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藤原歌劇団《愛の妙薬》オペラは馬蹄形の劇場で、反省会は居酒屋へ!———OTTAVA+オペラ・エクスプレス共同企画第2弾「OPERA VIVAツアー」レポート

藤原歌劇団《愛の妙薬》オペラは馬蹄形の劇場で、反省会は居酒屋へ!———OTTAVA+オペラ・エクスプレス共同企画第2弾「OPERA VIVAツアー」レポート

藤原歌劇団の《愛の妙薬》公演に行ってきました!会場は神奈川県川崎市(小田急新百合ケ丘駅)にあるテアトロ・ジーリオ・ショウワです。昭和音楽大学のキャンパス内にある馬蹄形のオペラ・ハウスで客席数は1265席、モーツァルト、そしてロッシーニ、ベッリーニ、ドニゼッティなどのベルカント・オペラを上演するのに理想的な劇場です。

今回はインターネット・ラジオのOTTAVAさんとの共同企画第2弾として、OTTAVAとオペラ・エクスプレスで募集した5名様とOTTAVAのプレゼンター斎藤茂さんと一緒に行ってきました!構成は女性4名に男性1名。生のオペラを観るのが初めて!という方が二人いらっしゃいました。前回に続き、オペラ初心者の方に向けて、という趣旨に賛同して下さった藤原歌劇団さんのご協力を得て実現した企画です。どうもありがとうございました!

当日は新百合ケ丘駅で待ち合わせて徒歩3分の劇場へ。薄曇りの気持ちの良いお天気の日で、劇場前の緑が爽やかでした。ロビーで簡単なレクチャーをさせていただいてから席に着きます。席は下手寄りでかなり舞台に近く、迫力の音と演技を堪能することができました。

演出は粟國淳。彼がオペラ演出家としてデビューした1997年のプロダクションです。人気作品としてこれまで学校公演などで上演されており、今回初めて藤原歌劇団の本公演で上演されたそうです。客席に入ると、どんちょうの代わりに19世紀風に描かれたイラストの紗幕があり雰囲気満点です。幕が上がると台本のスペインからイタリアに設定を変えた、自然に囲まれた村のセットが美しかったです。場面転換によってアディーナの農場前から広場へと移動したり装置の変化があるのも楽しく、パスクワーレ・グロッシによる衣裳は登場人物の性格を反映した品のあるデザインでした。

この公演で大活躍だったのが合唱団です。藤原歌劇団合唱団はさすがラテン系(笑)というか、イタリア語は自然だし、演技も華があります。おばあさん役とその孫とおぼしきメガネで髪の毛を二つにしばった女の子役のコンビも良かったし、村の人々にちゃんと名前も生活もある感じなのです。

主役カップル、アディーナの高橋薫子とネモリーノの村上敏明は舞台に登場した時から主人公を生きていました。《愛の妙薬》を観る楽しみの一つに、アディーナとネモリーノの関係がどう変化するかを観察することがあると思うのですが、高橋アディーナはしっかりもので心優しい女性。実は最初からネモリーノを憎からず思っているという風情(一緒に行ったリスナーさんたちと後でおしゃべりした時にも意見が一致しました)。一方ネモリーノは結構ルックスが素敵だし、あの男らしい美声、そして最初から情熱的な歌唱で、叔父さんの遺産が入る前でも彼を狙っている女の子が結構いそうな感じでした。それにもかかわらず、妙薬と信じてワインを飲む場面などでは思いっきり弾けた演技であっぱれです。

ドゥルカマーラの谷友博はよく響く美声で早口言葉も滑らか。ベルコーレの月野進も柔らかいバリトンの声が魅力でした。ジャンネッタの河野めぐみはアンサンブルをひっぱる求心力がありました。

次々と繰り出される美しいメロディ、そしてドラマにピッタリ合った音楽に溢れている《愛の妙薬》ですが、第二幕の後半にあるネモリーノの名アリア「人知れぬ涙」は、それまでのコミカルな雰囲気ががらっと変わって真実味のある恋愛感情が支配的になる瞬間です。村上の歌うアリアには詩的なペーソスがありジーンとさせます。そしてその後、アディーナがネモリーノに「受け取ってPrendi」と歌うところの高橋は、アディーナの真心を余すところなく表現する歌唱で、この上演のクライマックスを形作りました。

管弦楽はジーリオ・ショウワ・オーケストラ。昭和音楽大学の卒業生が中心になったプロ・オーケストラです。タクトは昨年末にイタリアのトリエステ歌劇場で《愛の妙薬》を指揮したばかりの園田隆一郎で、歌とオーケストラの両方を良く統率し、このオペラにふさわしい運びで盛り上げました。特に第一幕の後半の、二重唱から三重唱、そして四重唱と音楽が膨らみ、最後にテンポが急に早くなって終わるフィナーレまでの流れはこのオペラ全体の構築を感じさせる見事な音楽作りでした。

公演後にはカーテンコール。キャストが盛大な拍手を受けます。その後では、藤原歌劇団の折江忠道総監督が舞台に登場しました。熊本の地震被害の募金をしますというお知らせのためです。第二幕の冒頭の「歌いましょう」を皆がもう一度歌い、演奏しました。そして出演者の皆さんが舞台衣裳のままで募金箱を持ってロビーに集まり、劇場を後にするお客さん達からの寄付を集めました。
(所見:4月23日)

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公演+募金が終わった後、キャストの方々はさぞお疲れだったと思うのですが、OTTAVAのリスナーさん達と我々は、前回と同じように特別に舞台に上がらせていただきました。今回は何と、キャスト全員と指揮の園田隆一郎さん、そして演出の粟國淳さんと記念写真!!!なんだか自分もオペラの登場人物になったみたいでした(笑)。

藤原歌劇団《愛の妙薬》舞台上にて
藤原歌劇団《愛の妙薬》舞台上にて

そして…まだ続きがあります!「OPERA VIVAツアー」恒例の居酒屋反省会です!オペラの後で一杯飲んで、観たばかりのオペラの感想や、色々なことを皆さんとお話しするひと時です。オペラ本体より楽しいかも知れません(あ、ウソです。汗)。先に帰らなくてはならない方もいて残念でしたが、今回も色々なお話しが出来て楽しかったです。何よりも、それぞれの方が自分の感性でオペラを観ていらっしゃる事が分かり、頼もしかったです。

文・井内美香 reported by Mika Inouchi

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《愛の妙薬》
L’Elisir d’amore
全2幕 字幕付き原語上演[リコルディ版]

ガエターノ・ドニゼッティ作曲
フェリーチェ・ロマーニ台本

2016年4月23日(土)、24日(日)
テアトロ・ジーリオ・ショウワ

指揮:園田 隆一郎
演出:粟國 淳

出演:(23日、24日の順)
アディーナ:高橋 薫子/光岡 暁恵
ネモリーノ:村上 敏明/宮里 直樹
ドゥルカマーラ:谷 友博/田中 大揮
ベルコーレ:月野 進/岡 昭宏
ジャンネッタ:河野 めぐみ/丹呉 由利子

合唱:藤原歌劇団合唱部  
管弦楽:テアトロ・ジーリオ・ショウワ・オーケストラ

合唱指揮:山舘冬樹
美術:川口直次
衣裳:パスクワーレ・グロッシ
照明:奥畑康夫

振付:伊藤範子
字幕:増田恵子

総監督:折江忠道
制作・主催:公益財団法人日本オペラ振興会
共催:川崎・しんゆり芸術祭2016実行委員会

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