10月26日から、北とぴあをメイン会場に開催された「北とぴあ国際音楽2024」が、モーツァルト作曲のオペラ《皇帝ティートの慈悲》で閉幕した。「北とぴあ国際音楽」は、古楽を軸に多彩なクラシック音楽を楽しめる音楽祭である。1995年の北とぴあ開館5周年に開始され、毎年多彩なラインナップで芸術の秋を彩っている。
同音楽祭のメイン公演となるオペラ《皇帝ティートの慈悲》は、題名役にテノールのルーファス・ミュラーをイギリスから招聘。ヴィテッリアにはソプラノの名花ロベルタ・マメリ、セストにはメゾソプラノのガイア・ペトローネがあたった。国内からは、アンニオにメゾソプラノの高橋幸恵、セルヴィリアにソプラノの雨笠佳奈、プブリオにバリトンの大山大輔という確かな布陣が敷かれた。プブリオ役の大山は、セミ・ステージ形式の演出も担当した。
指揮は第一回目の音楽祭から継続して任にあたっている寺神戸亮だ。合唱と管弦楽はレ・ボレアードで、同団は音楽祭をきっかけに結成された古楽のスペシャリストたちによるものである。助演は吉元美里衣、深瀬友梨の2名。
ソリストたちの歌唱のみならず、古楽のスペシャリストたちによる合唱と管弦楽は、その規模、内容ともに大変充実したものである。
中でも最も難度が高く複雑な役柄のヴィテッリアを歌ったロベルタ・マメリは、1幕2幕それぞれのアリアいずれにおいても磨き抜かれた卓越した歌唱を披露。題名役ティートのルーファス・ミュラーの2曲のアリアは、気高い精神性とともに英雄像が投影された、実に印象深いものであった。セストのガイア・ペトローネは、ヴィテッリアに翻弄されるさまを迫真の歌と演技で訴えかける。アンニオの高橋幸恵、セルヴィリアの雨笠佳奈も、ともに見事な歌唱と表現力で聴かせてくれた。バリトンの大山大輔は、歌に演出に豊かな才能を示し、全ての観客を紀元1世紀のローマへと導いてくれた。助演の吉元美里衣、深瀬友梨の2名は立ち姿も美しく、舞台を効果的に盛り上げるための一役を担っていた。
終演後のカーテンコールでは、拍手が長時間鳴り止まず。総じて圧巻の公演であった。
なお、本年2025年の演目がヘンデル作曲の《ロデリンダ》であることが既に予告されている。加えて参加公演の募集も開始されているので、以下の公式サイトをチェックしてみて欲しい。
北とぴあ国際音楽祭特設ホームページ
オペラ《皇帝ティートの慈悲》
作曲:ヴォルフガング・アマデーウス・モーツァルト
台本 原作:ピエトロ・メタスタージオ/改作:カテリーノ・マッツォーラ
(イタリア語上演・日本語字幕付)
2024年 12月1日(日)14:00開演
北とぴあ さくらホール
指揮:寺神戸亮
演出:大山大輔
ティート:ルーファス・ミュラー
セスト:ガイア・ペトローネ
ヴィテッリア:ロベルタ・マメリ
アンニオ:高橋幸恵
セルヴィリア:雨笠佳奈
プブリオ:大山大輔
助演:吉元美里衣、深瀬友梨
合唱・管弦楽:レ・ボレアード(ピリオド楽器使用)
取材・文:オペラ・エクスプレス編集部
写真:長澤 直子
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