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装いも新たに!日生劇場で見る、初演から200年のメモリアル《セビリアの理髪師》

装いも新たに!日生劇場で見る、初演から200年のメモリアル《セビリアの理髪師》

日生劇場でロッシーニ《セビリアの理髪師》のゲネプロ(最終稽古)を観てきました!こんなに素晴らしいロッシーニ上演があっていいのか!?と思った位、凄いプロダクションでした…

今回の公演は日生劇場が半年間の改修工事を終えて再オープンするお披露目でもあります。あの美しい劇場の意匠はそのままに舞台機構を新しくし、客席側も椅子の張り替えなどが行われたということで、劇場に入ったら「新築の匂い」がしました!白いガラスモザイクの壁もピカピカに磨かれています。そして音響も大変良いです。ピットから立ち昇るオーケストラの音は各楽器が良い具合にブレンドされ、歌手の声は輪郭がはっきり聴こえます。ピット使用時に1,234席という大きさは、ロッシーニなどのベルカント・オペラの上演にはまさに理想郷。
日生劇場【セビリアの理髪師】
《セビリアの理髪師》はロッシーニの中でも圧倒的に上演が多い作品ですが、それだけに過去には様々な解釈がなされ、中には作品の良さを充分に引き出せないケースもありました。今年は《セビリアの理髪師》初演から200年の記念の年にあたりますが、この日生劇場での上演は、真の《セビリアの理髪師》の魅力を余すところなく伝える、ある意味 衝撃的な演奏を聴く事になりそうです。その最大の功労者は指揮者の園田隆一郎。園田は音の透明感、歯切れの良さ、強弱の付け方などの精妙さで、この傑作オペラを鮮やかに描き出します。しかも学究的に優れているだけでなく、彼の指揮には楽しさに満ちたエネルギーと推進力があり、軽やかな音楽を奏でる新日本フィルと優秀な歌手達と一体となり、最高のロッシーニ演奏を繰りひろげるのです。レチタティーヴォの伴奏はチェンバロですが園田自身が担当。コード進行を記した通奏低音からの音楽展開も自由自在でオペラの楽しさを倍増していました。

歌手の皆さんについては、日生劇場は公演ごとにオーディションで歌手を選ぶそうで、両組ともにびっくりするくらい良いキャストです。聴いたのはゲネプロなので本番はもっと凄いと思いますが… このオペラにはそれぞれの歌手の良さを披露できる珠玉のアリアがちりばめられ、重唱も楽しさいっぱい。第一幕のフィナーレにおけるアンサンブル、そして第二幕でオペラの最後に歌われるアルマヴィーヴァ伯爵の(至難の)大アリアなども聴き所です。ちなみにロッシーニの歌唱においては、自分に合わせたヴァリエーションを「作曲」することも歌手の能力の一部として評価されますが、アルマヴィーヴァ伯爵役のテノール、中井亮一と山本康寛のヴァリエーションがかなり違うのも面白かったです。男声合唱のC.ヴィレッジシンガーズは演技も歌も秀逸でした。

日生劇場【セビリアの理髪師】
日生劇場【セビリアの理髪師】6月18日組
日生劇場【セビリアの理髪師】
日生劇場【セビリアの理髪師】6月19日組

美しい舞台も魅力です。演出は粟國淳。舞台の両脇には昔の劇場機構の歯車が設置され、それを回すと舞台の真ん中にある赤い幕が開いたり、回り舞台が回転したりします。舞台装置の表と裏を見せながらそれが同時に場面を作り出していく凝った作りです。照明も演出の一部として効果的に使われていました。登場人物達の衣裳も大変美しかったです。それからベルタやアンブロージョなど脇役の小芝居も面白いのでお見逃し無く。

ロッシーニ研究の第一人者である指揮者のアルベルト・ゼッダ氏がプログラムに寄稿されている記事の言葉を借りれば、《セビリアの理髪師》とはまさに「生きる喜び」の表現です。今回の《セビリアの理髪師》はそれを端的に示してくれる喜びに満ちた公演になることでしょう。

文・井内美香 reported by Mika Inouchi / photo: Naoko Nagasawa


《セビリアの理髪師》全2幕
原語イタリア語上演 (日本語字幕付)
2016年6月18日 (土)/19日 (日)各日14:00開演
日生劇場

台本:チェーザレ・ステルビーニ
作曲:ジョアキーノ・ロッシーニ

指揮:園田隆一郎
演出:粟國淳

キャスト:
アルマヴィーヴァ伯爵:中井亮一(6/18)山本康寛(6/19)
ロジーナ:富岡明子(6/18)中島郁子(6/19)
バルトロ:増原英也(6/18)久保田真澄(6/19)
フィガロ:青山貴(6/18)上江隼人(6/19)
ドン・バジリオ:伊藤貴之(6/18)デニス・ビシュニャ(6/19)
ベルタ:山口佳子(6/18)藤谷佳奈枝(6/19)
フィオレッロ:清水勇磨(両日)
士官:妹尾寿佳(両日)
アンブロージョ:木谷圭嗣(両日)
公証人:及川貢(両日)

装  置/横田あつみ
照  明/大島祐夫
衣  裳/増田恵美
振  付/伊藤範子
舞台監督/幸泉浩司
演出助手/上原真希 奥村啓吾
合唱指揮/及川貢
副指揮/大川修司 鈴木恵理奈 石崎真弥奈
コレペティトゥア/星和代 平塚洋子 河原義
字  幕/本谷麻子

合  唱/C.ヴィレッジシンガーズ
管弦楽/新日本フィルハーモニー交響楽団

主催・企画・制作:
日生劇場【公益財団法人ニッセイ文化振興財団】

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