オペラ・エクスプレス

The opera of today from Tokyo, the hottest opera city in the world

《夏の夜の夢》開幕迫る — 魔法の音楽と幻想の世界へ

《夏の夜の夢》開幕迫る — 魔法の音楽と幻想の世界へ

※本投稿は、去る7月18日に都内にて行われた、《夏の夜の夢》記者懇親会&リハーサル公開での取材を元に作成しています。

3年ぶりとなるサイトウ・キネン・オーケストラのオペラ公演、ブリテン作曲《夏の夜の夢》がまもなく開幕する。

指揮をつとめる沖澤のどか氏は、この作品に取り組むのは初めてながら、その独特な音楽世界と魅力に強く惹かれている様子。

彼女が初めてブリテン作品に触れたのは子どもの頃。CDで聴いた『青少年のための管弦楽入門』がきっかけ。この作品は、イギリスの作曲家ヘンリー・パーセルの音楽を下敷きにしており、《夏の夜の夢》にもパーセルの影響が色濃く反映されている。

沖澤氏が特に注目するのは、独特な楽器編成だ。木管6人、金管4人にパーカッション、弦楽器、チェンバロ、ハープ2本が加わる小編成オーケストラで、チェンバロ奏者はチェレスタも兼任。こうした編成はパーセル的な響きと幻想的な色彩を生み出し、唯一無二の音楽世界を構築している。

さらに楽譜には「パーセル風に」という指示があり、細部まで様式を踏襲していることがうかがえる。
コミカルな職人たちのシーンも大きな見どころで、登場人物の一人「フルート」が歌う場面では、モーツァルトの『魔笛』のフルートと同じ音型が奏でられ、遊び心あふれるパロディやオマージュが散りばめられている。

更に「音楽の細かな仕掛けを知らなくても、幻想的でコミカルな音楽がぎっしり詰まった魅力的なオペラ」と強調する。立ち稽古では出演者たちの才能と自由な発想に感嘆し、英国的ユーモアが随所に感じられる喜劇性を実感したという。

ロラン氏による演出の舞台映像を観た沖澤氏は、「幕が上がった瞬間から幻想的な世界に引き込まれる魔法のような舞台。特別な仕掛けがなくとも、美しく音楽にぴったり合った演出。」と評した。言葉と動きが音楽と完全に調和し、音楽との齟齬が一切ないのは特筆すべき点だ。

子どもたちの合唱も重要な役割を担い、妖精役の子どもたちは要所要所に登場し、可愛らしい音楽を披露。松本の合唱団の子どもたちは稽古に熱心に励み、当初は緊張していたが徐々に積極的に取り組むようになっている。

この経験が子どもたちの人生の貴重な思い出となることは間違いなく、沖澤氏は「舞台に関わるすべての人、そして観客にとっても夢のような体験になる」と確信している。

サイトウ・キネン・オーケストラは、3年前の『フィガロの結婚』のリハーサル時、序曲から衝撃を受けたスーパーオーケストラ。今回もブリテンの繊細な表現を徹底的に再現する見込みだ。

沖澤のどか氏は、この公演への期待を胸に、「非常に楽しみ」と語った。


ロラン・ペリー氏は、久しぶりに訪れる松本での公演への深い思い入れを語りながら、シェイクスピアとブリテンによる傑作オペラ『夏の夜の夢』の演出にかける情熱を明かした。

「松本は忘れられない思い出の地。再びここでこの作品を上演できることを本当に嬉しく思っています」と述べ、今回の公演に特別な感慨を示した。

ペリー氏は『夏の夜の夢』の特徴として、シェイクスピアの言葉が忠実に使われている点を挙げた。他の作曲家の作品と比べ、言葉そのものを重視していることが本作の大きな違いだという。

また、この作品は演劇として初めて演出したシェイクスピア作品であり、その後もオペラとして度々手がけてきた。詩的でありながら暴力的な側面もある。究極の愛を求める人間の欲望を、近代的に表現したシェイクスピアの天才的表現。その作品の素晴らしさには、毎回心を打たれていると語った。

「ブリテンの音楽はそのシェイクスピアの滑稽さや詩的情緒をさらに高めている」と評価し、「音楽の持つ魔法の力には強くこだわっている。オペラ演出家として、音楽の魔法に魅了されているからこそ、全ての作品で音楽の力を重視している」と自身の信念を明かした。

今回の演出の核として「夢」という非現実的な要素に焦点を当て、物語を非現実の世界から始める構成を選択。さらに「夜の暗闇」をキーポイントとし、「全てを見せるのではなく、隠すところに真実がある」とし、観客の想像力を刺激する演出を心がけた。

「観客にここがどこなのか、本物の世界なのか夢の世界なのか迷わせたい」とし、可動式の鏡を使用。登場人物の姿が幾重にも映る幻想的な舞台になるようだ。

ペリー氏はシェイクスピアを「世界そのもの」と述べ、「命の根源や宇宙までをも表現している」と深い敬意を示す。作品を通じて、私的で情緒的な表現やユーモラスな形で、生命や世界の意味を問いかけていると語った。


8月17日にまつもと市民芸術館で初日を迎える本作は、シェイクスピアの言葉とブリテンの音楽、演出家ロラン・ペリー氏の創造力、指揮を務める沖澤のどか氏の卓越したリードが一体となった、夢と魔法に満ちた舞台となることが大いに期待出来るだろう。

取材・写真:オペラ・エクスプレス編集部

2025セイジ・オザワ 松本フェスティバル
オペラ
ブリテン:《夏の夜の夢》全3幕


2025年8月17日(日)開演15:00
2025年8月20日(水)開演17:00
2025年8月24日(日)開演15:00

まつもと市民芸術館・主ホール

演奏:サイトウ・キネン・オーケストラ
指揮:沖澤のどか(OMF首席客演指揮者)
演出・装置・衣裳:ロラン・ペリー
装置補:マッシモ・トロンカネッティ
衣裳補:ジャン=ジャック・デルモット
照明:ミシェル・ル・ボーニュ

出演:
オーベロン:ニルス・ヴァンダラー
タイターニア:シドニー・マンカソーラ
パック:フェイス・ブレンダーガスト
シーシアス:ディングル・ヤンデル
ヒポリタ:クレア・プレスランド
ライサンダー:デイヴィッド・ボルティーヨ
ディミートリアス:サミュエル・デール・ジョンソン
ハーミア:ニーナ・ヴァン・エッセン
ヘレナ:ルイーズ・クメニー
ボトム:デイヴィッド・アイルランド
クインス:バーナビー・レア
フルート:グレン・カニンガム
スナッグ:パトリック・グェッティ
スナウト:アレスデア・エリオット
スターヴリング:アレックス・オッターバーン
児童合唱:OMF児童合唱団

※詳細情報は公式サイトでご確認ください

LEAVE A REPLY

*
*
* (公開されません)

CAPTCHA


COMMENT ON FACEBOOK

Return Top