オペラ・エクスプレス

The opera of today from Tokyo, the hottest opera city in the world

音楽の喜びを思い出す、希望のコンサート。東京二期会スペシャル・オペラ・ガラ・コンサート「希望よ、来たれ!」

音楽の喜びを思い出す、希望のコンサート。東京二期会スペシャル・オペラ・ガラ・コンサート「希望よ、来たれ!」

記念すべきオリンピックイヤーとなるはずだった2020年は、未曾有の事態にさらされました。新型コロナウイルス感染症の流行はまたたくまに世界規模のパンデミックに発展し、多くの国がロックダウン(都市封鎖)を実施。それに伴い、外食産業や観光業を始めとするさまざまな業種が深刻な経営難に陥っています。
クラシック音楽界も例外ではなく、大多数のコンサートやオペラ公演が中止を余儀なくされました。

前例の無い状況で演奏会の実施がためらわれる中、“今こそ音楽の力を”とオペラ・ガラ・コンサートの特別開催に踏み切ったのが東京二期会です。その一部始終を見届けるべく、会場となった東京文化会館に足を運びました。

会場に到着してみると、いつもの演奏会とは若干異なる雰囲気です。マスクにフェイスシールド、手にはグローブを着用し、細心の注意を払って観客を迎え入れる会場スタッフ。手指のアルコール消毒とセンサーでの検温が済むと、チケットを自分でもぎり、プログラムも各自で受け取ります。一階の前方は、着席出来ないようになっており、他は、一席ずつ間隔が取られています。

オーケストラ(東京交響楽団)の席は、通常よりかなりの間隔を空けてセッティングされており、管楽器以外の演奏者はマスクを着用。普段とは違った緊張を感じる舞台に、指揮の沖澤のどかが颯爽と登場し、演奏が始まります。いつもとは演奏の感覚が変わってしまったのではないかという心配は、生き生きとした豊かな響きを聴いて一掃されました。

沖澤のどか

一曲目はベートーヴェンのオペラ「フィデリオ」より序曲、続けて同オペラより主人公レオノーレの歌うアリア「悪者よ、どこに急ぐのだ~希望よ、来たれ!」です。精密さを保ちながら端正に演奏されるベートーヴェン。アリアでは、木下美穂子(ソプノ)の艶やかな歌声が光ります。困難に負けず希望を信じるヒロインの心境や、苦難の道を歩み抜いた巨匠ベートーヴェンの人生が、今のクラシック音楽が置かれた苦境と重なって想起させられました。

木下美穂子(ソプノ)

三曲目はプッチーニ「トスカ」からアリア「星は光りぬ」。クラリネットの美しい旋律が、やがて城宏憲(テノール)の悲哀にあふれる歌声に引き継がれます。カヴァラドッシの激情を伸びのある美声で歌い終えた演奏者に、ひときわ大きな拍手が送られました。

城宏憲(テノール)

第一部の最後に演奏されたのは、ロッシーニの名作「セビリャの理髪師」よりロジーナのアリア「今の歌声は」、そしてフィガロによる「わたしは町のなんでも屋」。中島郁子(メゾソプラノ)の素晴らしい技巧と、その迫力の声量が伝わってくる黒田博(バリトン)のコミカルな演技が楽しいひと時でした。

中島郁子(メゾソプラノ)
黒田博(バリトン)

第二部はモーツァルトの最晩年のオペラ「魔笛」序曲で幕を上げました。オーケストラの響きは第一部よりさらに会場になじみ、聴き手は一気に「魔笛」の世界に誘われます。二曲目は同オペラより「イシスとオシリスの神に感謝を」。第二幕の冒頭で厳粛に歌われるザラストロのアリアを、妻屋秀和(バス)の朗々とした声で堪能しました。

妻屋秀和(バス)

続けて演奏されたのが、ベルクのオペラ「ルル」より「ルルの歌」です。男性に破滅をもたらす女性・ルルの妖しい魅力が、ベルクの不穏なサウンドと森谷真理(ソプラノ)の圧巻の表現、そしてコンテンポラリーダンサーの中村蓉のダンスによって見事に舞台に表出していました。

プログラムの最後に歌われたのが、プッチーニのオペラ「トゥーランドット」より「誰も寝てはならぬ」。女子フィギュアスケートの荒川静香選手がトリノ五輪で金メダルを勝ち取ったことでも記憶されている、勝利の歌です。福井敬(テノール)による万感の思いが込められた歌声に、音楽家としての強い決意が感じられる名演でした。

福井敬(テノール)

演奏会を始めとするイベントの実施にさまざまな意見が飛び交う中で行われた、東京二期会スペシャル・オペラ・ガラ・コンサート「希望よ、来たれ!」。そのタイトルの通り、音楽家と音楽愛好家に一筋の希望をもたらすコンサートでした。
一日も早く、音楽会のある日常が戻ることを願って止みません。

取材・文:オペラ・エクスプレス編集部
写真:長澤 直子


東京二期会スペシャル・オペラ・ガラ・コンサート 希望よ、来たれ!
Tokyo Nikikai Special Opera Gala Concert “Komm, Hoffnung!”

2020年7月11日(土)
東京文化会館 大ホール

<出演者>
指揮:沖澤のどか
ソプラノ:木下美穂子
ソプラノ:森谷真理
メゾソプラノ:中島郁子
テノール:城 宏憲
テノール:福井 敬
バリトン:黒田 博
バス:妻屋秀和
ダンサー:中村 蓉
管弦楽:東京交響楽団

<曲目>
<第1部>
ベートーヴェン:オペラ《フィデリオ》序曲
ベートーヴェン:オペラ《フィデリオ》より
〈悪者よ、どこに急ぐのだ~希望よ、来たれ!〉(ソプラノ 木下美穂子)
プッチーニオペラ《トスカ》より〈星は光りぬ〉(テノール 城 宏憲)
ロッシーニオペラ《セビリャの理髪師》より〈今の歌声は〉(メゾソプラノ 中島郁子)
ロッシーニオペラ《セビリャの理髪師》より
〈わたしは町のなんでも屋〉(バリトン 黒田 博)
<第2部>
モーツァルトオペラ《魔笛》序曲
モーツァルトオペラ《魔笛》より
〈イシスとオシリスの神に感謝を〉(バス 妻屋秀和)
ベルクオペラ《ルル》より〈ルルの歌〉(ソプラノ 森谷真理、ダンス 中村 蓉)
プッチーニオペラ《トゥーランドット》より
〈誰も寝てはならぬ〉(テノール 福井 敬)


当日の模様が収録されている映像

LEAVE A REPLY

*
*
* (公開されません)

CAPTCHA


Return Top