
ベルカント・オペラに力を入れている藤原歌劇団が、ドニゼッティの《愛の妙薬》,《ドン・パスクァーレ》に続いて、ベッリー二の《カプレーティ家とモンテッキ家》の上演を行った。かつて、デヴィーア、ガナッシのコンビを迎えて行われた上演を見たのが2002年のことだった。実に14年振りに取り上げる演目ということになる。日本において、この作曲家のオペラは、何故かあまり劇場にかからない。貴重な鑑賞機会と言えるだろう。
歌手では、鳥木弥生のロミオの、凛々しい響きの歌唱が印象的に残る。颯爽とした舞台姿も、役によく合っていた。光岡暁恵は、澄んだ美声と華麗で端正な技巧で、ジュリエッタの清純な様子を表現していた。テバルドの所谷直生は、よく伸びる輝かしい響きが良い。豊島,坂本の低音2人の歌も、それぞれ聴きごたえがあった。
松本重孝の演出は、強烈な個性やメッセージ性を持つ系統のものではないように見えたが、ベルカントオペラにおいては、そのような傾向は寧ろ好ましい。衣装やセットの色遣いには工夫が凝らされ、全体にシックで上品な仕上がり。恋人たちの若さ故の悲しい恋の結末が、浮き彫りとなって胸に迫る。
(9月11日所見)
藤原歌劇団公演
カプレーティ家とモンテッキ家
2016年9月10日(土)/11日(日)
新国立劇場 オペラパレス
指揮 : 山下一史
演出 : 松本重孝
ロメオ:向野由美子/鳥木弥生
ジュリエッタ:高橋薫/子光岡暁恵
カペッリオ:安東玄人/豊島雄一
テバルド:笛田博昭/所谷直生
ロレンツォ:東原貞彦/坂本伸司
合唱:藤原歌劇団合唱部
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
合唱指揮:須藤桂司
美術:荒田良
衣裳:前岡直子
照明:山口暁
舞台監督:菅原多敢弘
副指揮:小屋敷眞、髙橋勇太
演出助手:奥野浩子
総監督:折江忠道
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