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【公演レポート】新国立劇場《さまよえるオランダ人》

【公演レポート】新国立劇場《さまよえるオランダ人》

新国立劇場の《さまよえるオランダ人》初日に行ってきました。ドラマチックな声の共演が、暗い情熱を持つこの作品を見事に描いていました。

ワーグナーがそれまで書いた三作の後、初めて独自の境地に達した《さまよえるオランダ人》。今回の上演は2007年に初演され、2012年に再演された新国立劇場のプロダクションです。演出はマティアス・フォン・シュテークマン。暗い色調の象徴的な舞台。船の舵が印象的なモチーフになっています。《オランダ人》は宗教的な題材ではありませんが、ワーグナーに典型的な“乙女の貞節に救済される男”の話で、音楽的にも海の嵐に象徴されるオランダ人の荒々しさと、「救済のテーマ」等に描かれた癒しが拮抗します。

歌手でもっとも迫力があったのはゼンタ役のリカルダ・メルベート。最初のアリアも良かったですが、特に第二幕のオランダ人との二重唱以降は目覚ましく、豊麗な声と力強い歌に圧倒されました。この演出のフィナーレはゼンタが幽霊船の舳先に立ったまま海に沈み、地面に斃れたオランダ人の姿がスポットライトに浮かび上がって幕となりますが、今回の二人の個性にも良く合ってオランダ人の真の救済を感じさせるエンディングだったと思いました。

オランダ人役のマイヤーも知性的で魅力のある歌唱。影のある容姿も演技も役にぴったりでした。ダーラントのシヴェクは新国立劇場《ドン・カルロ》のフィリッポ二世に続いての登場で、長身で美声のバス歌手。その他のキャストも好演でした。芸術監督である飯守泰次郎指揮の東京交響楽団はゆったりめのテンポで、特に第二幕、第三幕ではスケールの大きいワーグナー世界を現出させていました。

《さまよえるオランダ人》はワーグナーの中でも合唱に大変魅力のあるオペラです。第二幕の糸紡ぎの場面の女声合唱、第三幕の水夫達の合唱とそれに続く幽霊船の船員達の歌など、粒が揃っているだけでなく音に膨らみのある際立った美しさでした。
(所見:1月18日)

reported by Mika Inouchi

《さまよえるオランダ人》
新国立劇場 オペラパレス

全3幕 ドイツ語上演 字幕付
台本・作曲:リヒャルト・ワーグナー

指揮:飯守泰次郎
演出:マティアス・フォン・シュテークマン
美術:堀尾幸男
衣裳:ひびのこづえ
照明:磯野 睦

キャスト
ダーラント:ラファウ・シヴェク
ゼンタ:リカルダ・メルベート
エリック:ダニエル・キルヒ
マリー:竹本節子
舵手:望月哲也
オランダ人:トーマス・ヨハネス・マイヤー

合唱:新国立劇場合唱団
管弦楽:東京交響楽団

合唱指揮:三澤洋史

字幕:山崎太郎

芸術監督:飯守泰次郎

2015年1月18日(日)2:00
2015年1月21日(水)2:00
2015年1月25日(日)2:00
2015年1月28日(水)7:00
2015年1月31日(土)2:00

主催:新国立劇場

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