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10年ぶりの新演出!正統派のアプローチで迫るプッチーニの世界—藤原歌劇団《トスカ》公演レポート

10年ぶりの新演出!正統派のアプローチで迫るプッチーニの世界—藤原歌劇団《トスカ》公演レポート

東京文化会館で藤原歌劇団の《トスカ》を観ました!

プッチーニ《トスカ》と言えば、超人気作品の一つ。イタリア・オペラに伝統のある藤原歌劇団が上演するのに相応しい演目ですね。私が行った初日はS・A席ともに売り切れで(東京文化会館前には「チケット余っていたら買うよ」の声かけが登場!)、それ以外の券種は少しあったようですが、ほぼ満席の客席は熱気に満ちていました。

今回は10年ぶりとなる新演出での上演です。演出は馬場紀雄。特徴としては、舞台の中央に「舞台の上の舞台」を作ったことです。画家であるカヴァラドッシのパレットを思わせるような形の少し高さがあるステージが舞台中央にあり、第一幕ではその場所が教会内でカヴァラドッシが絵を描く足場、第一幕後半はテ・デウムのための祭壇、第二幕ではファルネーゼ宮殿内のスカルピア居室の「聴取台」、そして最後の幕では「処刑台」として使用されます。

幕が開くとそこには斜めからの視線で作られたプロセニアム(舞台を額縁のように囲むアーチ)があり、舞台奥や上の方の窓には鉄格子が嵌められて、最終幕の舞台となるローマの聖天使城を思わせます。そして、舞台中央部を古代の野外劇場のような階段状の客席が取り巻いていました。舞台美術も衣裳もオーソドックスです。


 =1月30日組舞台写真=


演奏は柴田真郁指揮の東京フィル。柴田はプッチーニの楽譜の細かい指示、特にテンポに気を使った正統派のアプローチという印象でした。

歌姫トスカ役は野田ヒロ子。美しい舞台姿と澄んだ声でヒロインを演じ、特にアリア「歌に生き、愛に生き」は良かったです。カヴァラドッシは村上敏明。よく鳴る声に、言葉と音楽がぴったりと合ったドラマチックな歌唱に酔いました。登場人物になり切る演技も素晴らしい。スカルピアは公演監督を務めている折江忠道。深みがあり柔らかなバリトンの音色で、巧みな歌い回しはさすがでした。

堂守の柴山昌宣は声も歌も良かったです。アンジェロッティの三浦克次も好演。スポレッタの所谷直生とシャルローネの党主税は、少しマンガチック(?)なデカダンな衣裳とメークで悪役を演じて面白かったです。藤原歌劇団合唱団と多摩ファミリーシンガーズによる、第一幕幕切れのテ・デウムも良い出来でした。

馬場の演出は、オペラ最後のトスカの身投げを象徴的に扱っていました。全てはお芝居、これは過去の物語なのですから、とでも言うように… それでもやはり《トスカ》の悲劇は、地理的にも時代的にもこんなに離れた私たちの心に響くのです。終演後は長い間、拍手とブラヴォーの声が続いていました。
(所見:1月30日)

文・井内美香 reported by Mika Inouchi / photograph:Naoko Nagasawa


藤原歌劇団公演

ジャコモ・プッチーニ作曲
オペラ全3幕 原語上演

《トスカ》
TOSCA
2016年1月30日(土)/31日(日)14:00
東京文化会館大ホール

指揮:柴田真郁
演出:馬場紀雄

トスカ:野田ヒロ子(1/30) 佐藤康子(1/31)
カヴァラドッシ:村上敏明(1/30) 笛田博昭(1/31)
スカルピア:折江忠道(1/30) 須藤慎吾(1/31)
アンジェロッティ三浦克次(1/30) 久保田真澄(1/31)
堂 守:柴山昌宣(1/30) 安東玄人(1/31)
スポレッタ:所谷直生(1/30) 澤﨑一了(1/31)
シャルローネ:党主税(1/30) 田中大揮(1/31)
看守:坂本伸司
牧童:時田早弥香

合唱:藤原歌劇団合唱部
児童合唱:多摩ファミリーシンガーズ

管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

合唱指揮:安部克彦
美術:土屋茂昭
衣裳:小野寺佐恵
照明:奥畑康夫
舞台監督:村田健輔
児童合唱指導:高山佳子

字幕:馬場紀雄

公演監督:折江忠道

主催:公益財団法人日本オペラ振興会/公益社団法人日本演奏家連盟


 =1月31日組舞台写真=

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