日生劇場が開催するNISSAY OPERAは、一流の演奏家やスタッフが手掛ける舞台を手ごろな価格で観賞できる企画です。
2019年11月に上演が行われたのは、ジャコモ・プッチーニの名作、《トスカ》。日生劇場では初めての上演とのことです。
演出には日生劇場の芸術参与でもある粟國淳氏、指揮は藤沢市民オペラの芸術監督などの活動をしている園田隆一郎氏を招き、共にイタリア・オペラの場で活躍している二人が本公演を牽引します。
オーケストラは読売交響楽団、こちらも一流の楽団です。
舞台への期待を一層高めながら、2日目のチームを拝見。
観客を魅了する鮮やかなサウンド
高い技術に定評のある読売交響楽団ですが、園田氏の指揮によって色彩豊かで魅力的なサウンドに仕上がっていました。弦楽器の群奏の美しい音から時折顔を出す管楽器の音色が面白く、変化に富んだ演奏は観客を一気にプッチーニの世界へ引き込みます。
オーディションで選ばれたという歌手陣もまた、実力派揃いです。
カヴァラドッシ(藤田卓也)はのびやかな中に繊細さを感じさせる美声で、陽気なキャラクターの堂守(柴山昌宣)とのコントラストが印象的でした。
目まぐるしい感情の変化を見せたのは、ヒロインのトスカ(岡田昌子)です。可憐さと火のような情熱を併せ持つその気性を、声色で見事に表現しています。
またスカルピア(須藤慎吾)の声は圧巻で、特に艶やかな低音は客席まで迫り来るような威圧感を伴っていました。
他のキャストたちもそれぞれにメリハリのある演技が光り、劇に深みや立体感をもたらしています。一幕最後には合唱(C.ヴィレッジシンガーズ)も加わり、テ・デウムのシーンを豪華に飾っていました。
視覚的にも美しい舞台に、19世紀イタリアへ誘われる
シンプルながらも美しい舞台美術は古い建物の質感や光の表現が素晴らしく、まるで1800年のイタリアに迷いこんだようです。
また衣装も時代を忠実に再現したデザインですが、華やかな色遣いが建造物の古めかしい色調から際立っており、特にトスカの一幕の装いには花が咲いたような存在感があります。
スカルピアは対照的に黒を基調とした豪奢な作りの衣装で、マントの内側からこぼれる赤色が不吉な、地位ある人間の抱える暗い欲望を彷彿とさせるものでした。
是非足を運んでほしい、意欲あふれるNISSAY OPERA
本格的な舞台でありながら、チケットの価格は一般的なオペラ公演の約半額に設定されており、オペラファンのみならずビギナーも足を運びやすい、オペラ普及への意欲あふれる企画です。
NISSAY OPERAから今後も目が離せません!
NISSAY OPERA
プッチーニ作曲《トスカ》
2019年11月10日(日) 日生劇場
指揮:園田隆一郎
演出:粟国淳
トスカ:岡田昌子
カヴァラドッシ:藤田卓也
スカルピア:須藤慎吾
アンジェロッティ:妻屋 秀和
堂守:柴山 昌宣
スポレッタ:澤原 行正
シャローネ:高橋 洋介
看守:氷見 健一郎
牧童:倉金 はるか
合唱:C.ヴィレッジ・シンガーズ
児童合唱:パピーコーラスクラブ
管弦楽:読売日本交響楽団
取材・文:オペラ・エクスプレス編集部 写真:長澤直子
LEAVE A REPLY