」へ。

レスピーギがオペラを作曲したことは知っている。しかし、その作品に触れたことはなかった。多くのクラシックファンと同じように「ローマ三部作」でレスピーギを知り。その音楽を聴くと、地鳴りのようなアッピア街道を行進してくるローマ軍の風景が反射的に脳裏に浮かぶ。あのオーケストレーションのイメージと、声楽のバランスがとれたオペラ作品がイメージできない。それでも興味は少なからずあったので、思い切って予見をまったく排し、下調べせずにこの作品に対峙してみることにした。

「ベルファゴール」という題名から、悪魔をモチーフにした作品だということくらいの知識はあった。知らない初演オペラをどこまで楽しめるか不安はあったが、幸いにもストーリーはわかりやすい。悪魔がやって来て去っていくというお話。

悪魔ベルファゴールは人間の罪深さを試すためにやって来たと言って地上に登場し、カンディダという女性の愛を手に入れようとする。しかし悪魔の思い通りにはならずカンディダはバルドとの愛を貫く。最後は奇跡がおきて鳴るはずのない教会の鐘が鳴り、悪魔は去る。
東京オペラ・プロデュース《ベルファゴール》
このストーリーをレスピーギは途切れない音楽の推進力で表現する。金に目をくらむカンディダの父親、娘をまもる母親、人間としての弱味を見せるカンディダの二人の姉、カンディダの愛を求め信じながら疑心と葛藤するバルド。それぞれのキャラクターが交錯する。

話が脱線するが、「ドン・ジョヴァンニ」との共通点を考えながらこのオペラを楽しませてもらった。ドン・ジョヴァンニは悪魔ではないが、人間の枠を超えた存在。ベルファゴールもドン・ジョヴアンニも全て欲望は手に入れてきたが、一人の女性の貞淑の前に歯車が狂い出す。ベルファゴールは自ら女性遍歴のカタログの歌を歌い、ドン・ジョヴァンニでは従者レポレロがカタログの歌を歌う。カンディダの父親は金で心を奪われるが、ドン・ジョヴァンニを拒否したドンナアンナの父親は剣で命を奪われる。
正しい観劇方法かわからないが、こういった勝手な想像、妄想をしてみるのも私はオペラの楽しみ方だと思う。

そんな妄想をしながらいろいろなシーンを楽しんだ。妄想の中で、禅問答をするかのようにいろいろなテーマが私の心に語りかけてくる。「悪魔は、人間の欲望、陶酔、恍惚が作り出したものではないのか」「愛を信じることができるのか」「悪魔でさえ自分と語り合う」「悪魔が最後にかけた魔力は『疑心』」「アダムとイヴにおける罪とは」「パンと水だけを求める老人と子供の存在が意味するものは」「神の奇跡とは」・・・・・・
東京オペラ・プロデュース《ベルファゴール》
このオペラを見終わって頭に浮かんだのは「オプスopus」という言葉だ。オペラの語源である「作品」という言葉。オペラのイタリアオペラに対する先入観がありすぎると、異様にプロローグとエピローグが長く、イタリアオペラというのに独立したアリアがなく拍手のタイミングが難しいこの作品に戸惑う人も多いかも知れない。イタリア演劇や、音楽文化が重なり合いながら産み出したオペラの原点ともいうべき世界がそこにあった。

最後になってしまったが、この難曲を完全に身体に入れてそれぞれの役を演じ切った歌手陣(膨大な歌詞の暗譜は大変だったことでしょう)、素晴らしいサウンドを聴かせてくれたオーケストラ、シンプルながらも印象的で芸術性の高い舞台美術はバランスがとれており総合芸術として素晴らしかった。

プログラムを拝読すると、初演作品を手掛けるなど意欲的な活動を続ける東京オペラブロデュースも、存続のために大変な苦労をされている。是非多くのスポンサーが現れ、世界に誇れるオペラ都市「東京」を支えて欲しい。


東京オペラ・プロデュース第99回定期公演
《ベルファゴール》
O.レスピーギ作曲 全2幕(プロローグ・エピローグ付) イタリア語上演・字幕付き

2017年2月4日(土)/5日(日)15時
新国立劇場 中劇場

指揮:時任康文
演出:馬場紀雄

配役:2月4日/2月5日
ベルファゴール:村田孝高/北川辰彦
カンディダ:橋爪ゆか/大隅智佳子
バルド: 上原正敏/内山信吾
ミロクレート:羽山晃生/佐藤泰弘
オリンピア:河野めぐみ/田辺いづみ
マッダレーナ:羽山弘子/小野さおり
フィデリア:前坂美希/二宮望実
ドン・ビアージョ:森田学/白井和之
メニカ:金井理香/星智恵
老人:鹿野章人/鷲尾裕樹
少年:辰巳真理恵/溝呂木さをり

東京オペラ・プロデュース合唱団
東京オペラ・フィルハーモニック管弦楽団

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