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新国立劇場 開場20周年記念特別公演《フィデリオ》の制作発表が行われました

新国立劇場 開場20周年記念特別公演《フィデリオ》の制作発表が行われました

10月12日、新国立劇場にて、開場20周年記念特別公演「フィデリオ」の制作発表が行われました。
(写真左より)ダニエル・ウェーバー氏(ドラマツルグ)、カタリーナ・ワーグナー氏(演出)、ステファン・グールド氏(フロレスタン役)、飯守泰次郎氏(オペラ芸術監督)

■飯守泰次郎氏(オペラ芸術監督)のコメントハイライト■
新国立劇場の開場20周年にふさわしい作品
「フィデリオ」と聞いただけで、身の引き締まる思いです。
欧米では、大きな節目や重要な記念日を祝うために、この作品を取り上げるという伝統があります。まさに、新国立劇場の開場20周年にふさわしい作品。
「フィデリオ」に描かれているのは、理想的で気高い夫婦愛です。これは、一番オペラになりにくい題材でしょう。「フィデリオ」には、身を焦がすような恋もなければ、浮気や裏切りも出て来ません。その代わりに、べートーヴェンが生涯をかけて追及し続けた、自由・平等・博愛という民主主義の土台となる精神が凝縮されているのです。後にワーグナーへと発展して行くドイツオペラの原点が、ここにあります。
今でこそ「古典」と言われている「フィデリオ」ですが、作曲された当時は、大変センセーショナルで革命的な作品でした。
べートーヴェンは、オペラにおいても、より深くより高貴な人間像を追求しました。声や楽器の事情に配慮するというよりも、寧ろ理念が常に先に立った人でした。この「フィデリオ」も器楽的なオペラと言ってよく、それ故に歌手には高度な技術が要求されます。加えて気品とパワーを持ち合わせていなければいけない。ある意味、ワーグナーを歌うより、ずっと難度が高いと言えます。

■カタリーナ・ワーグナー(演出)コメントハイライト■
「新しい視点」を提供したい
今唯一言えることは「新しい視点」を提供したいということです。
「人はどのように認識するのか」が大きなテーマです。同じものを見ても、それをどのように認識するかは一人一人違う。レオノーレという女性が男性として登場して、男性と認識されます。男性として認識されるということを、もう少し幅広く捉えてもいいのではないのかと。また、「自由」がどのように捉えられているのかということも考えなければなりません。
ピツァロとフロレスタンの関係がはっきりと見えて来ず、権力は最後にどこにあるのか、よくわからないままで終わってしまう。そこは私たちなりの解釈で、驚くものをお見せしたいです。
舞台装置や衣装は、どの時代ということははっきりとは決めずに、普遍的なもの、すべての世界に通じるようなものを選びました。

■ダニエル・ウェーバー氏(ドラマツルグ)コメントハイライト■
演出家チームにとっても大きなチャレンジ
「フィデリオ」は大変難度の高い演目。我々演出家チームにとっても大きなチャレンジです。このオペラには様々な版があり、歴史をたどってみても、最初から成功を収めたというわけではありませんでした。幾多の困難を乗り越え、ようやく完成版にこぎ付けたのです。対話の一つ一つが大変長く、歌手にとっても困難な課題をつきつけている。
べートーヴェンは、オペラ作曲家としては、あまり知られていません。登場人物は、ほとんど一元的に描かれています。私たちが課題として取り組んでいるのは、新しい視点を加えるということです。例えば、登場人物の関係を、もう一回見直してみる。このオペラが伝えようとしている価値が本当にシンプルなものなのか、新たな視点でもう一度問い直してみたいと考えています。

■ステファン・グールド氏(フロレスタン役)ハイライト■
一周して、また再びフロレスタンにたどり着いた
べートーヴェンは、私にとって最も重要な作曲家です。この作品は「魔弾の射手」(ウェーバー作曲)と並んで、ドイツオペラに大きな影響を与えました。ドイツの価値を伝えるものとして、伝統の中でもとても重要な位置付けになっています。そのような作品を歌えることを、大変光栄に思っております。私のヨーロッパデビューの演目もこの「フィデリオ」でしたし、新国立劇場では2006年にも歌わせて頂きました。一周して、また再びフロレスタンにたどり着いたというような感じがします。

べートーヴェンの唯一のオペラ「フィデリオ」は、2018年5月20日~6月2日の間に新国立劇場オペラパレスで、計5回の公演が行われます。

取材・写真:オペラ・エクスプレス編集部


新国立劇場 開場20周年記念特別公演
フィデリオ
オペラパレス
2018年5月20日(日)14時/24日(木)14時/27日(日)14時/30日(水)19時/6月2日(土)14時

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