オペラ・エクスプレス

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コロナ禍でもワーグナーを!─「わ」の会vol.6リハーサルレポート

新型コロナウイルス(COVID-19)の蔓延により世界中のあらゆる業界が苦境を強いられるという、異例の年になった2020年。クラシック音楽界も、多くの来日公演や各団体の主催公演が延期や中止、規模の縮小を今もなお余儀なくされている。
そんな中、特に上演が難しい作曲家の一人がリヒャルト・ワーグナーだ。多くの人が狭い空間に集まる「密」を避けることが叫ばれる今、オーケストラ・ピットという限られた空間内に大編成のオーケストラがすし詰め状態になるワーグナー作品の上演実現への壁はあまりに高い。しかしながら今年の師走、そんなワーグナーの世界にどっぷりと浸れる公演がある!しかも、きわめて上質なクオリティにおいて、だ。それが当媒体でもリハーサルや本公演の模様を繰り返しお伝えしてきた「わ」の会による演奏会である。

「わ」の会とは?
ワーグナー作品をコンサート形式で紹介し、聴衆・演奏者が同時に敬虔と理解を深めていくという趣旨で結成された団体が「わ」の会だ。代表は、新国立劇場で幾多のワーグナー上演に携わってきた指揮の城谷正博。ピアノの木下志寿子もまた新国立劇場で欠かせない存在だ。歌手には池田香織片寄純也大沼徹友清崇大塚博章という、所属団体を問わず我が国のワーグナー公演に欠かせない演奏家が名を連ねている。ドイツ文学者・吉田真によるプレトークと語義明瞭な字幕も定評がある。

綿密な打ち合わせを行う城谷正博(指揮)、三澤志保(ピアノ)

コロナ禍の今こそ、「わ」の会のワーグナーを!

「わ」の会の大きな魅力が、通常上演に3時間から最大で6時間程度を要するワーグナーの巨大な歌劇・楽劇を、2時間という通常のコンサート程度の時間でコンパクトかつ本格的な形で味わえるという点だ。加えて今年期せずして彼らが帯びた「意義」が、「密」を避けつつワーグナー音楽の魅力を伝えることができる、ということだ。先述の通り歌劇場における完全な形でのワーグナー上演にはまだまだ障壁が多いが、オーケストラ・パートをピアノが担う「わ」の会のスタイルは、コロナ禍の時代に見事に適応しているのだ。
しかも今年の「わ」の会はこれまでと一味違う豪華版だ。いつも木下志寿子1人が雄弁に奏でるピアノパートに三澤志保というこれまた強力な演奏家が加わり、聴き手に重厚な管弦楽を常以上に味わわせる。また歌い手も魅力が溢れている。「わ」の会メンバー総出演に加え、2017年のvol.4公演で《神々の黄昏》グートルーネを艶やかに演じた名花・小林厚子が、さらに演奏会の幕を開ける《ラインの黄金》冒頭場面のラインの乙女には厳正なオーディションで選ばれたフレッシュな3人(今野沙知恵花房英里子藤井麻美)が出演する。そして舞台を鮮やかに引き締め、仕上げるのは演出の太田麻衣子だ。

舞台全体に目を配る太田麻衣子(演出、中央やや右)

言葉と音楽、そして動作を入念に掘り下げるリハーサル

11月も後半となり、12月4日の公演日に向けて「わ」の会は一丸となって準備を進めている。今回は《ラインの黄金》冒頭場面のリハーサルの模様を取材した。具体的な舞台の内容は4日に観ていただいてのお楽しみであるが、まず印象に残ったのは「あらゆる所作が音楽と言葉、そしてワーグナーのト書きから出発している」ということだ。当たり前のようだが、全く音楽と関係のない新機軸とオペラを無理矢理ドッキングさせて衆目を集める演出もある中、太田麻衣子の丁寧なディレクションは安心して観ることができる。音楽・言葉が丁寧に扱われつつも聴衆を飽きさせることなく、もしかすると笑いをも誘発するような中身になっているので、これは是非「ナマ」で体験していただきたい。オーディションで選ばれた3人の乙女はそれぞれキャラクターが濃く、音楽的にも豊かだ。彼女らに翻弄される友清崇(アルベリヒ)にもご注目を。ハ長調で歌われる「ラインの黄金讃歌」は、2台ピアノを伴ってさぞ輝かしく響くことだろう!

個性派・実力派揃いのラインの乙女。左から花房英里子(ヴェルグンデ)、藤井麻美(フロスヒルデ)、今野沙知恵(ヴォークリンデ)

《ラインの黄金》に始まり、《ワルキューレ》《タンホイザー》と、重厚なワーグナー世界を2時間に凝縮した「わ」の会コンサート vol.6。„Befreiung“(解放)の副題の通り、今年の12月4日は日常の喧噪からしばし「解放」され、ワーグナーの非日常世界に身を委ねてみてほしい。チケットはこちら。公演詳細は下記の太字をクリックでFacebookページに移動できます。

取材:平岡 拓也 Reported by Takuya Hiraoka

【公演情報】
2020年12月4日(金)19時開演
@調布市文化会館たづくり くすのきホール
「わ」の会コンサートvol.6 Befreiung:解放
(日本ワーグナー協会創立40周年記念事業)

¥7000 (学生¥5000)

指揮:城谷正博 
演出:太田麻衣子
ピアノ: 木下志寿子、三澤志保

ワーグナー:《ラインの黄金》より
ヴォークリンデ:今野沙知恵
ヴェルグンデ:花房英里子
フロスヒルデ:藤井麻美
アルベリヒ:友清崇

ワーグナー:《ワルキューレ》第三幕より
ヴォータン:大塚博章
ブリュンヒルデ:池田香織

ワーグナー:《タンホイザー》第三幕より
タンホイザー:片寄純也
エリザベート:小林厚子
ヴォルフラム:大沼徹
ヴェーヌス:池田香織

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