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【公演レポート】 東京二期会オペラ劇場《リゴレット》

【公演レポート】 東京二期会オペラ劇場《リゴレット》

二期会の《リゴレット》公演を観てきました!パルマ王立歌劇場の伝統的な舞台と若きマエストロ、バッティストーニが話題の公演でした。

パルマは熱心なオペラ・ファンが多く、ヴェルディの伝統を大事に守っている街として知られています。今回、二期会で上演されたプロダクションはそのパルマ王立歌劇場との提携で、何と1987年に初演された舞台なのだそうです!まさに伝統的なイタリア・オペラの美術と演出です。一方、タクトをとるのは現在27歳のイタリアの新星、アンドレア・バッティストーニ。伝統と革新の両方を取り入れたイタリアンな《リゴレット》公演となりました。

パルマ王立歌劇場プロダクションの素晴らしさは何といってもその美術セットだと思います。幕が開くたびに豪華な舞台が目に鮮やかでした。特に第一幕のマントヴァ公の宴の場面は赤いテーブルクロスがキーポイントなのですが、これは初日に1階席で観た時よりも、二日目に4階席から観た時の方が断然美しかったです。イタリアの馬蹄形劇場の桟敷席から鑑賞するように作られた装置なのかもしれないですね。また、第三幕のスパラフチーレの家も立体的な大きな装置に暗い照明が雰囲気を醸し出し、今ではめったに見られない古き良き時代(?)の舞台を堪能する事が出来ました。

東京二期会オペラ劇場【リゴレット】19・21日組
東京二期会オペラ劇場【リゴレット】19・21日組

指揮のバッティストーニは今とても注目されている若手です。シンフォニーとオペラにおける活動のバランスがとれていて、知性があるアーティストだと思います。東京フィルの首席客演指揮者に就任し、日本コロムビアから新録音CDを次々発表しています。今回の《リゴレット》では、このオペラを上演する際のテンポや、歌手が慣習的に歌う(楽譜に書いていない)高音などを見直したそうで、例えば第二幕の最後ではリゴレットがジルダとの二重唱「復讐だ」に入る前に音を〈ミ♭〉に上げるのをやめたり、第三幕のマントヴァ公の「女心の唄」の高い〈シ〉の音はアリアの終わりではなく、その後で舞台裏から歌う一番最後の一節だけにする、などです。東フィルとの演奏は熱くドライヴ感があり観客を惹きつけました。第一幕はかなりのアップテンポでぐいぐい進み、第二幕はリゴレットと廷臣達とのやり取りにオーケストラが感情を歌って秀逸。そして第三幕の四重唱はまさにこのオペラの音楽的なクライマックスとして見事な演奏でした。それから、今回の演奏はオケの内声部がかなりはっきり聴こえるので、ハーモニーの進行が分かりやすくて楽しめました。

東京二期会オペラ劇場【リゴレット】20・22日組
東京二期会オペラ劇場【リゴレット】20・22日組

初日にリゴレット役を歌ったのは上江隼人。明瞭な台詞と音楽的に練れた役作りがとても良かったです。ジルダの佐藤優子は瑞々しい声に端正な音楽。マントヴァ公の古橋郷平はモデルさん?という長身のテノールで、カルロ・ベルゴンツィやルチャーノ・パヴァロッティなどが典型的なテノール体型だと思ってきた私から見るとびっくりしてしまいますが(笑)、声の魅力があり高音も輝かしかったです。マッダレーナの谷口睦美も美貌に妖艶な声で好演でした。スパラフチーレのジョン ハオは低音が充実。


二日目、20日のタイトルロール成田博之は、迫真的な演技でリゴレットの心情を見事に描き出していました。ジルダの新垣有希子は声も演技も女性としての成熟した魅力があります。マントヴァ公の山本耕平は気品のある歌唱でした。


二期会の男声合唱はいつもながら歌も良いし、演技も積極的で好感度が高かったです。
(所見:2月19日、20日)
reported by Mika Inouchi / photo (C) Naoko Nagasawa


東京二期会オペラ劇場《リゴレット》

オペラ全3幕 字幕付き原語上演

台本:フランチェスコ・マリア・ピアーヴェ
作曲:ジュゼッペ・ヴェルディ

会場:東京文化会館大ホール

2015年2月19日(木)18:30/20日(金)14:00/21日(土)14:00/22日(日)14:00

指揮:アンドレア・バッティストーニ
演出:ピエール・ルイジ・サマリターニ/エリザベッタ・ブルーサ

マントヴァ公爵:古橋郷平(19/21)/山本耕平(20/22)
リゴレット:上江隼人(19/21)/成田博之(20/22)
ジルダ:佐藤優子(19/21)/新垣有希子(20/22)
スパラフチーレ:ジョン ハオ(19/21)/伊藤純(20/22)
マッダレーナ:谷口睦美(19/21)/ 加藤のぞみ(20/22)
ジョヴァンナ:与田朝子(19/21)/ 小泉詠子(20/22)
チェプラーノ伯爵:原田勇雅(19/21)/野村光洋(20/22)
チェプラーノ伯爵夫人:杣友惠子(19/21)/ 成田伊美(20/22)
モンテローネ伯爵:長谷川寛(19/21)/泉良平(20/22)
マルッロ:加藤史幸(19/21)/山口邦明(20/22)
マッテオ・ボルサ:今尾滋(19/21)/渡邉公威(20/22)
マントヴァ公爵夫人の小姓:小倉牧子(19/21)/宮澤彩子(20/22)

合唱:二期会合唱団
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

美術:ピエール・ルイジ・サマリターニ
照明:アンドレア・ボレッリ
合唱指揮:佐藤宏
字幕:菊池裕美子
公演監督:直野 資
制作:公益財団法人東京二期会
主催:公益財団法人東京二期会/公益社団法人日本演奏連盟
後援:イタリア大使館

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