
《写真を聴く》担当、オペラ写真家の長澤直子です。また、前回の投稿から大分時間が経ってしまいました。毎日何かしら書いてはいるものの、自分の写真について何か書くということは、中々と勇気が要るモノですね~はい・・・(笑)
今日は、「何でもない」「ただの」カーテンコールの写真です。でも、この写真、私にとっては、「何でもない」「ただの」ではないのです。因みに、中央少し下手側の黒いジャケットをお召しになっている女性は、このオペラの演出をなさった池田理代子さんです。実は私、大のベルばらファンで・・・ってそういう理由で特別というわけではないのです。(あっ、勿論ベルばら大好きですが・・・)

(C) Naoko Nagasawa
東京オペラ・プロデュースによるメサジェのオペラ【フォルテュニオ】の公演は、2011年の3月12日と13日に上演されました。東日本大震災の翌日と翌々日に、多くのオペラや演奏会が中止される中、あの公演は予定通り行なわれたのです。オペラ上演に際しての代表の竹中先生のお言葉を、私は今でもはっきりと思い出すことができます。大変悩んだ末に上演の決行を決定したこと。徹夜で舞台の点検を行なったこと。そして、「私たちにはオペラしかできません」という力強いお声。当時私は、公式に写真撮影をする立場ではなかったのですが、金魚鉢での本番中の撮影を許可するという連絡を受け、必死でホールにたどり着きました。
以上が、この「何でもない」「ただの」カーテンコールの写真が、私にとっては大変な意味を持っているという理由です。しかも、カーテンコールということで、出演者の全員と指揮者(飯坂純氏)・演出家も揃っています。今は亡き工藤先生(バリトン・工藤博氏)も・・・。
なるほど、写真ってそういうものかもしれない。ただの何でもない写真でも、ある人にとっては特別なものかもしれないのです。それは、恋人かもしれないし家族かもしれないし風景かもしれない。あるいは、自分自身の写真かもしれない。もしかして、全ての写真には、その写真を必要としている誰かが、必ずいるのじゃないかしら・・・。考えれば考えるほど、そんな風に思えてならないのでした。今、私が主に撮っているのは、オペラの舞台写真。必要としている方のところに、その写真たちを届けてあげることが出来たらなぁと、常にそんな風に思っています。
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