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2017/18シーズン開幕直前!6-7月の新日本フィル演奏会回顧【前編】

2017年9月、新日本フィルハーモニー交響楽団の新シーズンが開幕する。上岡敏之音楽監督の2期目となる注目のシーズン開幕に先駆け、先シーズン6月・7月の演奏会を2号に分けて特集したい。

まずは6月、以前「クラシックの扉」(現ルビー・シリーズ)での共演も好評を博した鈴木秀美が客演した本拠地トリフォニーホールでの演奏会。このコンビによるハイドン「天地創造」は予想以上の新鮮な好演となった。作曲家の音画的手法を巧みに引き出し、かつ格調高さも湛えた見事な指揮—これぞ第一人者の手腕であろう。まるで洗濯をかけたようにまっさらなオケの響きは大胆を極め、立体感ある合唱(今回のためにプロ&アマチュア混成で編成されたコーロ・リベロ・クラシコ・アウメンタート)と絶妙に絡み合う。ソプラノ中江早希の清冽な美声は高域でも声質が変わらず限りなく伸び、テノール櫻田亮との相性も抜群だ。バスは大御所・多田羅迪夫。よく通る独語の響きが素晴らしい(以前このオケで聴いたツィンマーマン作品でも同様に感じた)。新日本フィルのハイドンといえば、いまは亡き巨匠フランス・ブリュッヘンの名を思い出す方も多いだろう。今回の秀美氏との「天地創造」におけるオーケストラの柔軟性に富んだ響きからは、楽団の伝統が確かに継承されていることが伝わってきた。

鈴木秀美指揮 ハイドン「天地創造」 ©K.Miura


続いては7月1日、オーチャードホールで行われたジェイド・シリーズ。オーストリアのラルフ・ワイケルトの客演で、ウィーン古典派〜ロマン派を眺望するシンプルなハ長調プログラムが披露された。モーツァルト「交響曲第28番」は10型+コントラバス1台の小編成で、ワイケルトの棒は軽やかに音楽を導く。かのカール・ベームが賞を贈り讃えた彼の流麗なモーツァルトは、古楽全盛の現代では絶滅危惧種と言ってよい懐かしさを孕んでいた。後半のシューベルト「グレイト」も音作りの柔らかさは前半の延長線上にあり、時折絶妙な揺らしを添えつつワイケルトは愉しげに振ってゆく。不協和音を伴う第2楽章中盤の険しさも、終楽章の弦の波状攻撃も、アポロ的な構築の内に収斂したのではないか。アンコールは同じシューベルトの「ロザムンデ」間奏曲、こちらも緩急豊かで絶美な演奏だった。


パスカル・ロジェ独奏、秋山和慶指揮 サン=サーンス:ピアノ協奏曲第5番「エジプト風」 ©K.Miura

7月のトパーズ(トリフォニー・シリーズ)は、2015年久々に新日本フィルの指揮台に立った秋山和慶が再客演。実に40年ぶりの再会であった2015年の演奏会におけるストラヴィンスキー特集では、明晰な棒と構築を示した名匠。今回は有名ながらなかなか聴けないフランス作品で、やはり鮮やかな音楽を聴かせてくれた。イベール「寄港地」から弦のさざめきと明朗な管が華やかな快演。続くサン=サーンスのピアノ協奏曲第5番「エジプト風」では、ロジェの力強くも流麗な打鍵に名匠の棒が完璧に付ける。ロジェのアンコールはサティ「ジムノペディ第1番」。誰もが知る名曲だが、繊細な美が凝縮された幸せな数分間であった。メイン・プロのショーソン「交響曲」、ここでは秋山氏の至高の指揮芸術の凄さをひしひしと味わう。曲中ののいかなる場面にも、絶妙なフレーズの綾が織り込まれているのだ。ドイツ的な厳粛さとラテン的な精神の解放の間を揺れ動く当曲において、愚直なまでにその揺れ動きを表出してみせた結晶化的な名演と感じた。私事で恐縮だが、あまりの見事さに翌日の公演も「おかわり」してしまった。フランキスト的側面・ワーグナーへの傾倒・フランス人として抑え難く発露するもの―諸々の要素が実に丁寧に扱われており、それらが美しいショーソンの語法へ昇華していることを痛感する体験であった。迷いなく、真摯に奏したオーケストラは本当に素晴らしい。

2017/18シーズン開幕直前特集、後編では上岡敏之音楽監督指揮の7月2公演に注目する。

文:平岡 拓也 Reported by Takuya Hiraoka
写真提供:新日本フィルハーモニー交響楽団 Photos by New Japan Philharmonic

【公演データ】
新日本フィルハーモニー交響楽団 第574回定期演奏会
ハイドン:オラトリオ「天地創造」

2017年6月2日(金)
すみだトリフォニーホール 大ホール

ソプラノ:中江早希
テノール:櫻田亮
バリトン:多田羅迪夫
合唱:コーロ・リベロ・クラシコ・アウメンタート
管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団
コンサートマスター:西江辰郎
指揮:鈴木秀美


新日本フィルハーモニー交響楽団 第575回定期演奏会
2017年7月1日(土)
Bunkamuraオーチャードホール

モーツァルト:交響曲第28番
シューベルト:交響曲第8番「グレイト」
~アンコール~
シューベルト:劇付随音楽「ロザムンデ」より 間奏曲第3番

管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団
コンサートマスター:西江辰郎
指揮:ラルフ・ワイケルト


新日本フィルハーモニー交響楽団 第576回定期演奏会
2017年7月14日(金)
すみだトリフォニーホール

イベール:寄港地
サン=サーンス:ピアノ協奏曲第5番「エジプト風」
~ソリスト・アンコール~
サティ:ジムノペディ第1番

ショーソン:交響曲

ピアノ:パスカル・ロジェ
管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団
コンサートマスター:西江辰郎
指揮:秋山和慶

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