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ワーグナー『神々の黄昏』の魅力をギュッと凝縮!―「わ」の会コンサートvol.4 リハーサルレポート

ワーグナー『神々の黄昏』の魅力をギュッと凝縮!―「わ」の会コンサートvol.4 リハーサルレポート

8月24日に開催される、「わ」の会第4回公演のリハーサルを取材してきました。昨年は「トリスタンとイゾルデ」第2幕全曲演奏(カット無し)をメインとしたプログラムを取り上げ、大好評を博した「わ」の会。その公演は「音楽の友」誌の「コンサート・ベストテン2016」(選者:萩谷由喜子氏)にて第1位を獲得し、「わ」の会の充実した音楽水準が広く知れ渡ることになりました。今年は、ワーグナーの巨大な4部作「ニーベルングの指環」の締めくくりを飾る「神々の黄昏」を抜粋形式で取り上げます。音楽ファン、オペラ・ファン必見の公演で、秋に新国立劇場でも上演される当作品のエッセンスを体感するにも絶好のタイミングですね!
早速リハーサルの様子をご紹介しましょう。

取材に伺った日は立ち稽古(舞台上の動作や表情を加えて行う練習)の初日でした。すでに音楽稽古を重ねており、またワーグナーのみならず熟練のオペラ歌手であるキャストの皆さん。自分の役と相手との連携を認識しながら、音楽の進行に合わせてどんどんと動きが加えられていきます。初日にもかかわらず、殆ど舞台の流れが止まらずに雄弁に伝わってくるのには驚きました。「わ」の会のコンセプトは「聴衆・演奏者がともにワーグナー作品への理解を深める」ということですが、演出もその目的に忠実です。例えば、グートルーネの動機が鳴る箇所ではそこに自然に視点が向けられるようにしたりと、演出は音楽を支える役割を果たすのです。

左から、ピアノ:木下志寿子さん、字幕:吉田真さん、指揮:城谷正博さん

舞台を統べるのは、新国立劇場のカペルマイスターとして世界一流の歌手からの信頼厚い城谷正博さん。暗譜で指揮しつつ、ソリストへ鋭敏な指示を送ります。その情報量・熱量はすさまじく、稽古の緊張感や密度の濃さには驚かされました。オーケストラ・パートは木下志寿子さんの雄弁なピアノが担い、各動機も浮き立たせつつ表現していきます。(『わ』の会名物・このお二人の連弾は今年もお楽しみに!)また、字幕を担当される吉田真さん(慶應大)はドイツ語の点から音楽面を強力にサポート。愛知祝祭管「ワルキューレ」などでも好評を博した吉田さんの字幕を是非お楽しみに。公演当日はプレトークもあるそうです。
ジークフリート役:片寄純也さん

ソリストの皆さんには新国立劇場、二期会、びわ湖ホールなど、国内の主要なワーグナー公演で大活躍の顔ぶれがずらり。昨年の「わ」の会「トリスタンとイゾルデ」の表題2役で濃厚な愛の交歓を歌った池田香織さん、片寄純也さんは今回ブリュンヒルデ、ジークフリートで登場。幸福な愛の語らいが昂まり、ジークフリートの旅立ちへと物語を繋ぐ「愛の二重唱」はいきなりの見せ場。続く第1幕第1場・第2場ではハーゲン(大塚博章さん)、グンター(友清崇さん)、グートルーネ(小林厚子さん)らギービフング家の人々が指環奪還の謀略をめぐらせます。ハーゲンとグンターを演じるお二人の低声の魅力に加え、ジークフリートを魅力的に迎え入れるグートルーネの小林さんがたおやかに場面を彩ります。第3幕第2場(この日は音楽稽古が行われました)は、ジークフリートがハーゲンの問いかけに応じ、自らの生い立ちから現在までを話して聞かせます。ここでは片寄さんの表現豊かな歌が印象的で、小鳥の再現ではヘルデンテノールにコロラトゥーラを歌わせるという驚きも。その直後に英雄ジークフリートはハーゲンの槍に倒れますが、この箇所の音楽の緊張感は、間違いなく「黄昏」のハイライトでしょう。そして物語は英雄の葬送、愛馬グラーネを駆るブリュンヒルデの自己犠牲へと続いていくことになります。音楽的には、ギービフング家の合唱(第2場)も聴きどころです。

最後に、指揮の城谷正博さんから公演に向けてメッセージを頂きました。

「今回取り上げる『神々の黄昏』は、序幕の愛の二重唱しか幸せな場面がない悲劇的な作品なのです。ハーゲンらの計略があり、ジークフリートが斃され、ブリュンヒルデの自己犠牲へと至るという―いわば起承転結を凝縮した形の抜粋ですので、作品のエッセンスを感じていただけると思います。『わ』の会で一作品に集中して上演するのは今回が初めてですが、メンバーの成熟とともに、ワーグナーの語法を皆が着実に掴んでいるという実感があり、充実した稽古が出来ています。短期間の練習でも、達成されるものが非常に多いのですね。演出も含めてト書きに忠実な舞台ですので、是非ご覧いただきたいと思います。皆様のご来場をお待ちしております」

「わ」の会 第4回公演、公演の詳細は下記からご覧いただけます。

文・平岡 拓也 Reported by Takuya Hiraoka

【公演案内】

「わ」の会 第4回公演 “Erlösung” ~救済~
2017年8月24日(木)
北とぴあ つつじホール

《神々の黄昏》序幕よりジークフリートとブリュンヒルデの二重唱 第1幕より第1場、第2場
《神々の黄昏》第3幕より第2場、第3場

ブリュンヒルデ: 池田香織
ジークフリート: 片寄純也
ハーゲン: 大塚博章
グンター: 友清崇
グートルーネ: 小林厚子
合唱: 宮之原良平、寺西一真、櫻井航、松澤佑海
指揮: 城谷正博
ピアノ: 木下志寿子
ステージング: 澤田康子
字幕: 吉田真
18:20開場(18:30よりプレトークあり)
19:00開演
※上演時間 約2時間
前売・当日:全席自由4,000円(税込)

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