
11月18日(土)より上映が開始される、METライブビューイングの2017-18シーズン。豪華10演目のラインナップを紹介致します。
ラドヴァノフスキーの《ノルマ》
今シーズンのメトロポリタン歌劇場のオープニング演目はベッリーニ作曲の《ノルマ》です。一番気になるのはタイトルロールを歌うソンドラ・ラドヴァノフスキー。ベルカント・オペラの最高峰と言われる《ノルマ》、ローザ・ポンセル、マリア・カラス、ジョーン・サザーランド、モンセラート・カバリエ、レナータ・スコットなど、オペラの歴史を作った名歌手たちがMETでノルマ役を歌ってきました。今回ノルマを歌うラドヴァノフスキーも、すでに2013年にMETでこの役を歌い絶賛されています。輝かしい声と、確固としたテクニック、そして卓越した演技力を持ったラドヴァノフスキーは、昨年のMETオペラ・シーズンでドニゼッティの女王三部作《アンナ・ボレーナ》《マリア・ストゥアルダ》《ロベルト・デヴェリュー》の全てに主演するという偉業を成し遂げたばかり。9月に上演された《ノルマ》の公演評も良く、ヒューマンで圧倒的なノルマを聴かせてくれるはずです。
演出はデイヴィッド・マクヴィガー。スコットランド出身で、METでは上記のドニゼッティ女王三部作やヴェルディ《イル・トロヴァトーレ》、ヘンデルの《ジュリアス・シーザー》などの演出で知られています。伝統的な美術セットを用いて古代ローマのガリア地方の神秘的な世界を見せてくれるでしょう。人気テノール歌手ジョセフ・カレーヤがポッリオーネ、そしてMETの看板歌手の一人、ジョイス・ディドナートがアダルジーザを歌うのも魅力です。指揮は熟練のカルロ・リッツィ。
ミュージカルや映画とオペラの刺激的な関係
第2作目はモーツァルト《魔笛》。2005年に初演された大人気プロダクションです。演出はミュージカル《ライオンキング》を演出したジュリー・テイモア。カラフルなステージに、黒子たちが操るパペット(操り人形)やダンサーたちが大活躍します。日本でも人気のルネ・パーペのザラストロ、マルクス・ウェルバのパパゲーノ、そしてパミーナ役を歌う南アフリカ出身のゴルダ・シュルツの伸びやかな歌も楽しみです。ジェームズ・レヴァインの指揮も聴き逃せません。
第3作目はMET初演の現代オペラ《皆殺しの天使》。
あの有名なルイス・ブニュエル監督の同名の映画からストーリーをとっています。あるブルジョワの豪邸に招かれた客たちが、理由も無くその家から出られなくなってしまい、閉じ込められた空間で次々と事件が起こる…という不条理劇の傑作です。作曲は2012年のMETライブビューイングで上映された《テンペスト》を書いた現代作曲家トーマス・アデス。演出はトム・ケアンズ。アデスは主に無調音楽を使って曲を書いていますが、リリックな耳に心地よい歌に特徴があり、このプロダクションがすでに上演されたザルツブルク音楽祭や英国ロイヤル・オペラでも大成功を収めています。芸達者な歌手達が揃い、しかも字幕でしっかり内容を追うことが出来るライブビューングだからこそ、安心して全てを堪能できそうです。
第4作目の《トスカ》は、《ノルマ》と同じマクヴィガー演出の新制作です。
写実的でゴージャスな舞台が予想されます。指揮は巨匠ジェームズ・レヴァイン。売れっ子のプリマ・ドンナ、ソニア・ヨンチェヴァがローマの歌姫トスカを演じ、情熱の画家カヴァラドッシはハンサムなイタリアン・テナー、ヴィットーリオ・グリゴーロが歌います。スカルピア役のブリン・ターフェルの演技も見物です。
第5作はドニゼッティの《愛の妙薬》。2012年のMETシーズン・オープニングを飾ったバートレット・シャー演出のプロダクションです。ソニー・クラシカルの専属スター歌手、プリティー・イェンデがアディーナを歌うのが楽しみです。名アリア「人知れぬ涙」を歌うネモリーノはオリジナル・キャストのマシュー・ポレンザーニが出演。イルデブランド・ダルカンジェロがドゥルカマーラを歌うのも注目です。
第6作はプッチーニ《ラ・ボエーム》。
フランコ・ゼッフィレッリ演出の名舞台がマルコ・アルミリアート指揮、ソニア・ヨンチェヴァ主演でMETに帰ってきます。マイケル・ファビアーノのロドルフォ、スザンナ・フィリップスのムゼッタにも期待!
第7作はロッシーニのオペラ・セリアの大傑作《セミラーミデ》。
METでは25年ぶりの上演になるそうです。ジョン・コプリー演出の輝かしい美術と衣裳の歴史的な舞台、マウリツィオ・ベニーニ指揮。息子とは知らずに年若き戦士アルサーチェに恋してしまう古代アッシリアの女王セミラーミデはアンジェラ・ミードが演じます。
第8作はモーツァルト《コジ・ファン・トゥッテ》のニュー・プロダクション。
演出はフィリップ・グラスの《サティアグラ》やバロック・オペラのパスティッチョ《エンチャンテッド・アイランド 魔法の島》を手がけたフェリム・マクダーモット。1950年代のコニーアイランドを舞台に現代的な切り口の《コジ》になるそうです。見逃せないのは2015年のMET《メリー・ウィドウ》でヴァランシェンヌ役を演じて大好評だったミュージカル・スター、ケリー・オハラが今度は何とデスピーナ役を演じること。NYならではのシャープな舞台が展開しそうです。
第9作目はヴェルディ《ルイザ・ミラー》。
指揮は再びMETの顔、ジェームズ・レヴァインに、エライジャ・モシンスキーの演出。ソニア・ヨンチェヴァ、プラシド・ドミンゴ、ピョートル・ベチャワとMETらしいスター・キャストが揃ったプロダクションです。
そして最後の第10作目はMET初演となるマスネ《サンドリヨン》、シンデレラの物語です。
スター歌手ジョイス・ディドナートの当たり役として知られているフランス・オペラで、王子役はメゾ・ソプラノのアリス・クートが歌います。このプロダクションはディドナート主演で英国ロイヤル・オペラの舞台が映像になっており、ロラン・ペリーの演出はファンタジーあふれる美しいもの。指揮のベルトラン・ド・ビリーもこのオペラのエキスパートでマスネの豊麗な音楽を聴かせます。ディドナートの名唱と、夢のような舞台の公演を観られるでしょう。
以上、今シーズンのMETライブビューイングのラインナップから見所、聴き所を書きました。魅力的なプロダクションがたくさんありますね。どうぞお見逃しなく!
文・井内美香 text by Mika Inouchi
世界最高峰のオペラを
究極の「特等席」で。
ニューヨーク・メトロポリタン歌劇場(通称:MET)で上演される
世界最高峰のオペラを、日本全国の映画館で上映します。
世界のトップ歌手たちの夢の競演、最高のオーケストラ、刺激的な演出の数々が、
リーズナブルな価格でご覧いただける画期的なオペラ・エンターテインメント。
(公式サイトMETライブビューイングとは?より転載)
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