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平和を祈り人種の多様性について考える―Jack Perla作曲オペラ《アメリカン・ドリーム》

平和を祈り人種の多様性について考える―Jack Perla作曲オペラ《アメリカン・ドリーム》

2024年11月30日、渋谷区文化総合センター大和田 伝承ホールにて、Jack Perla作曲のオペラ《アメリカン・ドリーム》の日本初演が行われた。

2015年にシアトルで初演され、その後アメリカ各地で上演が行われているという。オペラの舞台は、第二次世界大戦中のワシントン州ピュージェット湾に浮かぶ島の農家。登場人物は、日系アメリカ人家族セツコ(米田七海)とその両親(ママ:山下未秒、パパ:大川博)、ドイツ系ユダヤ人のエヴァ(長島有葵乃)とその夫でアメリカ人のジム(佐藤克彦)、他にFBI(石本高雅)の計6名が全てだ。
演奏は、ピアノ(齊藤真優)、ヴァイオリン(深津悠乃)、チェロ(西條貴登)、クラリネット(小野信太郎)という少数精鋭の編成で、指揮に小林滉三、演出は塙翔平であった。
なお、英語のディクション指導を担当された浅野千尋はアメリカで活躍中のメゾソプラノで、過去に同オペラのママ役を演じた経歴を持つ。彼女の本作を日本に紹介したいという強い思いが、公演の実現につながったという。

当時の日系アメリカ人に対する不当な差別や迫害。他方でドイツから逃れて来たユダヤ人女性の苦悩。世界大戦の勝者となるアメリカ人の心の葛藤。それぞれの登場人物の心情が交錯する中に、人と人との絆,祖国への思いという、普遍的なテーマが描かれている作品だと感じた。

客席は満員御礼。いささか難しさを感じる主題ではあるものの、様々な世代の方が見受けられた。

本編は90分ほどと長くはないが、主催代表の近藤はるかによる指揮者と演出家を交えての簡単な前説に加え、終演後には作曲家Jack Perla,慶應大学名誉教授の巽孝之を交えたアフタートーク。大変充実した内容となっていた。

また、プログラムには、あらすじの他に日系アメリカ人の歴史を概観する読み物(アジア系アメリカ文学会会長・神戸大学教授の山本秀行による)が寄稿されており、オペラへの理解がより深まるとともに、知られざる過去に思いを馳せた。

戦後80年を迎えようとしている2024年の終わりに、平和を祈り人種の多様性について考える、良いきっかけとなったのではないか。


なお、当日の上演の様子は、2025年2月28日 23:59までの期間限定でアーカイブ配信されている。
【オンライン配信】日本初演オペラ《An American Dream》(英語上演/日本語英語字幕)https://teket.jp/10758/44719


【公演詳細】
Opera Lab Japan 主催
日本初演オペラ <An American Dream>
英語上演/日本語英語字幕
アフタートークあり

日時 2024年11月30日(土)16:30開演
場所 渋谷区文化総合センター大和田 伝承ホール

作曲 Jack Perla
台本 Jessica Murphy Moo

指揮 小林滉三
演出 塙翔平

セツコ 米田七海
エヴァ 長島有葵乃
ジム 佐藤克彦
ママ 山下未秒
パパ 大川博
FBI 石本高雅

ピアノ 齊藤真優
ヴァイオリン 深津悠乃
チェロ 西條貴登
クラリネット 小野信太郎

英語指導 浅野千尋 / Timothy Steele
舞台監督 小田原築(株)アートクリエイション
照明 沖田麗(有)ライトシップ
装置 吉野良祐
衣裳 相川治奈
ヘアメイク 徳田智美
稽古ピアノ 宮沢愛実
通訳 島津 文香
制作 伊東七海 / 小林愛侑 / 中島晶子 / 長谷川暖 / 花岡香梨
写真撮影 松岡大海
動画編集 中島晶子

アフタートーク
巽孝之(慶應義塾大学名誉教授)
Jack Perla(作曲家)

公演総監督 近藤はるか
主催・制作 Opera Lab Japan

取材・文:オペラ・エクスプレス編集部
写真:長澤 直子

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