2025年全国共同制作オペラ『愛の妙薬』の記者会見で語られた登壇者の皆様方のコメントを、オペラ・エクスプレスのX(@operaexpress)で、数回にわたりポストしました。本稿は、その登壇者別コメントを一つにまとめて掲載します。
演出・杉原邦生のキーワード「かわいい」、指揮・セバスティアーノ・ロッリのドニゼッティの色彩と軽やかさ、歌手陣の役への抱負、そしてダンサーを「愛の精霊(コロス的存在)」として配するアイデアなど——それぞれの言葉で辿る『愛の妙薬』をお楽しみください。
記者会見の登壇者は以下の通り。(写真左から)
糸賀修平(ネモリーノ役/京都)
宮里直樹(ネモリーノ役/東京・大阪)
高野百合絵(アディーナ役)
杉原邦生(演出)
大西宇宙(ベルコーレ役/東京・大阪)
池内響(ベルコーレ役/京都)
秋本悠希(ジャンネッタ役)

杉原邦生(演出)コメント

普段は長編や悲劇を手がけることが多いので、もしかして長尺もの?『ニーベルングの指環』かなと思っていたら『愛の妙薬』。意表を突かれたというか意外でしたが、挑戦し甲斐があるなと、すごく楽しみに なりました。
『愛の妙薬』を映像で初めて見たとき、古典劇のテイストもあり、登場人物が皆とても 可愛らしいという第一印象を持ちました。そこでキーワードを「かわいい」に決め、この言葉を軸にビジュアル、舞台美術、衣裳のデザインを進めています。
「かわいい」は日本のキャラクター/アイドル文化から世界に広がった言葉で、多様性を肯定し、ネガティブをポジティブに転換する力がある。物語は男女の恋愛として描かれていますが、ジェンダーレスの要素も加え、現代のお客様にダイレクトに伝わる作品にしたいと考えています。
ダンサーには明確な役割を担ってもらいます。愛の精霊のイメージを付与し、常に舞台上にいて出来事を見つめ、観客と舞台をつなぐ存在にします。いわば、ギリシャ悲劇でいうコロスのような位置づけです。
今回は僕の初めてのオペラ演出です。これをきっかけに初めてオペラをご覧になる方もいらっしゃると思います。初めての方にも、日頃から親しんでいる方にも楽しんでいただける舞台にしたい。みなさんと一緒に、しっかり作り上げていきます。
高野百合絵(アディーナ役)コメント

素晴らしい共演者の皆さまに囲まれてこの役を演じられることを、心から光栄に思います。皆さまとエネルギーを一つにして、このプロダクションならではの『愛の妙薬』をお届けできるのではないかと、今からとてもワクワクしています。
『愛の妙薬』はオペラでは珍しいハッピーエンドの物語です。ご来場の皆さまが、終始ふっと笑顔になり、心が温まるような、楽しい時間をお過ごしいただけるよう、精一杯つとめます。 個人的には、東京でオペラに出演するのは7年ぶりで、とても嬉しいです。
京都のロームシアターではこれまでにも歌わせていただきましたが、フェニーチェ堺は初めてで、今回の公演を心から楽しみにしています。
ポスターを初めて見たときから「どんな舞台になるのだろう」と胸が高鳴っていましたが、いよいよ本日から本格的な稽古が始まります。皆さまと心を一つに、体調に気を付けて本番まで走り抜けたいと思います。
宮里直樹(東京・大阪公演:ネモリーノ役)コメント

共同制作のオペラに関わらせていただくのは2回目です。前回は『椿姫』で5年前にやらせていただいて、そこからコロナになってしまい、ちょうど僕のコロナ前の公演がこの共同制作のオペラでした。
それに引き続き2回目、『愛の妙薬』という僕のいちばん好きな作品で参加させていただけることを本当に嬉しく思っております。『愛の妙薬』は2016年、9年前くらいに1本まるまるやって以来で9年ぶりなんですね。
大好きな作品なので自分のコンサートやオーケストラの公演などでよく取り上げますが、1本まるまるというのは今回が2回目なので本当に楽しみにしております。 今回は、オペラ初演出の杉原さんによる舞台で、これが本当に興味深い。
先日、兵庫でオペラをやった時に、あるコレペティの方がポスターを持ってきてくださって「これですよ」と言われ、もう本当にびっくりしました。どうなるんだろうと。
先ほど軽くコンセプトのお話を伺った時に、これは間違いなく見たことのない『愛の妙薬』になるだろうなと確信しております。本当に面白い公演になるんじゃないかなと思っています。
今回初めてフェニーチェ堺さんへ伺うことも含めて、大好きなメンバーとご一緒できることを、心から楽しみにしています。
糸賀修平(京都公演:ネモリーノ役)コメント

いちばん大事にしたいのは、音楽と言葉、そして物語をお客さまにきちんと届けること。そこに全力を尽くします。 このオペラの良さは、誰も死なないことです。兵隊や戦争の話が出てきても誰も死なず、喜劇として最後まで楽しく進む。
だから稽古場も自然と明るくなるので、そこが魅力だと思います。 今回はテーマが「かわいい」とのことなので、稽古場でもそれを合言葉に、何かあってもみんなで楽しんで乗り越えて行けたらいいなと思っております。
共同制作オペラに関わるのは初めてで、今からわくわくしています。私は京都公演に参加しますが、ロームシアター京都は、こけら落としの『フィデリオ』に出演して以来、たびたび歌わせていただいている思い入れのある劇場です。今から楽しみにしています。
大西宇宙(東京・大阪公演:ベルコーレ役)コメント

今回、邦生さんとオペラをご一緒するにあたり、いろいろリサーチしました。おっしゃっていた通り、悲劇を多く手がけていて、その扱い方がすごく面白い。
たとえば『オイディプス王』などのギリシャ悲劇にR&Bやラップの要素を組み合わせたり、そのテイストが凄く印象的でした。シカゴでも、シェイクスピア劇の演出やブロードウェイの演出家が手掛ける現場にいたことがあるので、異種格闘技的なプロジェクトが凄く好きです。
前回の全国共同制作オペラでは、野村萬斎さんとの『こうもり』に参加させていただきました。我々はどうしてもオペラを音楽主体で見ています。一方でテキストから読み取られる方たちは「こういう読み方をするのか」「考えてみるとそういう話だよね」と、ある意味フレッシュな視点でその解釈がビビッドに我々に響くことがありました。今回もコンセプトの説明を軽くうかがって、面白いケースだと感じ、なるほどねと思うところもありました。我々には音楽や歌のスタイルがありますが、お互いに戦うのではなく触発され合って、いい舞台にできればと思っています。
池内響(京都公演:ベルコーレ役)コメント

この全国共同制作オペラに関わるのは2回目で、前回は昨年の『ラ・ボエーム』でマルチェロ役を務めましたが、実在の画家・藤田嗣治に置き換え一人だけ日本人のキャラクターで出演させていただき、新鮮でとても楽しかったです。
先ほどのお話の通り、テーマは「かわいい」。フライヤーのイメージを見せていただいたときに「今年も何か起こる」とワクワクが高まりました。 ベルコーレは今回が初挑戦です。この「かわいい」という枠の中に、ベルコーレがどうはまり込んでいくのか。
“美しい心”という名前でもあるベルコーレが、一体どのような形になるのか。今日からの立ち稽古でどんどん解きほどいていって、いろいろなベルコーレ像を作っていけたらと思っています。
最終的には、このプロダクションにベルコーレが馴染んでいって、自分がやりたいベルコーレ、そして僕たちが目指す『愛の妙薬』を形にして、東京・大阪・京都それぞれの会場で、今回にしかできない『愛の妙薬』をお客さまと共有できればと考えています。
僕たちも楽しみますし、皆さんにも楽しんでいただければと思っています。
秋本悠希(ジャンネッタ役)コメント

素晴らしい音楽家の方々や演出家の方、スタッフの皆さまとご一緒できることを、大変光栄に思っています。 私たちそれぞれのキャラクターが、自分たちなりのかわいさを、稽古を通じて追求していくことになるかなと思います。
記者会見の前に杉原さんから今回のコンセプトを少しうかがいましたが、恋愛の矢印がまっすぐ一本ではなく、もう一つ矢印を持つキャラクターが何人か登場するようです。私が演じるジャンネッタはアディーナの友人の村娘で、ソリストの方々と合唱の方々をつなぐ役割も担います。
歌詞はシンプルですが、舞台をご覧になる皆さまに「あれ、今、この人の心はどちらに向いているのだろう」と伝わるように、丁寧に演じたいと思います。 今回は東京・大阪・京都の三箇所で、多くの方にこのオペラをご覧いただけます。私たちも精一杯努めます。
セバスティアーノ・ロッリ(指揮)ビデオメッセージから

『愛の妙薬』はイタリア文化の偉大な傑作の一つで、約200年もの間、一度もオペラのレパートリーから外れたことがありません。私が伝えたいのは、まさにドニゼッティの音楽が持つ色彩、詩情、軽やかさ、そして情緒です。
それは哀愁を帯びており、素晴らしい世界に誘うのです。私は日本の皆様にぜひ『愛の妙薬』にご参加いただけたら嬉しく思います。この作品は、私たちの文化を共有し合う場となりえます。人間の普遍的な感情、本質的な感情は、人々の間のコミュニケーションの基盤となります。
私はこの作品とともに日本へ行き、お互いの文化が偉大な芸術作品を通じて、どのように共感しあえるかを探りたいと心から思っています。東京、大阪、京都と巡るこの素晴らしい冒険が心から楽しみでなりません。きっと特別なものになると思います。
セルジオ・ヴィターレ(ドゥルカマーラ博士役)ビデオメッセージから

このたび東京・大阪・京都での共同制作『愛の妙薬』公演でドゥカマーラ役を演じるために日本へ行くことを心待ちにしています。これを機会に日本語をちょっと勉強してみました。
(いきなり流暢な日本語)ドゥルカマーラは詐欺師でワインを販売しております。今回のくにはらすぎおさんとの共同企画で、イタリアそして日本の文化がどう混ざっていくのか非常に楽しみにしております。ですが最後にドゥカマーラが喋ることを何一つ信じないでくださいね~(^_-)-☆
2025年度 全国共同制作オペラ
ドニゼッティ 歌劇『愛の妙薬』
〈全2幕/イタリア語上演/日本語・英語字幕付き/新制作〉
https://rohmtheatrekyoto.jp/lp/the-elixir-of-love2025/
2025年
11月9日(日)14:00 東京芸術劇場
11月16日(日)14:00 フェニーチェ堺
2026年
1月18日(日)14:00 ロームシアター京都
指揮:セバスティアーノ・ロッリ
演出:杉原邦生(KUNIO)
アディーナ:高野百合絵
ネモリーノ:宮里直樹【東京・大阪】糸賀修平【京都】
ベルコーレ:大西宇宙 【東京・大阪】池内響【京都】
ドゥルカマーラ博士:セルジオ・ヴィターレ
ジャンネッタ:秋本悠希
ダンサー:福原冠、米田沙織、内海正考、水島麻理奈、井上向日葵、宮城優都
合唱:ザ・オペラ・クワイア【東京】堺+京都公演特別合唱団【大阪・京都】
管弦楽:ザ・オペラ・バンド【東京】大阪交響楽団【大阪】京都市交響楽団【京都】



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