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【10月&11月の公演情報】この秋はようやく劇場で!幻想の世界へいざなう『夏の夜の夢/新国立劇場』(ほか注目7公演)

【10月&11月の公演情報】この秋はようやく劇場で!幻想の世界へいざなう『夏の夜の夢/新国立劇場』(ほか注目7公演)

いよいよこの秋、劇場でのオペラ上演が本格的に再開となります。オンライン配信など新たな鑑賞形態を通じ、クラシック音楽界が活力を取り戻しつつあるものの、劇場での臨場感や一体感を懐かしむ方も多いのではないでしょうか。
新型コロナウイルス感染対策として、マスク着用やアルコール消毒、ソーシャル・ディスタンス確保はもちろん、各劇場は演出の段階からあらゆる策を講じています。その甲斐あって、ニューノーマル時代の新演出バージョンや、日本のトップ歌手たちが並ぶ、われわれファンにとって魅力溢れた新シーズン到来となりました。
ここでは、この秋にぜひ足を運んでほしい公演をピックアップ!さっそく、注目情報をチェックしてみましょう。


新国立劇場、シェイクスピア×ブリテンによる英国の集合知『夏の夜の夢』

10月にオペラ上演再開を迎える新国立劇場。2月の『セビリアの理髪師』以来、約8か月の公演中止期間を経て、いよいよ2020/2021シーズン開幕公演『夏の夜の夢』が10月4日よりスタートです。シェイクスピアの台詞とブリテンの輝かしい音楽、そして舞台美術が一体となった魅惑の世界、ぜひ劇場でお楽しみください。

おすすめポイント① シェイクスピア×ブリテン、幻想世界への没入

 20世紀の名作から、シーズン開幕に寄せて「最も華やかで心から楽しめる作品を」というテーマでセレクトされた『夏の夜の夢』。20世紀のオペラを紹介したい、という芸術監督の大野和士氏たっての希望だそうです。大野氏は「これほど笑えて、かつ上品な音楽の仕様や装飾、心くすぐるような音が散りばめられている『夏の夜の夢』、ぜひ劇場で楽しんでほしい」とコメントしています。
 今回の演出にあたって、デイビット・マクヴィカー氏によるオリジナル演出に基づきながら、飛沫感染予防に配慮して考案されたニューノーマルの新演出が披露されます。

おすすめポイント② 実力派日本人歌手が一堂に会する舞台

 世界で活躍するアーティストたちが集結する『夏の夜の夢』。3つの世界が次々と交錯する本作品では、キャストたちのアンサンブルが魅力のピースであることから、キャスト陣たちの演技と歌唱には大きな期待が寄せられます。
とりわけ、大野和士芸術監督も「私達のヒーロー」と太鼓判を押すカウンターテナー・藤木大地氏の活躍は見逃せません。妖精の王オーベロンとして登場する藤木氏は、新国立劇場オペラ研修所で学んだ後、カウンターテナーとしてウィーン国立歌劇場、ボローニャ歌劇場などにデビュー、世界を股にかけて躍進中です。かつ、新国立劇場オペラパレスへの登場は、なんと17年ぶりというだけあって、ファンにとっては待望の舞台となるでしょう。

■公演情報
【新国立劇場2020/2021シーズンオペラ 文化庁芸術祭主催公演『夏の夜の夢』】
【公演日程】2020年10月4日(日)14:00/6日(火)14:00/8日(木)18:30/10日(土)14:00/12日(月)14:00
【会場】新国立劇場 オペラパレス


世界に誇る日本のトップスターが挑む『トゥーランドット』【グランドオペラ共同制作】

 開館45周年のメモリアルイヤーを迎える神奈川県民ホール。8月31日まで主催公演全ての中止が余儀なくされていましたが、10月17日/18日、グランドオペラ共同制作によりプッチーニの遺作『トゥーランドット』が上演されます。
 タイトルロールを演じるのは、豊かな表現力と妖艶で圧倒的な存在感を放つ田崎尚美氏、ドラマティックな美声を誇る歌姫・岡田昌子氏。カラフ役には、幅広いレパートリーを歌いこなす日本のトップ・テノール福井敬氏と期待の新星歌手・芹澤佳通氏。そして、リュー役にはイタリアの「プッチーニ・フェスティバル」で日本人として初めて2年連続主演を務めた大村博美氏と、日本を代表するプリマの砂川涼子氏という豪華な顔ぶれ。 さらに、名匠アルベルト・ヴェロネージを指揮者として迎え、劇場を生命力あふれる音楽で包み込みます。ぜひ贅沢なこの機会に、イタリア・オペラの真髄に触れてみてはいかがでしょうか。

『トゥーランドット』をもっと満喫できる、関連企画もおすすめ!
●【10月10日(土)14:00】
未来に羽ばたくオペラ歌手たちによる『トゥーランドット』コンサートが開催されます。新進気鋭の若手歌手たちが、オペラの名曲をフレッシュな歌声でお届けします。

■公演情報
【グランドオペラ共同制作『トゥーランドット』】
【公演日程】2020年10月17日(土)/10月18日(日)14:00 
【会場】神奈川県民ホール 大ホール


【よこすか芸術劇場】能とオペラ、2つの物語が生み出す“幻”の体験

10月18日 (日)、よこすか芸術劇場では「能とオペラの饗宴による“幻”の世界」が繰り広げられます。本公演では、前半に能『隅田川』、後半にイギリス現代音楽の巨匠ベンジャミン・ブリテンが『隅田川』に着想を得て書き上げたオペラ『カーリュー・リヴァー』が順に上演され、「和」と「洋」の異なる世界が出会い共鳴し、高次元な芸術体験へと導きます。
能とオペラ、それぞれの演出に関わるのは、よこすか芸術劇場で人気シリーズをプロデュースしてきた観世喜正氏と彌勒忠史氏。2人のタッグは、これまで劇場に足を運んできた観客にとって待ちに待った舞台といえるのではないでしょうか。
『カーリュー・リヴァー』の演出・彌勒氏いわく、ブリテンが『隅田川』に心動かされたように、オペラ演出にあたっても能の要素を散りばめたいというこだわりを持って臨んだとのこと。例えば、何百本という蝋燭に照らし出された『隅田川』ののち、能舞台をそのまま使用してオペラ上演につなげるという手法で、滑らかにキリスト教世界へとシフトさせたり、能のインスピレーションを用いながら小道具や衣装をデザインしたり、彌勒氏が演出へ注ぐ熱量は計り知れません。
幽玄世界へのいざない。ぜひ、よこすか芸術劇場でご体感ください。

■公演情報
【能『隅田川』×ブリテン オペラ『カーリュー・リヴァー』連続上演 “幻”】
【日時】2020年10月18日(日)14:00
【会場】よこすか芸術劇場


東京芸術劇場にオペラ界の“黒船”再来!『フィガロの結婚』~庭師は見た!~(新演出版)

1786年にウィーンでの初演以降、世界中の劇場で愛され続けるモーツァルトの大傑作オペラ。2015年、このオペラをリメイクし、前代未聞のアプローチをした歌劇『フィガロ』がこの秋5年ぶりに再演となります。マエストロ井上道義氏と演出家の野田秀樹氏がタッグを組んだことでかなりの話題となった本作品は、オペラ通、演劇ファンどちらも唸らせる仕掛けがいっぱいの舞台です。
本来はフランス革命直前の時代が背景となる作品ですが、野田版・新『フィガロの結婚』では、なんと黒船来航時代の日本に舞台が移され、貴族と庶民階級との対立が織り成すめくるめく人間模様が描かれます。庭師が見たものとは一体?「オペラ」と「演劇」、「西洋」と「日本」の絶妙なマリアージュ、見どころ満載の舞台が期待されます。

■公演情報
【モーツァルト/歌劇『フィガロの結婚』~庭師は見た!~(再演)】
【公演日程】2020年10月30日(金)18:30/11月01日(日)14:00
【会場】東京芸術劇場コンサートホール


壮大なファンタジー叙事詩が始まる!ヘンデル『リナルド』【バッハ・コレギウム・ジャパン】

鈴木優人氏がプロデュースするオペラシリーズ第2弾。今回はヘンデルが新天地ロンドンで書き上げた大作『リナルド』を取り上げます。キャスト変更があったものの、豪華日本人キャストが起用され、再編成メンバーで満を持して上演に挑みます。
カストラートが活躍した時代の本作品は、特にカウンターテナーの歌声に注目が集まります。鈴木氏からは、「皆さんと一緒に古の時代のファンタジーへタイムスリップするのを楽しみにしています」とコメントが。古楽やバロックオペラへの関心が高まりつつある昨今、古の響きに身をゆだねるのはいかがでしょうか。

■公演情報
【鈴木優人プロデュース/BCJオペラシリーズ Vol.2 ヘンデル 歌劇『リナルド』】
【公演日程】2020年11月3日(火・祝) 16:00
【会場】東京オペラシティ コンサートホール


【日生劇場】2020年だけのプレミアムな『ルチア』で名作悲劇の真髄を克明に描く

オペラ『ルチア~あるいはある花嫁の悲劇~』 が、11月14日/15日に日生劇場で上演されます。6月に主催公演中止を余儀なくされた日生劇場では、新型コロナウイルスへの対策として、特別版『ルチア』の上演に踏み切りました。こちらは、もともと予定していた『ランメルモールのルチア』に代わり、翻案として日生劇場だけの特別版。コロナに屈せず、「この時代だからこその表現を探求すること」にフォーカスしたという、田尾下哲氏(演出・翻案)と柴田真郁氏(指揮)の協働により、ドニゼッティの傑作の新たな側面をうかがい知れる舞台となりそうです。今回の特別編予告によれば、悲劇の花嫁ルチアによるなんと一人芝居。ルチア役の森谷真理氏と高橋維氏にも大きな期待が寄せられます。
本来の『ランメルモールのルチア』から、ルチアの悲劇に焦点を当てた本上演、ドラマの真髄に触れることのできるひと時となりそうです。

■公演情報
【日生劇場NISSAY OPERA 2020 特別編『ルチア~あるいはある花嫁の悲劇~』】
【公演日程】2020年11月14日 (土)14:00/15日(日)14:00
【会場】日生劇場


こちらの公演もおすすめ!

若手女性演出家による舞台作りに期待!大黒屋オペラ『ランメルモールのルチア』

大黒屋オペラは、指揮者の中橋健太郎左衛門を中心に、栃木県那須塩原市の「板室温泉大黒屋」での公演を端に発したオペラ企画シリーズです。近年では、東京都内での公演も行い、オーケストラ編成や会場に合わせた工夫を凝らし、公演ごとに目新しい印象を与えてくれます。昨年春の『ナクソス島のアリアドネ』に続き、今回の『ルチア』でも演出として舘亜里沙氏を起用。若手女性演出家を作り出す、オペラ界の花形演目!日生劇場『ルチア』とあわせておすすめしたい公演です。

■公演情報
【大黒屋オペラ第12回公演『ランメルモールのルチア』】
【公演日程】2020年11月28日 (土)12:30
【会場】狛江エプタザール


豪華キャストが彩る!二期会10年ぶりの『メリー・ウィドー』(ハンナ腰越満美&ダニロ宮本益光、嘉目真木子&与那城敬)

2020/2021シーズンを新国立劇場でベートーヴェン『フィデリオ』でスタートさせた東京二期会オペラは、続いて11月にオペレッタ『メリー・ウィドー』でシーズンに一層の輝きを加えます。主役カップルは、ハンナ腰越満美氏&ダニロ宮本益光氏、嘉目真木子氏&与那城敬氏という、錚々たるメンバー。さらには、世界的コンクール「ブザンソン国際指揮者コンクール」優勝の沖澤のどか氏が初登場し、二期会本公演デビューを飾ります。
新演出を手掛ける眞鍋卓嗣氏からは、パンデミックによって距離を強いられる我々と、愛し合っているのに、歯車が噛み合わず距離(ディスタンス)を強いられているハンナとダニロを重ね、「愛という普遍的なテーマに焦点を合わせ、こんな時代ならではの楽しい舞台にしたい」と力強いコメントが届いています。
『メリー・ウィドー』は二期会にとって2010年以来10年ぶりの上演。なお、豪華キャストなどの登壇やコロナ対策による配席も関係し、11月25日から全5日間の公演も早くも残席が少なくなってきています。オペラファンはどうか急いで!

■公演情報
【東京二期会オペラ劇場 メリー・ウィドー(新演出)】
【公演日程】2020年11月25日(水)18:30※プレビュー公演/26日(木)18:30/27日(金)14:00/28日(土)14:00/29日(日)14:00
【会場】日生劇場


この秋は、特別なオペラ鑑賞を。

10月と11月に開催予定の、全8公演をご紹介しました。新型コロナウイルスの影響があり、従来通りの上演が難しい部分もありながらも、今だからこそ挑む特別な演出に、オペラ文化の力強さと今後の輝かしい発展を予感させてくれます。この秋、ぜひ劇場へ足を運んでみてはいかがでしょうか。
文:江口莉永

※記載されている情報は、2020年9月26日時点でのものです。詳細は、各公演の公式サイトにてご確認ください。※

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