オペラ・エクスプレス

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楽都:仙台で心に響くベートーヴェンの《第九》(全4ページ)

東北は合唱が盛んなことで知られています。今回の《第九》でもその実力は発揮されていました。このコンサートに参加したすべての合唱団の指導を手がけている佐々木正利先生にお話を伺いました。


Q:東北文化学園大学の《第九》コンサートでは、どのような指導をされていますか?

佐々木:このコンサートは東日本大震災の亡くなられた方々、残されたご遺族に対する慰めや励まし、それをしっかり繋いでいこうという意図から始められたものです。二年目から私が合唱指揮として合唱全体をまとめる役目に就きました。私は東北文化学園大学の特任教授なので、学生には授業の一環として教えていますが、このコンサートは私が常任指揮者をしている七つの合唱団体が一体となって参加しています。東北文化学園大学以外はサークル活動の団体で、仙台市が二つ、盛岡市が三つ、山形市が一つ。仙台市以外の皆さんは本番までのリハーサルの三日間を毎日、日帰りで通ってきています。
音楽への愛、合唱が大好き、という方向は一致していますが、そういう方々と私が一緒にやる時の信念は、ただ歌って楽しむのではなく、その作品が持っている精神性、芸術性、そういったものをきちんと享受しよう、受け止めよう、ということです。声を出してハーモニーを楽しむだけでなく、作品の持っている性質、ベートーヴェンの高邁な精神、もしくは作品によっては娯楽性ですとか、それを自分たちが練習を真摯に積んで享受しよう。そして、その自分たちが感じたものを聴いている方にも共有して頂ければそれに勝るものはない、ということでやっています。
学生達は、普通大学の一般教養の授業ですから、それまで声を出したことのない人がたくさんいるわけです。ドイツ語を習ったこともない。最初はただ呆然としています。ところが段々面白さが分かってくるのですね。自分は声が出ない、ドイツ語が話せない、細かいパッセージを表現する事が出来ない、ということがあっても、他の合唱団の皆が一緒に歌うことによって作品の全貌が分かり、歌うことが楽しくなっていくのです。

Q:先生のご指導は、音色の純度の高さ、そしてカンタービレな歌を感じました。表現も多彩です。音楽的にはどういう所が指導のポイントですか?

佐々木:その音楽が持っている様式に見合った表現法を皆で会得していく、ということが大きな目標です。声楽の場合には特にレガートが中心です。自分の身体が楽器ですから、身体を使ってレガート唱法での表現を身につけていくとともに、リズムで聴かせる所、言葉で聴かせる所、ハーモニーで聴かせる所、歌心で聴かせる所、音量で聴かせる所、音楽には様々な顔がありますから、そういうことをつぶさに合唱団員の方々に教えていきます。


毎年の恒例となった東北文化学園大学の《第九》コンサート、年を重ねるごとに人気が高まっているそうです。満席の観客は集中して音楽を楽しみ、終演後は出演者たちに大きな拍手を送っていました。

取材・文:井内美香 reported by Mika Inouchi

2017 第九コンサート
2017年12月3日(日)15:00開演
場所:東京エレクトロンホール宮城(仙台市)指揮:飯森範親独唱:
早坂知子(ソプラノ)
在原泉(メゾ・ソプラノ)
新海康仁(テノール)
小森輝彦(バリトン)管弦楽:仙台フィルハーモニー管弦楽団
合唱:東北文化学園混声合唱団、東北大学混声合唱団、岩手大学合唱団、仙台宗教音楽合唱団、熊友会ヴォーカル・アンサンブル、盛岡バッハ・カンタータ・フェライン、山響アマデウスコア合唱指導:佐々木正利、五十嵐修、在原泉
練習ピアニスト:高塚美奈子、高橋麻子、石垣弘子主催:学校法人 東北文化学園大学
共催:公益財団法人 宮城県文化振興財団
助成:2017年度後期「心の復興音楽基金」平成29年度 宮城県文化芸術の力による心の復興支援助成金事業
後援:宮城県、宮城県教育委員会、仙台市、仙台市教育委員会、河北新報社、NHK仙台放送局、仙台放送、TBC東北放送、KHB東日本放送、ミヤギテレビ、東北文化学園大学同窓会、東北文化学園専門学校同窓会

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