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創作に5年!!総勢200名の市民参加型オペラ---浜松市民オペラ 宮川彬良作曲《ブラック・ジャック》世界初演【公演レポート】

宮川彬良作曲の新作オペラ《ブラック・ジャック》を観てきました!世界初演です。登場人物も多く規模の大きな作品で、宮川のポップな音楽が描く全3話のオムニバス・オペラを田尾下哲の演出が巧みにさばき見応えがありました。
© Naoko Nagasawa (OPERAexpress)_2286
今回が第7回目だという浜松市民オペラ。公演はソールド・アウトで客席には子供達の姿も多く見られました。プログラムによりますと創作に5年を費やし、ソリスト、コロス、合唱、オーケストラ総勢200名が参加していたそうです。手塚治虫の傑作漫画「ブラック・ジャック」がオペラ化されたわけですが、元はといえば1999年に宮川彬良が作曲した「室内楽の為のソナタ《ブラック・ジャック》」という曲だそうです。この曲には吹奏楽版もあり、それが日本全国で演奏されているうちにオペラの構想へと発展していったようです。台本はこの原曲を初演した室内合奏団アンサンブル・ベガにも関わる作家の響敏也です。

「ブラック・ジャック」はこれまでもアニメ、映画、舞台等に翻案されています。今回はオペラ化にあたり、手塚の漫画から「あるスターの死」「ミユキとベン」「おばあちゃん」という三つの物語を原作として使用し、「87歳の反逆」「お前の中の俺」「母と子のカノン」というタイトルで各章が約50分の全三幕のオペラになりました。響の台本は原作をかなり自由に使って独自の登場人物や場面を作り出しており、ブラック・ジャックは各幕に共通する要素として話の最後に登場します。

オーケストラの編成も大きめで、色々なパーカッションやドラムスも参加、ピットの中にはグランド・ピアノとチェレスタも入っていました。金管の活躍が多かったですが、それ以外の楽器もそれぞれ聴かせどころがあり、各幕ごとに特徴のある音楽作りが魅力的だったと思います。作曲の宮川自身が指揮をしました。旋律や音楽の着想はミュージカル的な要素が強いというか、耳馴染みが良い音楽で、オペラの内容に合っていたと思います。オーケストラが厚いので歌手の声はPAでしっかりめに補強されおり、上の方の席でも良く聴こえました。日本語上演ですが字幕があり、これもありがたかったです。


第1章「87歳の反逆」は往年のハリウッド女優で絶世の美女だったベティが、どうしても若い頃の容姿を取り戻したくてブラック・ジャックの手術を受ける…というお話。幕が開くとミュージカルに出てくるような大階段に合唱団が多勢乗って登場し、舞台はすぐに華やかな雰囲気で満たされました。ベティ役のソプラノ歌手 鷲尾麻衣は容姿端麗で、長大なモノローグもしっかり歌っていました。若い頃のベティを歌った田上知穂も華やか。オペラが始まって30分程たってから登場したブラック・ジャックはバリトンの大山大輔。雰囲気があり地の台詞も美声で良かったです。半分白髪の髪の毛も特殊メイクも決まってブラック・ジャック役がサマになっていました(びっくりしたのは口ひげがあるブラック・ジャックだったことです!)。手術のシーンは大きな布の使い方を工夫してスペクタクルに仕上がっていました。

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第2章の「お前の中の俺」は深窓の令嬢に恋をした不良少年が、彼女の癌を治す手術をブラック・ジャックに依頼するために銀行強盗をするというストーリー。令嬢彩香役は關さや香、不良の渉役は今井学が演じ、特に今井は歌う部分が多いのですが素直な発声で、体当たり的な演技で健闘していました。家政婦大原役の橋爪万里子の声と演技も良かったです。

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第3章の「母と子のカノン」は幕が開くと、そこは“昭和”の雰囲気が一杯のお茶の間で、客席から笑いがこぼれます。お嫁さんからお小遣いをせびってばかりのおばあちゃんが、実は子供の頃に難病にかかった息子の莫大な手術費用を、息子に内緒で一生支払い続けていたというお話です。後半はブラック・ジャック並みに腕が良く法外な費用をとっていた六法寺という医者(すでに亡くなっている)の家が舞台となります。おばあちゃん(邦子)役の中島実紀が声も演技力も抜群で引き込まれました。息子役の加藤宏隆も良い声と演技、お嫁さん役の澤村翔子、若い頃の邦子役の加藤恵利子、そして六法寺夫人の伊藤真友美も良かったです。

最後は第3章の物語にオーバーラップするようにこれまでの登場人物たちと合唱が出て来て、ブラック・ジャックのソロを中心にして大団円となります。合唱も迫力がありとても良かったです。

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それぞれの幕の登場人物が多く、三つの別々の物語を扱うオペラですが、田尾下哲の演出は人物の動かし方が的確で大変分かりやすく、また飽きさせない工夫に満ちていて素晴らしかったです。歌手達は踊りのような大きなジェスチャーの動きをすることが多く(振付は長谷川寧)、照明もドラマチックでした。美術と衣裳もこのオペラに良く合ったものだったと思います。

漫画「ブラック・ジャック」にはもう一人重要な登場人物がいます。それはブラック・ジャックが命を救った、幼女の姿をしたピノコです。今回のオペラでは漫画のピノコそっくりのとても可愛い子役が登場し、台詞や歌はありませんでしたが舞台に花を添えていました。このような名作漫画がオペラになるのはポジティブなことだと思います。ドラマチックなエンディングの後には観客のブラヴォーの声や拍手が長く続いていました。

文・井内美香 reported by Mika Inouchi / photograph : Naoko Nagasawa


第7回浜松市民オペラ
《ブラック・ジャック》世界初演
時をめぐる3章
〜手塚治虫作「ブラック・ジャック」より〜

2015年8月30日(日)
アクトシティ浜松 大ホール 開演14:00

スタッフ:
音楽監督・作曲・指揮:宮川 彬良
脚本:響 敏也

演出:田尾下 哲
振付:長谷川 寧
美術:松岡 泉
照明:成瀬一裕
衣装:萩野 緑
ヘア・メイク:吉池アサノ

副指揮:西村 友

舞台監督:幸泉 浩司

管弦楽:浜松交響楽団
合唱:浜松オペラ合唱団 、ACT CITYユース合唱団、ジュニアクワイア浜松

キャスト:
ブラック・ジャック:大山 大輔
ヤング・ベティ/若六法寺夫人:田上 知穂
オールド・ベティ:鷲尾 舞衣
代理店上司・ハリー:水船 桂太郎

彩香:關 さやか
渉:今井 学
家政婦大原:橋爪 万里子
医者:塚本 伸彦

猪一:加藤 宏隆
邦子/キャサリン:中島 実紀
麻子:澤村 翔子
若邦子:加藤 恵理子
六法寺夫人:伊藤 真友美

以下は出演者(コロス):
マリー:桜谷 清美
ジュリア:酒井 和音
ロージー:小山 美樹
代理店部下・ボブ:吉田 裕太
代理店部下・テディ:木村 公紀
看護師:宮本 りつこ
大井梨江、中村洋美、真井聖美、安間鮎子、法月昭乃、三野久美子
近藤辰俊、石原久章、山中秀三、石黒崇真、冨田夏行、木村健、村瀬諒

主催/  浜松市、(公財)浜松市文化振興財団、浜松シティオペラ協会、(公財)浜松交響楽団、浜松オペラ合唱団
主管/   第7回オペラ実行委員会
制作/   (公財)浜松市文化振興財団

共催/   静岡朝日テレビ
企画協力/   手塚プロダクション
協力/   (有)GOO!、東京ハッスルコピー
後援/   静岡新聞社・静岡放送、中日新聞東海本社、株式会社ハンナ、FMHaro!、ケーブルウインディ

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