オペラ・エクスプレス

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10/11東京オペラシティで開催される、イタリア・オペラにこだわったリサイタル―――西村悟さんインタビュー(全4ページ)

10/11東京オペラシティで開催される、イタリア・オペラにこだわったリサイタル―――西村悟さんインタビュー(全4ページ)

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◆頂いたオファーにイタリアの声でこたえるというスタンス

Q:イタリア・オペラを中心に歌って来た西村さんですが、今年びわ湖ホールでワーグナー《ラインの黄金》のローゲを歌って高い評価を得ました。これからはドイツ・オペラのレパートリーも歌っていくということですか?

A:そうですね。今、僕はレパートリーをこれは歌う、これは歌わない、という風に決めるのをやめようと思っているんです。まだ自分には可能性があるだろうし、何が合うのかは、もっと経験を積んでからやっと決められるのではないか、と。最初僕はドイツ物は歌わない、と決めていたんです。ところがマーラーの《大地の歌》のオファーが来て。なんで僕に?と思いました。僕が歌ったことがあるドイツ語の曲はベートーヴェンの《第九》だけなのに。最初は悩んだのですが結局引き受けて。「喉に悪そうだな」なんて言いながら(笑)。そしたら案の定しんどいわけです、歌い方も。でもそれは何か取り繕っていたみたいなんです。ドイツものだしマーラーだし、と自分で思ってそういう歌い方になってしまっていた。ところが本番の前にリハーサルが始まってこの厚みのあるオーケストラに対抗してもしかたがないと思い、だったら自分の声で、イタリアの声で歌えばいいのではと吹っ切れたんです。そうしたらまあ良い評価をしていただけて。

それからは、僕はオファーをいただいたら僕の声でよければ歌います、というスタンスに変わりました。《ラインの黄金》は初めて歌ったドイツ語のオペラでしたが、やって良かったなと思いました。

Q:準備には時間がかかりましたか?

A:一年以上かけました。譜面を広げてみたらもう音がとにかく難しい、言葉もイタリア・オペラのような繰り返しもありませんし、全部違う歌詞なわけです。これは大変だと必死で勉強を始めて。実は以前にもびわ湖ホールさんからワーグナーのオファーを頂いたことがあったんです。その時にはスケジュールが合わなかったですし、当時は僕はまだイタリア・オペラにこだわっていました。今後は日生劇場で《魔笛》を歌うことが決まっています。これも初役なんです。普通はタミーノを歌って、何年もたってからローゲなんですが、もう荒療治ですよね。先にローゲをやったらもう怖いものはないです(笑)。

重要なのは「いかに楽譜に忠実になれるか」。声も人格も磨いて、最終的には品格のあるテノールに

Q:声も良く、動きも鮮やかでローゲ役は本当に良かったです。ところでご自分が好きで良く聴く歌手とかはいらっしゃいますか?

A:うーん。もちろん聴きますけれども、僕は正直言うと他の歌手の演奏を聴く時に、声はあまり聴かないんです。声は人の楽器だから真似出来ないし、物真似をしたくもないですし。だから最近の人はあまり聴かないですが、声より歌い方で目標とするなら、フランコ・コレッリのような端正な歌い方でしょうか。

Q:そういえば西村さんは、他の評論家の方も書いていらっしゃいましたが、ノーブルな歌唱に特徴があると思います。やはり音楽的にそういう方向がお好きなんですね?

A:そうですね…。僕は、いかに楽譜に忠実になれるかが一番大事だと思っています。だからあまり飛び出した事をしたくないんですよね。高音を延ばしすぎたりとかはあまり好きではないです。やっぱり物語の中にどう溶け込むかが重要で、自分だけが目立てばいいものではないですから、役としての歌い方をしたいと常々思っているんです。もしノーブルと感じてくださったのならそういう役柄が多かったのかもしれませんね。

Q:やはりオペラの中のテノールは貴族や王様のような役柄も多いですから。

A:オペラは芸術ですから、絵画などと同じように、品があり美しいものでなくては、と思うんです。聴いた方に「ああ、美しいな」と感じてもらえるように。そのためには声も人格も磨いて、最終的には品格のあるテノールになれたらいいと思っています。

Q:これからも素晴らしい歌を楽しみにしています。今日はどうもありがとうございました。

インタビュー・文:井内美香  / photo: Naoko Nagasawa

西村 悟(テノール)

日本大学芸術学部音楽学科卒業、東京藝術大学大学院オペラ科修了。
声楽を丹羽勝海、川上洋司、Yoko Takedaの各氏に師事。第36回イタリア声楽コンコルソ・ミラノ部門にて大賞(1位)を受賞。2010年、文化庁新進芸術家海外派遣員としてヴェローナへ。2011年、第17回リッカルド・ザンドナーイ国際声楽コンクールにて第2位、並びに審査委員長特別賞を受賞。第80回日本音楽コンクールにて第1位、並びに聴衆賞を受賞。
JAPAN ARTS アーティスト 西村悟より一部転載

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