オペラ・エクスプレス

The opera of today from Tokyo, the hottest opera city in the world

レスピーギのローマ三部作で2016/17シーズンが終了。創立70周年を祝ってきた東京交響楽団が、大きな区切りを華々しくフィナーレ!

創立70周年を祝ってきた東京交響楽団の2016/17シーズンも、本拠地で開催された3月18日の川崎定期演奏会をもって主催公演を終了した。ひとつの、しかし大きな区切りを華々しく飾るのに選ばれたのは、これほど祝祭的な雰囲気を持つオーケストラ曲もそうはないだろう、レスピーギのローマ三部作だ。レスピーギが管楽器の別働隊(バンダ)やオルガンまで加わる大編成の管弦楽を活用して描き出す三曲は、今回は作曲順に、つまり「噴水」(1916)、「松」(1924)、「祭」(1928)の順に演奏された。指揮は1月のオペラシティシリーズに続いての登場となった飯森範親だ。

(C)Melle Meivogel

(C)Melle Meivogel

レスピーギがグレゴリオ聖歌に出会って作風を深化させていく時期の代表作は、それぞれに個性的に美しく、ローマの歴史を音楽で振り返る趣向が楽しい作品だ。弱音部でのプッチーニを思わせる繊細な響きから、「噴水」ではドビュッシーやラヴェルに、「松」「祭」ではストラヴィンスキーやバルトークにも通じる華麗な管弦楽法が耳を楽しませてくれる。しかしヨーロッパの20世紀音楽としては屈託のない響きは、異例なものといえる(「松」「祭」が大戦間の作であることを考えればなおのこと)。彼がリムスキー=コルサコフに学んだ管弦楽法故だろうか、各種の効果を駆使しながらも晦渋になることなく響く音楽は非常に彩度の高いものだ。

飯森範親の今回のアプローチは、作品のそんな性格を率直に音にするものだ。好調の東京交響楽団となら、そしてミューザ川崎シンフォニーホールの音響ならばそれはひとつの正解と言えるだろう。トランペット、トロンボーンを階上(「松」ではオルガンの両サイド、「祭」では三階LAブロック)に配して、ミューザ川崎シンフォニーホールの明晰な音響空間を活かし、かつ劇的な作品の演出を的確にこなした。この会場で東京交響楽団がオルガン付きの作品を取り上げる際にはいつもそのアンサンブルの緊密さに感心させられるのだが、今回は特に印象的なアンサンブルが楽しめた。時に祈りを導く聖なる楽器として、時にホール全体を鳴動させて威圧するものとして、時に手回しオルガンとして街の雑踏を演出し、と活躍したオルガンの使い方はこの作品における聴きどころのひとつなのだと認識を改めさせてくれるものだった。

(C)Melle Meivogel

(C)Melle Meivogel

三曲が演奏されたこの日の演奏で、より強く印象に残ったのは真ん中に置かれた「松」だろう。大編成管弦楽に加えて鳥の鳴き声までも用いて多彩な描写を行い、最終的には圧倒的な行進曲で終わるこの曲がホール全体を響きで満たした瞬間は、間違いなくこの日のクライマックスだった。

 

 

(C)Melle Meivogel

(C)Melle Meivogel

個人的に強く印象に残ったのは「祭」のフィナーレ、主顕祭の冒頭だ。各楽章ごとに楽器の用い方を変えて聴き手を飽きさせないこの作品で、もっとも目まぐるしく場面が変転する、「ペトルーシュカ」を思い出させるフィナーレの中でも冒頭をあげるのはわけがある。E♭クラリネットが音楽を導いた後に登場する木琴、グロッケンシュピール、タヴォレッタ(音程の異なる二つの木の板を楽器するもの)が西田紘子氏によるプログラムノートで言及されていた「よい子には飴やおもちゃ、悪い子には木炭」を届けてくれる魔女の描写がこれであったか、と気付かされたのだ。ホールに響いた素朴な「木の音」でようやくその描写に気づけた自分を棚にあげて申し上げるなら、「こうした発見ができるのも実演ならばこそ」、だろう。

 

なお、同じプログラムは新潟定期演奏会として1999年から開催されてきた演奏会の第100回として、ミューザ川崎シンフォニーホールでの演奏の翌日にりゅーとぴあで披露された。ミューザ川崎シンフォニーホール同様に、ステージを取り囲むように客席が配されたりゅーとぴあではさらに練り上げられた、輝かしい演奏が披露されたものと確信している。


2016/17シーズンの主催公演を終了した東京交響楽団だが、今月(4月)には、8日から週末ごとに演奏会が待っている。5月には第4シーズンを迎える音楽監督ジョナサン・ノットも登場し、ますますノット&東響のコンビネーションも熟成されていくことだろう、6月には新国立劇場「ジークフリート」も担当する…と、次々と注目の公演に登場する東京交響楽団は、創立71年目も見逃せない聴き逃せないオーケストラとなることだろう。シーズン最終公演にそんな確信を新たにできたことは、一人の聴衆として幸せなことである。

取材・文:千葉さとし reported by Satoshi Chiba


東京交響楽団 川崎定期演奏会 第59回

2017年03月18日(土)14時
ミューザ川崎シンフォニーホール

指揮:飯森範親

レスピーギ:交響詩「ローマの噴水」
レスピーギ:交響詩「ローマの松」
レスピーギ:交響詩「ローマの祭」

2017/18 コンサート情報

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